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馬丁爵 我が家はお馬さん優先です  作者: 免独斎頼運
第2章 男どもは・・・
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46 お宝発見

領都リマキは港町。

海岸から少し離れた丘の上に領主屋敷を建設中。

陸地から攻められる事はないので港からの見栄え重視。

この街はいずれドラゴ国の海の玄関口になる。

大陸中の海運国から商船がやって来る筈。

大国ドラゴの威信が掛かっているので皆が気合を入れて造っている。


見渡す限り全く何もない荒地だったのに既に沢山の建物が建っている。

港の周りには倉庫や商会が立ち並び、丘の麓まで店や家が建てられた。

領内のあちこちで工事をしているので職人や作業員の需要も多く、仕事にあぶれることは無いと遠い村からも移住者が流れ込んで人口も急増中。

領内には森が無いし、周囲は切り立った崖。

魔獣が居ないので安全だし、領主は探知魔法や自白魔法の使い手なので裏社会の者や盗賊達はやってこない。

安心、安全で仕事にあぶれる事は無い街、という評判が移住者の増加となっている。

領都の他にもそこそこの港を中心とした街が5つ、漁村が10余りと僅か2年で急速に発展した。

頑張って港を作った甲斐があった。

ミョウコ家の財政担当、アオバ伯爵の2男チクマがリマキ家の執事兼代官として街を運営してくれている。

商取引に長け、ミョウコ家の財政基盤を築いたアオバの息子だけに海千山千の商人との交渉でも一歩も引けを取らない。

領配のアブルはチクマに付いて領地経営の勉強中。生国では宰相候補だっただけに飲み込みも速いし、持って生まれた威厳で商人達を圧倒している。

半日を厩舎で過ごすの欠点だが、豪馬が好きすぎる事を別にすればとっても良い領配。



私?

領地経営とかには全く興味ない。

餅は餅屋、素人が余計な口を挟まない方が上手くいく。

今は海の中で重要な実験中。

思いついた時にやってみるが私の生き方。

母さんさえいなければ自由の身。

以前魚捕りで大失敗したのでリベンジ大作戦敢行中。

港町の領主として魚風情に舐められる訳には行かない。

まず、海の中で呼吸が出来ないのが大問題。

泳ぐのは動きが遅すぎる。結界を張ると魔法が撃てない。

改善すべき問題が山積している。

色々と考え何度も実験を繰り返す。


結界の内側から魔法を撃つと結界を壊すか結界に吸収されるもが普通。

でも探知魔法は使える。

探知魔法のように結界を通り抜ける攻撃魔法は難しい。

私の苦手は攻撃魔法、得意は防御魔法。

防御魔法なら何とでもなる。結界の構造を改変した。

私の魔力波長との親和性を付与して魔法を通過させるように書き換える。

呼吸に必要な空気との親和性を高めて水中に含まれる空気を吸収するように変更する。

結界の足元に重力探知を組み込んで、蹴った方向に反重力が発生する魔法を組み込む。

何度も失敗しては魔法陣を書き換える。


魚どもに領主の力を見せつけなければならない。

今日もリマキ家の名誉を背負って海に潜る。

呼吸は問題ない。

斜め後ろに蹴ると体が斜め横になって前に進む。

地上を走るイメージで足を動かすと、海中を走れる。

海底じゃないよ、海中だよ。

斜め右後ろを蹴ると左に進む。

暫く練習すると、自在に動けるようになった。

大きなお魚さんがギザギザの歯のついた口を大きく開けて向かって来た。

領主を舐めるんじゃねえ。

“レーザービーム”

一撃で仰向けになった。

どうよ。

お魚さんを亜空間倉庫に放り込んだ。


領主に敬意を払わない不埒な魚どもを次々と成敗する。

探知魔法に金属が掛かった。

近寄ってみるとミスリルのインゴット。

探知魔法の精度を上げる。

海底の浅い地中にぽつぽつと反応がある。

土魔法を使って掘り出すとミスリルの剣や魔鉄のインゴット。

変形した金のインゴットも見つかった。

大岩で吹き飛ばされた王城にあった物らしい。

そう言えばあの国は麻薬で大儲けしていた。

王城は燃やしたわけでも爆破した訳でも無い。

大きな岩を落としただけ。

武器や宝物が散乱しているのは当然だった。

広域探査で海底の地形を調べてみた。

直径40kmのすり鉢状。海水が流れ込んだ影響で全体が大量の泥で埋まっている。

最深部は水深800m。流れ込んだ泥ですり鉢の底は広範囲に渡って平らになっている。

すり鉢の外側に貴金属が吹き飛ばされ、海水が引くときに流れて来た泥で埋まった?

宝石と貴金属に限定して精査すると広い範囲に反応がある。

工事や漁業で宝石や貴金属が見つかると一獲千金のならず者が押し掛けて大騒ぎになる。


「海底にミスリルや宝石ですか。」

チクマが眉間に皺を寄せる。

「まずいな。」

アブルも考え込んでいる。

テーブルの上には海の底で見つけたインゴットや宝石。

「でしょう?」

「一獲千金の傭兵達が来たら工事どころではなくなります。」

「でも潜って探せるのが私しかいないの。」

広い範囲なので探すのが面倒すぎる。

「アラレ閣下なら大丈夫です。」

どう大丈夫なんだ、全然ダイジョバナイぞ。

「そうだね、アラレだからね。」

アブルも私に丸投げするな。

「はあ?」

「発掘は閣下にして頂きますが、一応王妃殿下には連絡した方がよろしいと思います。」

発掘は私一人で決定らしい。

チクマとアブルは私を扱き使う気満々。

チクマの提案でお母さんに連絡した。



「これね。」

転移魔法を使ってお母さんがやって来た。

「そう。一応埋まっているけど海水の動きで出てくる可能性があるの。」

「アラレの領地だし、王都を破壊したのもアラレだから問題ないわ。それよりも結界よ。」

「はあ?」

「潜って探せる結界でしょ。私に教えて。」

糞忙しい私に魔法を教えろと迫るお母さん。

王妃殿下だから仕方がない。

翌日からお母さんの魔法訓練。

魔法陣は出来上がっているし、イメージは念話に乗せられる。

お母さんと二人で海の散歩、って何してんの。

お母さんがお魚さんを殴り殺している。

「本当に水の抵抗を無くしているのね。」

お母さんの拳骨でお魚さんがミンチになった。

せめて夕食に出せる程度して欲しい。ミンチはダメ。

「蹴っちゃダメ!」

魚を蹴り殺そうとした瞬間に反重力魔法が発動、お母さんは猛スピードで飛んで行った。

慌てて追いかける。

「足元には重力魔法を組み込んであるって説明したでしょ!」

「忘れてた、てへっ!」

「私の真似をするな。」

「でも火魔法や風魔法は使えないのよね。」

「結界から外は水の抵抗があるからストーンバレットもダメだよ。」

「強い魔獣が出たらどうするの?」

「セイちゃんに教えて貰ったレーザー魔法。」

「見せて。」

離れた所を泳いでいるお魚さんに撃った。

細い光がお魚さんの頭を貫く。

「凄い。これなら魔獣でも大丈夫ね。」

はい、お母さんの練習に付き合わされました。

お母さんがレーザー魔法でお魚さんを撃って、私が亜空間倉庫に納める。

って、違うだろ。

海底のお宝回収に来たのに魚取りしてどうするの。

私の貴重な数日が無駄になった。

お母さんは沢山のお魚をお土産に笑顔で王都に帰って行った。



港湾建設で問題が発生したため、将軍は当分の間領地で問題解決に当たると王妃殿下が軍に連絡して長期の領地滞在が出来る事になった。

長期滞在したかった訳では無いが、広範囲の探索には時間が掛かる。

私は毎日海の底。

水の抵抗を受け流すように結界を改良したので魚並みに動けるようになった。

貴金属などがあるのはすり鉢の上側。幅が10km、円周120km

更にそこから海水が流れ込んだ場所。

舞い上がった泥が降り注いだので貴金属があるのは1m~10mの地中。

深い所はとりあえず無視、海流で表面に出そうな所だけ回収することにした。

浅い所だけでも貴金属や宝石がめっちゃ沢山あった。

どんだけ麻薬で儲けたんだ?

大陸有数の金持ち国と言われていたのは事実だった。



新年の儀で王都に戻った。

お土産は沢山のお魚さんと輸入が始まった南国の調味料。

料理長が喜んでいた。

新年の儀が終わって久しぶりの家族団らん。

陛下はヒビキと豪馬談義。

お母さんと私、次女のナズ、末っ子のモッチ~はお菓子の味比べ。

シナモンやバニラ、カカオなど今までは殆ど手に入らなかった材料が港のおかげで手に入りやすくなったから、高いけどね。

ナズとヒビキは今年から魔法学院に通っている。

「ヒビキは頑張っているの?」

ナズに聞いてみた。

「あれはダメね。第2の陛下、暇があれば厩舎。」

「はぁ。」

思わずため息が出る。

「お母さん、どうしてうちの家系は男がダメなの?」

王妃殿下に聞いてみた。

「くだらない事を考えずに、男はダメな生き物だと割り切りなさい。」

それって全然フォローになってない。

「だいじょぶ。お母様を見てるから調教出来る。」

末っ子のモッチ~は9歳だが逞しい。

ナズとモッチ~がいるからドラゴ王国は安泰だ。


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