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第105話 「退院したら少し遅いクリスマスプレゼントを買いに行こう」

大嫌いな神様へ


俺は香織をあんな目にあわせた神様が嫌いです。


そりゃ自分にも責任はありますよ?


でも飲酒運転の車があんな人のいたところでどうして俺に突っ込んできたんですか?


このまま香織が目を覚まさなかったら俺は…あなたを呪います。


香織が病院に運ばれて3時間が経過していた。


俺はずっと病院の椅子に座っている。


そして隣には姉ちゃんがいる。


哲也と理沙には帰ってもらった。


俺のこんな姿見られたくないから…


父さんたちには連絡しておいたが飛行機の席が空いておらずすぐには来れないとのことだった。


突っ込んできた赤い車のドライバーは酒を飲んでいた。


俺はそいつを責める気にもならなかった。


「香織…!!」


俺は呟く。


姉ちゃんが背中をさすってくれる。


姉ちゃんの優しさがいたい…


医師がこっちにくる。


「香織は!?香織はどうなったんですか!?」


「竹中さんは無事です」


「よかった…」


俺は安心する。


香織が大丈夫だとわかると急に眠気が俺を襲う。


そして病院の椅子でそのまま寝てしまった。


「香織!」


目が覚めての第一声がそれだった。


俺はすぐに香織の病室に向かう。


香織はもう起きてるかな?


起きてたらちゃんと謝らなきゃ…


そしてお礼をいわなきゃ。


退院したら少し遅いクリスマスプレゼントを一緒に買いに行こう。


退院パーティーもやりたいな。


そしてもう香織が傷つかないようにしないと。


大事に守ってあげないと。


俺は走りながらずっとそんなことばかり考えていた。


香織の病室の前につく。


プレートには『竹中香織』と書かれている。


俺は一回深呼吸をする。


そして扉をノックしてから入る。


そこには上半身だけ起こしている香織の姿があった。


俺は涙がでそうになる。


「…えっと…どちらさまですか?」


「えっ…」


「もしかして病室を間違えてませんか?」


香織が静かに言ってくる。


「な…なに言ってるんだよ…」


俺は香織に近づく。


そして香織の肩をつかむ。


「変な冗談はやめてくれよ!!一緒にクリスマスプレゼント買いに行くんだろ!?退院パーティーだってやりたいんだよ!!だから…だから変な冗談はやめてくれよ!!香織!!」


俺は無意識に手に力が入る。


香織の言っていることが冗談であってほしかった。


しかし…


「や…やめてください!人を呼びますよ!?香織ってだれですか!?」


「っ…」


香織の完璧な拒絶…


そして香織は自分の名前もわかっていなかった…


つまり、香織は記憶を失っていた。


はは…バカみたいじゃねえか…


なにが香織が目覚めたら少し遅いクリスマスプレゼント買いに行こうだ?


行けねえじゃねえか…


もう香織と笑い合えないのかよ…


香織とキスもできないのかよ…


涙が目に溜まる。


香織の前で泣くわけにはいかない。


俺は病室を出ていった。



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