episode9〜その部屋は〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
皆のいるところへ戻ると、ロキが既に起きていた。
二人が浴室にいる間に、ここまでの事の成り行きを話されていたようであった。
「ロキ!? 具合いはどう? あまり無理しないで、まだ… 」
「いえ、カヌア様。大丈夫です。お話は聞きました。この様な時に、倒れてしまい申し訳ありません」
その言葉と強い眼差しに、心配しながらも少しホッとしたカヌア。
そして、カヌア達も浴室にて確認して来た事をウィルに話すと、納得するような表情で頷いた。
「ロキ、突然の事で驚いたと思う。自分が人間では無い他の種族だったなんて… でも! ロキはロキッ、私の大切なロキだから、これだけは… っ」
「ふふ… カヌア様、大丈夫ですよ。確かに驚きはしましたが、特に生きづらさとかは、今のところ感じた事は無いので」
と言いながら、ロキはいつもの表情で笑った。
しかし、カヌアには視えていた。
少しだけ不安そうな表情のフラフィーが。
「そう? あの、ロキ? 何か確かめる方法とかあるかしら? ノゥリアの塩水の反応みたいに何か… 」
「そうですね… それはハッキリとは分かりませんが、その… 僕、やっぱりって思うところがあるんです」
その言葉に、ウィルが反応する。
「ん? 心当たりがあるのか?」
「えと、一度だけ… このペンダントを外して寝てしまった時があったんです」
ロキは自身の首に、常に掛けてあるその首飾りを指して言った。
「朝起きたら、森で寝ていた事があったんです。しかも、その… 服も何も着ていなくて… 僕何にも覚えてなくて… 近くの猟師さんに助けてもらって、服を借りたことがあったんです。まさかとは思ってたけど… 自分からすごい獣の臭いがしたんです。鼻が効くからすぐに分かりました。
しかも、身体は傷だらけで… まさか僕が… 狼だったなんて… 」
「ねぇ? ロキ、そのペンダントって、もしかして ‘その為’ のものなんじゃない?」
「その為の?」
「うん。何かのきっかけで、ロキが狼になるのを抑える為の」
「そう… なんですかね?」
そう言いながら、ロキはそのペンダントを大事そうに撫でた。
「カヌア様、ノゥリアさんは塩水がきっかけで、人魚の姿を現したんですよね?」
「うん、そうよ」
「きっと僕にも、狼の姿になるきっかけがあると思うんです。それが何なのかはまだ僕自身も分かりませんが… 」
そう言いながら、ロキは少し俯いた。
そんなロキを見ながら、カヌアは優しく微笑みかける。
「そうね。でもそれは少しずつ探しましょ? 一緒に、ね?」
ロキはその綺麗な黄色の瞳を少し湿らせながら、カヌアを見つめて頷いた。
(っか… 可愛いっ! 超絶可愛い!)
しかしカヌアは、その抱きしめたい煩悩を、横に脱ぎ捨てタラゼドに質問した。
「あの… 先程からずっと思っていたのですが、その壁とノゥリアの髪色の変化の特徴って…似てますよね? まさかですけど… シレーヌ族の髪の毛で出来ている… とか?」
「わたくしも、気になっておりました。ノゥリアと壁の特徴が似ている事に。しかしながら、これも存じ上げ… 」
すると、ヴァスカがゆっくりとその壁に近づき、口を開いた。
「いや、それは違います」
「ヴァスカ? 何か知っているのか?」
ウィルの言葉を繋ぐように、話すヴァスカ。
「… ですが惜しいかと。その特殊な塗料は恐らく、シレーヌ族が存在していた一番近い海水で、出来ているのではありませんか?」
その言葉に、ロキが壁の匂いを嗅いだ。
(可愛い… )
カヌアが捨てたはずの煩悩を少し拾った。
(何だろ… もう子犬にしか見えない)
狼である。
「確かに… 潮水の香りがします」
ウィルはロキの言葉を聞き入れ、頷くと二人を真っ直ぐに見つめた。
「そうか… ノゥリア、ロキ… これから二人に頼みたいことがある」
二人はこれから言う言葉を予想しているのか、不安な顔をしてはいたが、真剣な眼差しをしていた。
(フラフィーがめちゃくちゃ緊張してる… )
カヌアもその場の空気を感じ取りながら、静かに見守っていた。
ふと横を見ると、ヴァスカが何かを確認するように辺りを見ていた。
カヌアがそれを凝視する。
(ん? ヴァスカ? 何やってんだ?)
目配せをして合図を送る。
しかし、ヴァスカは気付いたのか気付いてないふりをしているだけなのか、そのまま一瞬にしてスッといなくなった。
(あっ! おい!)
カヌアはウィルの見える位置にいるので、下手に動けない。
彼はこの先の事を、まだノゥリアとロキに話していた。
(あいつ… 何を企んでるんだ? いや、何か… 見つけたのか? … 信頼していいんだよな? ウィルは今、大事な話してるし… )
カヌアはまだ出会ったばかりの、ヴァスカの素性がよくわからないでいた。
その様子に気が付いたカブラが、カヌアに近づき目の前に出て来た。
そう、ウィルの視界からカヌアを隠すように。
そして後ろに回した手で、カヌアの袖を引っ張った。
(ん? 行っていいってことか?)
カヌアは軽く会釈をすると、その場をそっと離れた。
そして、ヴァスカがいなくなったその辺りに近づくとある事に気が付いた。
(何だろこれ? 壁がズレてる… ? これって… )
そして、軽くその壁を押すと勢いよく壁が一回転した。
(うっわっ… !)
ドテッ!
(ったぁぁ… 何なんだこれ… 忍者屋敷かよ)
「え… 」
カヌアがその怪しい壁によって、押し出されたその部屋では、ヴァスカが立って何かを見上げてていた。
カヌアが顔を上げたその瞬間、目を見張る光景が脳内へと流れ込んできたのだ。
それは、壁や天井に張り巡らされた様々な種類の貝殻だった。
壁一面に散りばめられた貝殻は、何かを護るかのように光を放っていた。
「綺麗… この量… 一体どこから?」
カヌアは、その美しさに思わず息を飲んだ。
この部屋が何を意味するのか、今のカヌア達にはまだ理解できなかった。
しかしそれらを見つめるヴァスカの瞳は優しく、口元が少し緩んでいた。
「ヴァス… 」
すると、先程の忍者扉から音がしたと思った瞬間、カブラの姿が見えた。
「あれ? カヌア様こんな所で… 何を?」
「え? カブラ様… 先程のヴァスカの行動に気が付いて、行かせてくれたんじゃ… 」
「あ、いえ、その… 御手水に行きたいのかと… 」
(私、そんなもじもじしてた?)
カヌアは苦笑いをして、話を逸らした。
そして、ウィルが中へ入ると、その部屋の光景に同じく驚き、声を漏らした。
「これは一体… 」
カヌアがヴァスカに聞く。
「ヴァスカは… この壁が怪しいと思って、調べていたの? それとも… 」
「もちろん、調べておりました。この壁だけ、何だか違和感があったので… 」
「この部屋は何だ? とても美しいが… 少し特殊だな」
ウィルがその貝殻をゆっくりと、なぞりながら言う。
長老タラゼドは口を閉じたまま、その部屋を深々と見ることはなかった。
すると、ノゥリアがそっと呟いた。
「… 知ってる… 私はこの部屋を… 知ってる?」
「え? ノゥリア、この部屋に来たことあるの?」
「…はっ! ごめんなさい! わからないんですけど、ちょっぴりそんな気がして!」
ノゥリアは少し慌てて、訂正した。
「そう? でも、ノゥリアがそう思うのなら、きっとあるのよ… 来たことが。ここはあなたの為に造られた部屋… だったりして? ふふ、真実はきっとこの先にわかるわ。私も… そんな気がする」
そう言って、カヌアはノゥリアの手を優しく包んだ。
そうして、カヌア達は後日また迎えに来る事を約束し、地下の街を後にした。
王宮へと戻る道のり、カブラがそっとカヌアに近づいて言った。
「カヌア様、先程はとんだ勘違いを失礼致しました」
尿意を催したと思った事を、謝罪して来たのだろう。
「いえ、いいんですよ。おかげでヴァスカの後を追えたわけですし」
カヌアは何も気にせず、ニコッと笑った。
「それでなのですが… 」
「ん?」
「少し前から、カヌア様はウィル様を敬称無しで、お呼びするようになられましたよね? それで… 私の事も、名前のみで呼んで頂いても、宜しいでしょうか? 主人は敬称が無いのに、私だけそれがあるというのも… 何だか居た堪れなく… 」
(確かに… 確かにそうだ… つい癖で… )
「わかりました。カ、カブラ… 」
そうカヌアは呼んだ。
慣れない呼び方で名前を言ったがために、顔が少し赤くなる。
地下道は暗い。
そう簡単に見えるはずがない。
しかし、その声色のみに反応した者がいた。
ウィルだ。
すかさず、カヌアの肩を引き寄せる。
「カブラ? 何を吹き込んだ?」
カブラはその対応に慣れているため、スンとした顔で説明した。
(ヤキモチがすごい… )
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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