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第十五話 静かなる

小説を書く時間は出来ましたが、いつ出来なくなるか分かりません。そうなった時は恐れ入りますが、しばしお待ち下さい。

「全く……上手く騙せてたのに、邪魔。」

 そう言うとアスモデウスは、黒い翼を広げて部屋の中をフワッと浮かんだ。その姿を見て、ペイモンは一瞬でアスモデウスということに気がついた。

「あんな男はどうでもいいわ。ペイモンさん、一緒に行きましょう。」

 そう言ってアスモデウスは手を伸ばしてきた。だがペイモンは剣を握ってアスモデウスの手を振り払った。

「っ……!?『惑』が効かない……!?」

 アスモデウスの漢術、『惑』。相手から一定の好感度を得ると、相手を誘惑して、操ることが出来る。

 だが、ペイモンには通用しなかった。ペイモンの、圭太が攻撃されたことによる怒りが誘惑を遥かに上回ったのだ。

「なら、普通に戦闘するだけ。」

 そう言ってアスモデウスは手から巨大な紫色の波動を飛ばした。ペイモンが、月欠で波動を防ぐ。アスモデウスがさらに波動を出そうとするが、どんどん防がれて、追い詰められていった。

「ちっ…」

 アスモデウスは壁に追い詰められて行っていたので、翼で外に出た。ペイモンもそれを追いかけて走った。

 だが、アスモデウスにとっての大誤算が起こった。外には吹き飛ばされた圭太。圭太から超巨大な炎の渦が巻いていたのだ。

「『焔』…!!」

 ホテルのてっぺんに届くほどの炎の威力だった。圭太は、前ルシファーが戦っている姿を見て、炎使いとしての戦い方を学んだ。そして魔力の流れを完全に掴んだのだ。

「終わりだ、アスモデウス。」

「そう思ったかしら?」

 斬りかかったペイモンにそう言うと、アスモデウスは炎の渦に突っ込んでいった。

「何を…!?」

 別に自滅してくれるならそれでいいので、ペイモンはその場で留まっていた。

 アスモデウスが炎の渦に突っ込むと、目を疑うことが起こった。炎がアスモデウスから避けたのだ。何が起きている、ペイモンは一瞬そう思ったが、すぐに気がついた。

 アスモデウスは七つの大罪。アスモデウスは炎すらも恐れおののくほどのオーラを持っているのだ。

「流石、アスモデウス……!!」

 ペイモンはアスモデウスを追いかけるため、剣を強く握り直した。そしてまた元に戻ってしまった炎の渦を横方向に真っ二つに切り裂いた。

月欠(つきがけ)(あけぼの)]。」

 ペイモンの月欠が曙色(オレンジみたいな色)に変わり、炎を出した。そしてジャンプをして炎の上を飛び越えると、翼を広げてアスモデウスを追いかけた。家を超え、ビルを超え、雲をも超えた。アスモデウスもペイモンも悪魔なので、空気がなくても生きていられる。重力がギリギリある程の場所だった。ペイモンがニヤリと笑い口を開いた。

「昇る最中、これから行く天国は見えましたか?」

「二人とも地獄行きよ。」

 アスモデウスが翼をはためかせながら猛スピードで近づいてきた。だが、ペイモンは炎をまとった曙色の剣でアスモデウスの腹を一突きした。

「──っ………!!」

するとアスモデウスはみるみる老けるようにエネルギーが吸われていき、「ああぁぁぁああああ」という声を上げながら消えていった。

「はぁ……はぁ…」

 ペイモンも『月欠[曙]』によるエネルギー消費で、体力が限界だったので、翼を閉じて墜落するように降りていった。

 地面に到達すると、圭太が倒れていたので、家の中まで運んだ。

「そういえば、アスモデウスって上から二番目の階じゃ……」

 圭太をベッドに横たわらせてから、ペイモンは呟いた。それが意味すること、そう、ペイモン達はもう最上階のバエルと戦えるのだ。

「圭太さん、待っていてください。」

 そう言うと、ペイモンは剣を握った。十分体力は回復した。

「バエル、最上階で首を洗って待っていろ。今行く。」



 ここは最上階。管理者は◤バエル◢。マンションバエルの管理者にして、この街の王。それに加え、絶対的な能力を持つ悪魔。悪魔の中でも頭一つ飛び抜けた才能を持っている。

「あぁ、バエル様よ。どうかお許しを。今月の家賃は間に合いません。あと数日でいいんです。」

 この街に住む、「佐藤ケイ」はただの青年。誤って悪魔の住む国に迷い込んでしまい、バエルから逃れられなくなった。

「佐藤ケイ、金に()っているものはなんだ?」

「え……渋沢……」

「違ぁぁぁっうっ!!信頼だ!!」

 そう叫んで、バエルは佐藤ケイを睨んだ。すると、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなり、終いには気絶してしまった。

「信頼とは絶対的、そして人間の生活に欠かせぬものだ。貴様も分かるだろう?」

 そう言ってバエルは部屋の扉を見た。そこにはペイモンが剣を握って立っていた。

「五千九百七十三万八千九百五十二。」

「?」

「私が剣から召喚できるゾンビの人数です。」

「だったらなんだ?」

「私の漢術『召』は、今まで()()()()が宿ります。私はおよそ六千万人の命を背負ってここに立ってるんですよ。」

 ペイモンは毎日悪夢にうなされていた。殺した命がペイモンに襲いかかってくる夢だ。だが、そんな命一つ一つにも、信念があり、目標があった。その分もペイモンは背負った。人を殺すとはそういうことだ。

「バエル、ここでお前を倒す。」

 ペイモンはそう言うと剣を持ってバエルに飛びかかった。

「月欠[(こん)]。」

 剣から大量のゾンビが溢れ出す。だがバエルは恐れることなく、ゾンビに手を突き出した。

「『(いかづち)』。」

 そう言って魔法を放つと、ゾンビに電流が流れてどんどん感電していった。ペイモンの反応速度はそれを上回った。

 感電する前に剣を離して、バエルに切っ先を向けて突撃しようとした。

 バエルは雷の剣を作り、ペイモンの月欠とぶつかりあった。

「っ……!!」

 ペイモンの体に軽い電流が流れる。だが怯まずに剣を振り続けた。ペイモンが一度大きく振りかぶって剣がぶつかった。そしてペイモンが一言だけ言った。

「外でやりましょう。」

「……!?」

 そう言うと、ペイモンは窓を破って外に出た。

「乗ってやろう、その提案。」

 バエルが驚いたのは理由がある。そう、外ではどう考えてもバエルの方が有利だからだ。

 バエルは今、体の中に溜まった電気を使って雷を出している。だが外に出れば雲からいくらでも雷を落とせる。何か狙いがあるのかもしれないが、バエルの雷を上回ることは出来ない。

「終わりだ。」

 バエルが窓からペイモンを追った。だが数分間も思考していたのが間違っていた。およそ六千万のゾンビが雲を覆い尽くすようにバエルに迫っていた。

「『召』。」

 だが、バエルは逆にニヤリと笑うと手を上空に突き出した。

「雷とは神の顕在の象徴そして……」

 上空には雷雲が集まっていた。ペイモンが上空を見上げる前にバエルは叫んだ。

「『神の怒り』」

 瞬間当たり一体に『バァァァン!!』という轟音が鳴り響いた。そして当たりは光に包まれ、バエル自身も前が見えないほどだった。地面がえぐれ、マンションは倒壊寸前までになっていた。

 ゾンビの軍隊は意味をなさず、雷はペイモンに()()()()

「ぐぁ……ぁぁぁぁあああぁぁあああ!!!」

 ペイモンの体がどんどん塵になっていった。足が消え、腕が消え、腹部も消え……



 ペイモンは死んだ。雷が止むと、そこにはもう誰もいなかった。バエルは高笑いを上げながら上空にいた。えぐれた地面と月の光が反射する月欠だけが残された。

月欠が(バエル)を欠けさせることは無かった───

「ククククク……かァッはッはッはッァ!!さて、処理もすんだところだ。家に……」

 バエルが最上階に窓から入ろうとすると、背後から『ボォッ……』という、炎の低い音が聞こえてきた。

「ペイモンは死んだか……」

 バエルは背後を振り向くことさえ出来なかった。背後に立っていたのはルシファー。静かなる怒りの前にバエルは体が震えた。悪魔として数百年、数千年、数万年の時をすごしてきた。恐怖したのは赤子ぶりだった。

「くあぁっっ!!」

 バエルが手に雷を纏わせ攻撃をしようとした。だが、腕が動く前にバエルは火だるまになっていた。

「ぁぁぁぁああぎゃぁぁあああ!!」

 バエルは瞬く間に灰になって消えた。だが、ルシファーはその程度で満足しなかった。全ての悪魔から火柱をたたせて殺した。たった数秒のことだった。地球の至る場所から炎が上がった。悪魔が多いカリメア国は、全ての家が燃えて、倒壊していた。

 マンションバエルも当然そうだった。最上階が見えない程の高さのマンションが炎に包まれたのだ。一階で寝ている圭太も炎の臭いと、度重なる轟音で目を覚ました。困惑しつつも外に出ると、正に地獄絵図が広がっていた。どこを見渡しても炎。海からも炎が上がるという、異常なことが起こっていた。そして、左を見ると、そこにはルシファーが翼を広げて浮かんでいた。

 炎の音も、家の倒壊の音も、何もかもが耳に入ってこなかった。

 ただ一つ耳に入ったのはルシファーの一言だった。

【皆殺しだ。】

めっちゃ文字数多くなりました。こっからどうしよう。

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