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馬丁爵 我が家はお馬さん優先です  作者: 免独斎頼運
第2章 男どもは・・・
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31 存亡の危機

結婚式まで1か月を切った。

今日も妃殿下と楽しいお茶会、の筈だった。


「このままでは王国が潰れます。」

王妃殿下が爆弾発言。

目の前には王国の地図。

地図には王国軍の配置が記されている。

国境に設置された砦の人数にはことごとく線が引かれ、半分近い数に書き直されている。

「先日の横領事件で判明した今現在の兵力が新しく書いてある数字よ。」

「減った分の兵はどこに行ったのですか?」

「引退や、新規採用停止分と解雇。どこにもいないわ。給料は払われているけどね。」

「給料が払われているのに兵の数が減っている?」

「カスミに教えられるまで私も知らなかった。調べたら全部横領されていたわ。」

「陛下は何と?」

「書類を確認せずにサインしていたそうよ。早く片付けないと豪馬を見に行けないからだって。」

「はあぁ?」

何のための国王なんだ?

全く、この国の男どもはロクな奴がいない。

「頭に来て思い切り張り倒したら、未だにショックで寝込んだまま。生まれて初めて女性に殴られたのですって。」

「・・・・。」

とりあえず王妃殿下には逆らわない様にしよう。

「国境付近に兵を集めているのは、今現在判っているだけで3か国。ここ、ここ、そしてここ。そこに書いてあるのは情報部が集めた進攻時の兵力予想。」

どこも守備兵の4~5倍、圧倒的な兵力だ。

「一番先に戦闘になりそうなのはどこですか?」

「ここね。お茶会でカスミに兵力削減の情報を入れてくれた伯爵領。いつ攻撃が始まってもおかしくないわ。」

地図で確認してみる。

「砦の2個大隊4000に対して敵は2個師団の2万と騎士団200騎ですか。」

「攻城兵器が揃ったらすぐに攻撃が開始されるわね。砦には魔導師隊がいないから騎士団は砦を抜いた後の侵略用ね。この砦を抜かれれば王都まで大きな戦力のある砦や城は一つも無いわ。」

地図をもう一度確認する。

「おっしゃる通りですね。」

「王都の守備兵を援軍に出すか、砦を見捨てて王都に籠る。考えられる選択肢はそれだけね。辺境に配備されている師団では攻撃までに間に合わないわ。ただ王都の兵を援軍に出せば、こちらの国が攻めてくるでしょうね。」

王妃が王都に近い国境を持つ国を指した。この国も国境に兵を集めているらしい。

「カスミはどちらが良いと思う?」

地図を確認しながら考える。

「・・・、この砦には私が豪馬騎士団を率いて向かいます。王都守備軍はそのままにして各地に駐屯している兵を他の2国の抑えとしてこことここに配置します。」

「豪馬騎士団と言っても騎士団にいる豪馬はたった8騎よ。」

「王国騎士団の豪馬は応援に送る兵達の兵糧や武器の運搬に使います。その方が移動速度を上げられますから。」

「カスミはどうするの?」

「王都の豪馬運輸に騎士が7~8名いる筈です。私の兄妹、王太子の5騎で12~3騎。それだけいれば敵を破れます。」

「馬丁爵閣下が2万の兵を破った時でも50騎よ。たったそれだけで勝てるの?」

「当時は騎士団を作ったばかり。殆ど訓練も出来ていませんでした。言わば素人でも50騎で2万を破れました。私達5騎は十二分に訓練されています。5騎で勝てると思いますが、念のために豪馬運輸の騎士を連れて行きます。」

「・・・、もしも勝てるならそれが最善ね。勝てなくてもカスミのせいにはしないから絶対に無理しちゃダメよ。」

「はい。」

「緊急事態なのでバカ陛下から私が指揮権を預かります。その上でカスミを将軍に任じます、宜しいですね。」

「はい。」



王都にいる全貴族と軍の指揮官に緊急招集が掛かった。

「王国存亡の危機であるが、余は病で指揮を執れぬ。よって王権を王妃に預ける。王太子妃カスミ=ドラゴ、その方を将軍に任ずる。軍を指揮し王妃を助けよ。皆の者、王妃とカスミの命に従って国を護れ。」

陛下が皆の前で宣言した。

王太子の結婚式が近いため高位貴族は全て揃っている。

結婚式は吹っ飛んだが陛下がドラゴの家名を使った事で私は正式に王族となった。

「陛下より王権を預かりました。陛下の命によりカスミ=ドラゴ将軍と共に王国を護ります。カスミ=ドラゴ将軍、軍の配置を命じよ。」

「軍の配置を命ずる。皆も知っている通り、3か国が王国進攻の構えを見せている。最も逼迫している伯爵領の応援には私が豪馬騎士団を率いて出陣する。第1騎士団と第1師団は王都の治安維持に当たりなさい。第2騎士団と第5師団、第6師団は侯爵領の砦に向かい、それぞれの軍旗を掲げ城壁の上に兵を並べて時間を稼ぎなさい。こちらから仕掛ける事はなりません。第5騎士団は辺境にいる第4師団と共に西部国境の砦に向かいなさい。こちらも同様の時間稼ぎです。貴族達はそれぞれの領地に戻り領内の治安を維持せよ。」

貴族達が王都にいると内通や謀反の危険があるのでそれぞれの領地に帰す。

王国の貴族は信用出来ない。


「恐れながら、豪馬騎士団だけで2万の兵に当たるのはいかがなものかと。将軍閣下に万が一の事があれば一大事です。」

「私は編成したてで訓練すら出来ていない50騎で2万の兵を破った馬丁爵の娘、十二分に訓練された豪馬騎士団がたかだか2万の兵に後れを取る事は無い。そなた達は王国を護るために自分の任務を果たしなさい。敵兵には王国の地を1歩たりとも踏ませてはなりません。」

「「「おう!」」」

自信満々に答えると指揮官たちの士気が上がった。

殆どの王国軍指揮官はミョウコ家の豪馬がどれほど強いかを模擬戦で知っているのだ。



王太子と共に学院に向かい兄妹と合流、豪馬輸送王都厩舎に向かう。

厩舎にいた8人の騎士と合流して13騎の豪馬騎士団が編成された。

13騎の豪馬騎士団が街道を突進する。

馬で5日の道を2日で走り抜けた。

砦の指揮官は豪馬騎士団の将軍旗を見て即座に指揮権を私に移譲した。

すぐに作戦会議。

各部隊の指揮官に作戦を指示する。先行したサンちゃんの目で敵の布陣は確認済み。

翌朝、砦の前に13騎の豪馬が並ぶ。私の後ろには大きな将軍旗がはためいている。

背後には歩兵3000。万が1に備えて兵1000を砦に残した。



ふと何かを感じて空を見ると、遥か上空に真っ白な天馬、馬神様だ。

兄妹も気が付いたらしい。

「乗ってるのは父さんよね。」

「遠すぎて見えないけど、それ以外にはないだろ。」

「何をしているのかしら」

「さあ。父さんだから判らないな。」

確かに父さんは時々訳の分からないことをする。

馬神様は敵の王都方向に消えていった。


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