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馬丁爵 我が家はお馬さん優先です  作者: 免独斎頼運
第2章 男どもは・・・
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39 王国併合

突然隣国の王から使者が来た。

王権をドラゴ国に譲渡する代わりに、王家以外の貴族の命を保証し、民を護って欲しいとの申し出。要するに王家の首を差し出すから国を守ってくれ。

3年前、アラレが初陣を勝利で飾った戦いで主力軍を失った国が周辺国に一斉に攻め込まれ、貴族は首を切られ民は奴隷に落とされたことは記憶に新しい。

弱った獲物に群がるハイエナ。

どうやら周辺国が進攻の準備を整えているようだ。

相手が弱っている時は進攻理由も糞も無い早い者勝ち。

それがこの大陸の常識。

王を失った王家は慌てて新王を即位させたがこのままでは国を守れないと判断したらしい。

だが、もとより兵力が少ないドラゴ王国が小さいとはいえ王国一つを抱え込めるのか、さすがに即答は出来ない。

国母殿下に相談した。


勿論ミョウコ家の伝統通りアカネとナズ、ヒビキも同席した。

陛下は呼んでないよ。どうせ呼んでも来ないし、来ても役に立たないから。

「周辺国に取られると将来的に脅威になるわね。でも今の兵力では少し厳しいかな。」

国母殿下は私と同意見。

「兵力ならあるじゃん。」

アラレが口を挟んだ。

「どこに?」

「向こうの国。貴族の指揮官はアホだけど、兵はそこそこ強かったよ。指揮官として師団の参謀達を送って鍛え直せば結構使えるよ。」

「鍛え直すまでの時間が問題なの。」

「たまには父さんを使ったらいいじゃん。戦場に出たくてうずうずしてるんだから。」

いや、そこは父さんじゃなくて陛下と呼ぼうよ。

「そうね、陛下とはさみは使いようかも。」

国母殿下、それって全然フォローになってないです。



と言う訳で旧敵国が丸ごとドラゴ王国の領土となった。

王家は暫くドラゴの王都で軟禁。

貴族達は2階級降爵の上、当分の間は領地の支配に傾注させる。

統治実態を精査したうえで今後の事を決める事になった。

貴族達を領地に帰したので、政権の空いたポストにはドラゴ王国から人材を派遣する。

指揮官や参謀に就任した者はさっそく訓練を開始。

演習もドラゴ国同様に実施した。

前任者の貴族が酷かっただけに適切に指示を飛ばす若い指揮官達を見て兵の信頼も高まり士気も上がった。



周辺国との国境近くでは陛下の第1豪馬騎士団20騎がこれ見よがしに走り回っている。

空からサンちゃんが国境を監視しているので不意打ちの心配は無い。

旧王都では第2豪馬騎士団の20騎が周辺国の外交官を集めて模擬戦を披露している。

1度だけ騎士100騎と10000の兵が攻め込んできたが、サンちゃんの通報で待ち構えていた陛下とアラレのコンビによる3年前の再現で即座に全滅した。

勿論ドラゴ国の被害は無し。

うん、捕虜の身代金と補償金でめっちゃ儲かった。

他の国にも攻めてきて欲しかったけど、戦いの情報が知れ渡って全ての国が兵を引いてしまった。

ぐぬぬ。



「走れ! 体力の無い奴は指揮官から外す。走れ!」

「ほらほら、しっかり腰を入れて突け! 指揮官は兵の先頭で戦うんだ。弱いと死ぬぞ。」

「そこ、100人隊が3列縦隊で平地を10km進むのに何分掛かる?」

「・・・・。」

「答えられルまで立っていろ。次の者、騎馬隊が草原を2列縦隊で10km進むのに要する時間は?」

「自分は歩兵なので判りません。」

「敵は歩兵ばかりではない。兵はともかく指揮官が知らないでどうやって部下を逃がすんだ? 答えが判るまで立ったまま考えろ。」

実技も座学も教官たちは気合が入っている。

与えられた時間は3か月。

それ以上国王が王都を空けていることは出来ない。

豪馬騎士団が睨みを利かせている間に下士官を鍛え上げなければならない。

教官達が鬼の形相で下士官をしごいている。


時折鬼教官の顔がほころぶ。

教官が空を見ている。

空を見ると可愛い女の子が浮かんでいる。

「アラレ=ドラゴ将軍閣下である。」

教官の声で下士官たちが一斉に拳を胸に当てた。

「この間1万の兵を壊滅させた将軍か?」

「あんなに小さな子が?」

「空も飛べるのか。」

「将軍閣下は3年前、6歳の時に5万の軍を壊滅させた猛将である。」

「頑張ってね~!」

アラレが笑顔で小さな手を振っている。

猛将と言うよりは幼少。

兵達の心が和らいだ。

セイちゃんの力だとはアラレも知らない。



国土がほぼ倍増したことで私は大忙し。

国母殿下や側近達と連日の会議、会議。

貴族の査定や領地の配分、役人の人選に予算の配分。

最終決裁は私なので休む暇がない。

外国使節の謁見も増えた。

国土併合によって大陸有数の大国となったので注目度が上がったらしい。

以前は陛下への謁見申し込みが多かったが、今ではほとんどが私を指名しての謁見申し込み。

まあ陛下と会ってもしょうがないけどね。

馬場に行けばいつでも見られるし。

偶には執務室に居ろ!

馬場では前国王の国父殿下も見られる。

今は生れたばかりの豪馬の世話を買って出て元気一杯。

毎日厩舎に泊まり込んでいる。

全くうちの男共ときたら、・・・。


面倒なのはドラゴ王国の貴族達から殺到した昇爵や領地の加増願い。

領地が広がったのだから相応の褒美をよこせと煩い。

領土拡大への功績を示せと突き返えしたら、龍神様に祈った、馬神様に祈った、カスミ様に祈ったと自らの功績を事細かく立派な書状にして提出してきた。

お前らアホか!



久しぶりに父さんと会った。

魔法学院入学前に別れて以来。

「馬を連れて来たぞ。」

厩舎に行くと父さんと陛下が馬を見ていた。

立派な馬が20頭、小さな豪馬が10頭。

「オスの豪馬と公爵領産牝馬の子だ。豪馬程乗り手を選ばんし、飼葉も少なくて済む。詳しい事は手が足りなくてまだ判らん。馬丁も連れて来ているから騎士団で色々と試してくれ。」

めんどくさくなった時の必殺技、父さん得意の丸投げ。

ミョウコ領だけでは手が回らなくなったらしい。

少し小さい豪馬とめっちゃ立派な4つ脚の馬、陛下がめっちゃ喜んでいるが、それよりも嬉しそうにしているのが豪馬試験に落ちた第1騎士団長と前国王の国父殿下、まあそうなるな。

有り難いけど、この糞忙しい時に仕事を増やすな。

「ありがとう、わざわざ届けてくれたのね。」

「孫の顔を見に来ただけだ。気にするな。オスを変えると違った性格の子が出来る、カスミも試してみるといいぞ。」

陛下の前で言うな!

陛下も私の顔を見るな。種馬を変える気は無い。



ダメだ。

この糞忙しい時に騎士団長や師団長が厩舎に入り浸って会議に出てこない。

勿論宰相も厩舎に入りびたり。

国父殿下も厩舎で一緒にはしゃいでいるらしい。

今日は倍増した軍の再編成会議、軍の指揮官が馬と遊んでいてどうする。

全くこの国の男どもは何なんだ? 仕事しろ!

まあ今は優秀な参謀達がいるからいいけど。

「はぁ。」


今日の議題は貴族から来ている要望書の処理。

要するに旧敵国の貴族を全員首にして、空いたポストにドラゴ国の格式ある貴族である自分を任じろという要望書。

「将軍閣下の案が最適と存じます。」

「軍の事は将軍閣下に任せるのが一番です。」

「将軍閣下の判断に異論をはさむ軍人は一人もおりません。」

アラレの人気は凄い。

参謀達は皆がアラレの信奉者になっている。

結局アラレが提出した原案通りに決定、新編成の第8~第13師団の上層部は若い指揮官で固められた。

貴族が爵位を盾に無理難題を押し付ける事があるから師団上層部に貴族が一人もいないのは具合が悪い。

新師団長を子爵に、副師団長は男爵に叙した。



新たに併合した領土には魔獣が多い。

ドラゴ王国は神龍様の威光のおかげで大陸では最も魔獣が少ない国だったらしい。

新領土に配置された騎士団はあまりにも多すぎる魔獣対策として討伐演習を取り入れた。

魔獣の住む森の中では集団行動がとり難い。

その為に魔獣討伐は少人数で活動する冒険者に頼り、広い草原や街道に出てきた場合は軍が討伐するというのが定番。

それを10人隊数隊の連携で魔獣を追い出し、待ち構える100人隊と5人の魔導士隊で討伐する戦法を作り出した。

魔獣討伐が進めば農民が喜ぶし、森が多い新領土の開墾を進められる。

更に山道を使う事が多い奇襲部隊や特殊工作隊の訓練にもなる。

何よりも大きいのは10人隊長の指揮能力が高まるのと兵の士気が上がる事。

皆が”民を護る軍人”としての意識を持つようになった。


「倒れた木を運び出してぇ~。」

「「「はい。」」」

「こっちは終わったね。みんな危ないから離れてねぇ~。」

「「「はい。」」」

“ウィンドドラム”

地上に半透明の円筒が現われた

直系1.5m、長さ10m。地面に横たわっている円筒をよく見ると半透明の風の刃が5㎝間隔で並んでいる。総数200本の風の刃が縦に並んでいるのだ。

“発進”

円筒が高速で回転を始め地面に沈み込んでいく。

上部が少し見えるまで沈み込むと前進を始めた。

グウオ~ン。

大きな音を立てて切株が並ぶ伐採地に向かっていく。

グウオ~ン。

円筒が通り過ぎた所は細かな土。

切株も石も粉砕されている。


「何度見ても閣下の魔法は凄いな。」

「10人がかりでも1日に数本しか掘り起こせない切株が1瞬かよ。」

アラレの新魔法“シュレッター”

王妃殿下から魔力量を増やすように指示されて、毎日限界まで魔法を使っている。

どうせ魔法を使うなら役立つ魔法が良いと編み出したのが“シュレッター“。

水平のウィンドカッターで木を伐採、垂直に並べたシュレッターで切株と石を裁断、あとは地面を均せば畑になる。森の土は腐葉土をたっぷりと含んだ肥沃な土だ。

「ふうっ。」

将軍参謀が差し出す椅子に座る。

すぐに甘い果実水とお菓子がテーブルの上に置かれた。

「美味しい!」

アラレが笑顔になると、参謀達の顔も緩む。

森の近くでは入植者達が家を作っている。

数年後には大きな村になりそうだ。

国を丸ごと併合した混乱も収まり、平和な時間が続いている。

今のうちに魔力を増やしていざという時に備えなければならない。

軍の訓練も順調。

色々な演習訓練を取り入れたことで練度も士気も高くなった。


もうすぐ魔法学院の入学。

ドラゴ王国では魔法学院か旧騎士学院、現士官学校を卒業しないと貴族として認められない。めんどくさいが仕方がない。

それまでに出来る事はやっておきたいと思っていた。


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