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6話 バイト



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授業が終わり、クラスのみんなは部活に励む者、教室で喋る者やアルバイトに行く者と分かれる。悠馬は今日、アルバイトの予定があった為、急いで下校することに。


「蓮、また明日な!」


「おう!明日12時にハチ公前集合ね!」


明日は土曜日で蓮と遊ぶ約束をしていた。日向との遊ぶ前に服を買っておきたかったのと、土曜日何もせずに待ってると落ち着かないと思ったからだ。


「美桜もまた来週!」


「うん!また来週ね!」


俺は学校を出ると、バイト先のカフェへ向かう。そのカフェは日向との帰り道にあった商店街の中にあるカフェで、雰囲気は落ち着いていて働きやすい場所だ。近くに行きつけの本屋さんもあり、帰り道たまに寄っている。

とりあえず俺に都合がよくて、働きやすいところだ。


その店の店長は40代の女性で本田百合という名前で百合さんと呼ばせてもらっている。

旦那さんはサラリーマンで、カフェの営業は百合さんの完全な趣味らしい。

カフェの売り上げはどの程度かは知らないが、どのメニューも良心的な値段だ。


バイト先に着くと、早速バイト服に着替えてホールに出る。


「百合さん、おはようございます!」


百合さんは美人だ。髪はショートヘアでこのお店のエプロンを着ている姿を見ると母親って感じがする。


「はい、おはよう!佐藤君、今日もイケメンだね〜!」


百合さんはよく冗談を言う人で、俺はそれを流している。

ここにくるお客さんは新規の人が少ない代わりに、リピーターが多い。

だから俺の顔も覚えられる。


「佐藤君、これ8番テーブルね。」


「分かりました。」


百合さんからブラックコーヒーを受け取ると、8番テーブルへ持って行く。チラッと見ると珍しく新規の方だった。見た目は若くて綺麗な女性。髪はロングで耳にかける仕草は気品を感じる。


「お待たせしました。ブラックコーヒーです。」


「ありがとうございます。」


綺麗な女性の方は読んでいた本を閉じて、律儀にお礼を言って注文したブラックコーヒーを受け取った。

俺の用事は済んだので移動しようとした時に「ちょっと」と呼び止められた。


「どうしましたか?」


「お名前は?」


気品のある話し方からして、裕福な方なのだろう。それにしても綺麗な女性だ。どこか日向を思い出させる顔をしている。


「佐藤悠馬です。」


女性は一言「ありがとうございます」と言うと本に目を向けて、続きを読み始めた。

俺は首を傾げながら「ま、いいか」と思って仕事に戻った。


「佐藤君、話しかけられてたね!ナンパ?」


厨房へ戻ると百合さんはニヤニヤしながら言ってきた。


「そんなわけないじゃないですか。名前を聞かれただけですよ。」


厨房から8番テーブルの女性を見ると、本を読んでいる為こちらの視線に気づかない。

このカフェの雰囲気とマッチして、絵画として描かれていてもおかしくない。


「綺麗だね〜、あの女性。見かけた事ないから新規の方なんだろうけど、何と言うか絵になるね。」


百合さんも同意見らしい。

2人で8番テーブルの女性を眺めていると、お店の前で足を止めて、店内を見る学生の姿が見えた。


「俺案内してきます!」


お店の出入り口に行くと、その学生が入ってきた。俺は案内しようと声をかける。


「いらっしゃいませ!お一人です…か」


そこにいたのは日向だった。


「あれ?悠馬先輩?」


別に隠していた訳じゃないし高校がバイト禁止な訳でもないのだが、働いているところを見られるのは正直恥ずかしい。


「偶然だね!ここ俺のバイト先なんだよね。」


「ここが悠馬先輩のバイト先…」


日向も偶然なのだろう。急な事で放心状態になっている。


「じゃあ案内するね!お一人様ですか?」


「いえ、待ち合わせです。」


待ち合わせか。今は8番テーブルの女性しかいないのでその方だろう。


「あ!日向、こっちよ!」


声のする方を見ると8番テーブルの女性がこちらを見て手を振っていた。


「お母さん!」


日向は8番テーブルまで歩いて行くと、ソファに鞄を置いて座る。俺は注文を聞くために日向について行ったのはいいが、よく考えると告白してきた子とその母親が目の前にいる。


この人が日向のお母さん!?嘘だろ。20代にしか見えないぞ。てか日向のお母さんって告白の件は知ってるのか?やばい。めっちゃ緊張する。


「あの、ご注文はお決まりでしょうか?」


俺は緊張を悟られないように、いつも通り店員として接する。


「オレンジジュースを一つください。」


注文を受け取ると、俺は厨房へ向かった。


「それで日向、相談って何?」


お母さんは読んでいた本を鞄にしまって、コーヒーを一口飲む。今日お母さんと待ち合わせしたのは、悠馬先輩についてだった。男性の事が好きなことをお母さんに打ち明けようとした。


どうしてこの場にお姉ちゃんがいないかは、単純に面倒くさいと思ったからだ。

お姉ちゃんの事だから相手はどんな人だとか、ボクに相応しいかとかを言ってくると思うから呼ぶのをやめた。


でもよりにもよって悠馬先輩がこのお店でバイトしてるなんて思っても見なかったよぉ。


「ここじゃあなんだし、場所変えないかな?」


「日向がここを指定してきたんでしょ?」


うぅ…お母さんが正しい。けど悠馬先輩がいる場所でお母さんに同姓が好きとは言いづらいし。


「言いにくい事なのね。私は日向のお母さんなのよ?言いにくい事でもちゃんと話してちょうだい。私は何を言われても受け入れるわよ!」


お母さんから言われた言葉は日向の心に響いた。今の世の中、同姓愛などは厳しい目を向けられる。でもお母さんは違う。一番寄り添ってくれる。お母さんを信じよう。


「お待たせし「ボク男性が好きなんだ!」」


ボクの告白と悠馬先輩の声が重なってしまった。

…って、悠馬先輩に聞かれた!?

お母さんに打ち明けてるとこ聞かれた。恥ずかし過ぎる。


「あははは。オレンジジュースになります。失礼します!」


「あっ。」


悠馬先輩は逃げるように奥の方へ消えて行った。ボクは悠馬先輩を目で追っていた。


「まず、彼は知り合いなの?」


「うん。学校の先輩。」


お母さんはボクを見た後に悠馬先輩が逃げて行った方を見ると、少し考えた様子で「ふーん。そういうことか。」と言ってお母さんはニヤニヤしだす。


「日向、彼のことが好きなんでしょ!」


ボクが驚いたのを見るお母さん。図星なのがバレバレだった。ボクは悠馬先輩を好きになったこと、告白した事をお母さんに伝えた。


「なるほどね。分かりました。とりあえず悠馬君の返事待ちなのね。私は日向の恋を応援するわ。同姓だからって関係ないもの。」


「ありがとう!お母さん!」


こうして悠馬がいない間に、日向と日向のお母さんの問題は解決して行った。

悠馬については、厨房で息を潜めていたのだった。






わくわく




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