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17 豪馬と仲良くなりました

キリシが王都に帰った。

代官や領地の有力者との打ち合わせが終わったらしい。

俺は領地に残って、ミスリル鉱山の傍に見つけた草原で馬と戯れている。

テンちゃんと飛んでいる時に野生馬の群れを見つけたのだ。

魔獣との交配があったのか、6本脚の巨大な馬?


テンちゃんによるとこの子達もテンちゃんの眷属らしい。

見付けた時はガリガリに痩せていた。

飼葉を与えたら食べる食べる。

馬の3倍ほど食べてももっともっとと鼻面を押し付けてくる。

“食い物が少なくて皆腹が減っている、すまぬ”

リーダーらしいひときわ大きな馬?が声を掛けて来た。

“いいよ、俺も頑張って食べ物を調達するから”

とはいえやって来た馬?はおよそ20頭、すぐに飼葉を食べ尽くすのは目に見えている。


領地が経済的に苦しいのは俺も知っている。

厩舎には最優先で資金を回してくれるのだが、馬丁達の給料も少ないまま。

新しく見つけた馬?達にお腹一杯食べさせてあげたい。

屋根のある寝床を用意してあげたい。だが資金が無い。

森に入ってウィンドカッターで次々と木を切り倒し亜空間倉庫に納める。

夜のうちに厩舎横に並べて置くと夜目の利く馬?達が朝までに葉を食べ尽くしてくれる。

新鮮な木の葉は馬?達の好物。


安心して住めるように森との境に土魔法で壁を作り、森を切り倒した丸太を馬丁達と一緒に組んで厩舎を作った。

雨の日にのんびり雨宿りして貰うため。

資金が無いので何もかもが自作。

毎晩新鮮な葉を食べて、ガリガリに痩せていた豪馬達も少しふっくらしてきた。

屋根のついた厩舎も出来た。

素人の手作りなので隙間風びゅうびゅう。

“これで安心して子作りが出来る”

粗末な厩舎でも20頭程の群れを率いるリーダーのロクは喜んでくれた。

6本脚だからロクだろうって?

はい、その通りです。すみません。

馬よりも2回り大きく、力も強いので豪馬と呼ぶことにした。



ロク達の世話は楽しい。

太い脚が6本もあるのでめっちゃ早いし力がある。

2頭、3頭で協力すれば太い木も根こそぎ抜ける。

賢いからちゃんと言う事を聞いてくれる。

出会った頃は怪我をしていたり病気の子もいたが、俺が治したので今は皆健康。

何か手伝いをさせろと鼻を押し付けてくる。

可愛い。

俺が木を切り倒し、豪馬達が根を掘り起こす。

土魔法で均して固めれば道になる。

木の葉は豪馬が食べるので、馬丁が枝を切り落とせば建築用丸太と薪が出来上がる。

豪馬達の活躍で草原から街道までの道が完成した。

毎日大量に切り出される丸太は豪馬が牽く大型荷車で村や街に運ばれる。

不足していた建築用の木材が大量に供給されて領内は一層の建築ラッシュとなった。

豪馬達も嬉しそうに手伝ってくれる。

今はミスリル鉱山までの道を一緒に作っている。

ミスリル鉱山は冒険者に守られてやって来た数人の鉱山技術者が崖下で野宿しながら調査している。道が完成すれば本格的に鉱山開発が始まるだろう。



ハグちゃんが領地に来た。キリシと入れ替わり。

ロク達を見て固まっている。

“俺の奥さんだからよろしくね“

紹介するとロクがハグちゃんに鼻を擦り付けた。

「豪馬の挨拶、よろしくって言ってる。」

俺が教えると、ハグちゃんが優しく頭を撫ぜる。

「ブルル!」

「有難う、って言ってる。」

「最初はビックリしたけど可愛いわね。」

「うん、馬も賢いけど豪馬の方がもっと賢いよ。ロク達もテンちゃんの眷属だって。」

「だから賢いのね。」

「大型馬車でも1頭で牽けるんだよ。」

「凄いのね。」

「今は丸太を村や街に運んでくれている。」

ハグちゃんに豪馬の良さを宣伝だ。


ロクの話では野生の時に比べたら遥かに多く食べられて皆が喜んでいるらしいが、まだまだ満足するだけの量を食べているのではないと俺は知っている。

領主屋敷の食事を見れば領地の財政が苦しい事は俺でも判る。

馬丁の食事で慣れている俺は良いが、公爵家で育ったキリシが良く我慢出来ると感心するほど庶民的な食事。

それでも腹を空かせていても文句を言わない豪馬を見ていると、少しでも餌代を増やして欲しいと思ってしまう。

「はいはい、餌代を増やして欲しいのね。」

バレてた。

「キリシからも聞いているから出来るだけ頑張るわ。でも本当にギリギリなの、それは判ってね。」

「うん。」



1年が過ぎた。

レキュウ王国からの移民が増えた。昨年以上に麦の生育が悪いらしい。

軍からの脱走者も大勢来た。

鉱山労働者が増えたので森を切り開いて街を作っている。

労働力が確保出来たので鉱山開発も街の整備も順調。

鉱山労働と言っても危険は無い。

ミスリルの鉱脈は地下から山の中腹まで伸びているので露天掘りが出来る。

落盤事故が無いので安心。

今はごく少量を鉱石のまま売っているが、いずれは製錬所を麓に作る予定。

大量に生産すると価格が下がるし、いずれは掘り尽くしてしまう。

せめて孫子の代までは採掘できるよう生産量を抑えている。

と、ハグちゃんが教えてくれた。



俺?

俺はずっと豪馬に掛かり切り。

豪馬の餌を確保する為に大量の木材を伐採したので開墾事業も進んでいる。

開墾出来るのは大型魔獣がいなくなったおかげなので神獣様達に感謝。

テンちゃんが時々森に隠れていた豪馬を連れて来てくれるので豪馬が46頭に増えた。

今年は仔馬が7頭生まれた。

ロクから豪馬の出産は難産が多いと聞いて緊張したが、緊張したのは最初の1頭だけ。俺が精密探査をしながら取り上げたので皆短時間で生まれた。

出産後の母体のケアも勿論俺、万全だ。

ロクだけでなく後から来た豪馬たちも喜んでいた。



さらに1年が過ぎた。

レキュウ王国はさらに酷い生育不良で、廃村が増え、荒れ地が広がっている。

商人達も殆どが逃げ出し、都市の住民は独立時の10分の1以下になったらしい。

王国が積極的にレキュウ王国の情報を流しているし、貴族以外の住民は受け入れているので、帝国の場合は半信半疑だった者も神獣の加護を失った場合にどうなるかを理解するようになった。

お陰でレキュウ王国の独立を認めた陛下は名君と評判されている。

って、ハグちゃんが言っていた。


俺は新年の儀に日帰り参列しているだけなので王都の事は全く知らない。

テンちゃんはめっちゃ早く飛べるから便利。


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