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第107話 話を聞く辛さ

まずは香織に俺たちの関係について話そう。


そう思いまた俺は香織の病室に向かう。


香織の病室からは話し声が聞こえた。


「誰だろう?」


香織は記憶を無くしているから話す人なんていないと思ったんだけどな…


耳をすますと中から香織の笑い声が聞こえた。


「香織が笑ってる…?」


俺は病室に入ろうとドアをノックする。


そして病室に入るとそこには上村隼人がいた。


「おっと…じゃあ香織俺は帰るよ」


「また来てくださいね」


「敬語はやめろって言っただろ?」


「そうだったね」


香織は笑っていた。


なんなんだ上村隼人…


なぜこんなに香織と親しい…


なんでさっきまで『佐藤』って呼んでいて今は『香織』と呼んでいる…


すれ違うとき上村隼人の口元がにやけた気がした。


そして上村隼人が病室から出ていったのを確認すると俺は香織の近くに寄る。


「か…香織…


「さっきはごめん!」


俺は言おうとしたことを遮られてしまった…


「なんで香織が謝ってるんだよ」


俺は微笑みながら言う。


「だって…あなたがお兄ちゃんなのに人を呼ぶなんて言ったりして…」


「っ…」


俺は香織と付き合っていたと言いたかったのにこれで言えなくなってしまった。


「本当にごめんね…お兄ちゃん」


呼ぶな…


お兄ちゃんって呼ばないでくれ!!


いつもみたいに悟君って呼んでくれよ!!


「私記憶が無いから…またお兄ちゃんと思い出つくれたらいいな」


香織が笑顔で言ってくる。


その言葉が俺にとってどんなに辛い言葉かなど知らずに…


「お兄ちゃん?どうしたの?」


「えっ?」


香織が俺の頬にさわってくる。


「涙がでてるよ?」


俺は香織にそう言われるまで涙を流していることに気がつけなかった。


「なんでもないよ。香織」


「本当?」


「ああ」


香織とは同い年のはずなのになんか香織のほうが年下みたいだ。


「ねえお兄ちゃん何か話さない?」


「えっ?」


「さっき上村隼人君って人が来てたの」


「うん」


「それでねいろんな話したんだよ」


「うん…」


「私の中学校時代の話とか」


「うん…」


「それでね……………


俺は香織の話に相づちをうつことしかできなかった。


俺がでてこない話を聞いてるのが辛かったから…


香織が急に俯く。


「香織?」


「私ね記憶を無くす前にすごく大事な人がいたの…その人のことが好きで好きでたまらなかった。でもね…そんなに好きだったのに顔も思い出せないんだよ…どうしてだろうね…」


「香織…」


ここでそれは俺だと言って信じてもらえたらどんなにいいことだろう…


「今日は…帰るよ…」


「また来てねっ!」


香織が笑顔で言う。


「ああ…ちゃんと来るよ…」


そうして俺は病室を出ていった…




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