第104話 悲劇は突然に…
クリスマス当日。
「悟君行こっ!」
香織が俺の手をとって走り出す。
「そんなに焦らなくても…」
「駄目だよ!集合時間に間に合うかわからないんだから!」
哲也たちなら遅刻しても許してくれる気が…しないよな…
俺が昼寝してなかなか起きなかったせいだし…
俺も走るか…
そして香織と俺は走って集合場所の駅を目指す。
「5分遅刻ね」
「すいません…」
「ごめんね」
「香織は悪くないでしょ?悪いのは…」
理沙が俺をにらむ。
「反省はしてる。でも、後悔はしてない」
「犯罪者かよ…」
哲也がツッコミをいれる。
「後悔しなさいよ!!」
理沙がツッコミをいれるところはそこだったか…
「まあいいわ。行きましょ」
そして俺たちは電車に乗って東京に向かう。
「(飯食ったらどうするんだ?)」
俺は隣にいる哲也に小声で話しかける。
小声にしたのはこの質問を理沙に聞かれたら怒られそうな気がしたからだ。
「(お前バカか?)」
「(わりと…)」
「(プレゼント買ってあげろよ)」
「(それだ!!)」
「(マジで考えてもなかったのか…)」
哲也が呆れ顔で言ってくる。
「あんたたち降りるわよ?」
理沙がそう言ったので俺たちは慌てて席を立ち電車を降りた。
それよりもプレゼントか…
香織はなにをもらったら喜ぶんだろうな…
ネックレスは前に東京に来たときにもらっちゃったし…
まあ後で考えとくか…
そして俺たちは夕食を食べてプレゼントを買いに行こうとする。
まずい…
店に着く前に考えとかなければ…
俺は考えながら歩く。
今思うと後で考えておくなんて思ったのがいけなかったんだ…
俺は考えながら歩いていたからあるものの接近に気がつかなかった。
「悟君危ない!!」
世界の時がゆっくりになる。
必死に俺を突き飛ばす香織の顔がある。
そしてその顔は俺の前から消えて赤い車へと変わる。
なにが起こったのかわからなかった。
「キャーーー!!」
理沙の叫び声で頭が覚醒する。
香織が車にはねられたのだ。
しかも俺のせいで…
俺はすぐに香織のもとに走る。
「香織!香織!」
俺は香織を抱き抱え必死に香織の名前を呼ぶ。
「哲也!!救急車!!」
「お…おう!」
人だかりができる。
「香織!血が…!頭から血が!くそっ!とまれ!とまれ!とまれ!」
俺は血が出ているところをハンカチで抑える。
「香織!香織!」
俺は香織の名前を何度も呼ぶ。
しかし香織は目覚めない。
「どうして…どうしてこんなことに…!俺があのときちゃんと注意してれば…!あああああああ!!」
俺は泣き崩れる。
泣き崩れていたから俺のことを…いや、詳しく言うと目を覚まさない香織のことをショックをうけながら見ている人物に俺は気がつかなかった。