episode5〜鍵〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
夕刻になり、涼しい風がカヌアの髪を靡いた。
視界を遮るその髪が、元の位置へと戻ると、遠くの方に大きな帽子を被った姿が見えた。
カヌアが彼に近づいて言う。
「あれ? ヴァスカ? そんな所で何してるの?」
「いえ… 私は特には… カヌア様こそ、もう日が暮れます。早くお部屋に戻られた方がよろしいかと?」
(怪しい… まだ、アザの男としての認識が抜けないのよね… )
「ねぇ、少し話さない?」
「ん? いえ、私は… はい」
ヴァスカは、カヌアのその圧に負けた。
カヌアは部屋はよろしくないと、いち女子として思ったので、中庭のテラスへと誘った。
「それで? あなたにも視えている感情を表す妖精、フラフィーはどんな姿をしているの?」
「その件なのですが、少し気になっておりました。確かに私にも見えてますが、人によって見え方が違うのですか?」
「うん! 私のは、可愛いおじいちゃん! ウィルのは、可愛い女の子の妖精に、視えてるみたいよ! で? で? あなたは?」
興味津々に、前のめりで聞くカヌア。
(ウィル様を呼び捨てにしてる… やはり本当にご婚約者なのか? それにしても… )
「全然違うんですね? 老人? とおなごの妖精ですか… 私のは… 男の子ですかね? しかしその子には、黒い翼が生えております」
「えっ!? かなり特殊ね!? それは可愛いの?」
「可愛い… ? うーん… と申されましても、可愛いの概念が… 」
(可愛いがわからない? … そうだっ!)
カヌアはそう思い、何かをゴソゴソと出し始めた。
しばらくの間、沈黙が続く。
(あぁ、苦手だ… 俺の苦手なこの空気… 話が続かない… きっとカヌア様も嫌に… )
ヴァスカはそう思いながら、段々と身体に何か重い ’気’ が立ち込め始めた。
そうしてついに席を立とうとしたヴァスカ。
しかしカヌアは、そんな気持ちを露知らず、突然大きな声で言う。
「見てっ! 可愛いでしょ? ヴァスカは、この中のどれが一番可愛い? 好き?」
書庫室帰りのカヌアは、その持っていたペンと紙を使って、あるモノを描いていたのだ。
彼女が ’得意’ としている絵だ。
あくまでも ‘本人‘ が得意と思っているだけなので、実際には ‘絵らしきモノ‘ だ。
「これは… ?」
「本人達の証言を元に描いた、フラフィーの絵よ? わかるでしょ? ねぇ? どれ? どれ?」
(これが… 絵? 何かの残像かと思った)
ヴァスカは、珍しく動揺していた。
「お、恐れ入りますがカヌア様? 念の為、一つ一つの説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ん? 一目瞭然だと思うけど… まぁいいわ!」
と言いながら、カヌアはそれぞれの三体をヴァスカに説明した。
ヴァスカはその三体の見分けがつかなかったので、適当に選んだ。
そして気になっていたことを問いかける。
「カヌア様は… 」
「ん?」
「私と話していて…その、何とも思わないのですか?」
「あん? 何を? あ? あぁ、そりゃまだ、怪しい奴だとは思ってるわよ? だってそうじゃない? ここ二、三日のそれも数時間しか一緒にいないのに、あなたの何がわかるの? 長く一緒に居たって、わからないことだらけなのに。信頼関係なんて、そう簡単には築けない。当然よ、とーぜんっ! わからなくて当たり前! だからそんなに自分を卑下するなって! なっ?」
(この人、こんな話し方だっけか?)
「あ、え、そんな卑下まではしてな… 」
ヴァスカはカヌアのその笑みを見て、何か不思議な気持ちに包まれていた。
身体にまとわりついていた、黒く重い何かが捌けたような、そんな気持ちに。
「ねぇ… それより、あなたは自分の種族が何なのか知りたい… わよね?」
「はい、まぁそうですね」
「それは怖い事? 自分がその生き残りで… 色んなものを背負うかもしれない… 同族という仲間がいないかもしれない… その不安や責任の重さに怖くなったりは… 」
「へ? しませんけど? … あれ? カヌア様もしかして、尻込みしてるんですか?」
「え!? 尻込みっ… !?」
「ロキとノゥリアさん自身が、その種族の生存者とわかった時… 彼らに責任を負わせてしまうんじゃないか、急に遠くなってしまうんではないか、とか思ったりしてます? ふっ… そんなの、それを聞いた本人達が、決めればいいんです。それにカヌア様が思っているような事は、起こらないと思いますけど?」
「え? それってどういう… ?」
「俺は… 俺なら、何で滅びゆく事になったのか… 他に仲間がいるのか… いるならどこにいるのか、自身がどういう生態なのかとか、色々と知りたいっすけどね。だからって、今まで関わってきた人達を、そう簡単に切り捨てたりとかもしようとは思わない。カヌア様が決める事ひゃはいへふ… 」
「なんか… むかつく。むかつくな。当たり過ぎてて… 図星よ… ヴァスカのくせに。さっきまで自分を落ちこぼれみたいに、思ってたくせに… 」
カヌアは、ヴァスカの両頬を摘んでそう言う。
(えっ!? むかつくって何!? 理不尽!! あなたが聞いてきたんでしょう!? てか! 思ってないし! 俺! 落ちこぼれとか思ってない!)
「いはいっ… っだ! 痛いです! 何するんですか!?」
ヴァスカは、その両手を振り払って言う。
「ん? てかちょっと待って!? あなた、まるで自分の種族が、人間では無いようなそんな… 」
「………… あの… 実は」
「まぁいいわ! わかった! 決めたっ! それとあと一つ! 気になってることがあるの!
以前、サルミニア国の王子にコインを盗みに入った男が、黒いフードの男を見たって… それってヴァスカの事だよね? 何で入ったの?」
(え? 俺の種を聞かなくていいんか? てか話が急に飛んだな…)
そう思いながらも、ヴァスカは応える。
「あぁ、あれはたまたまですよ。王宮内を見回っていたら、怪しい奴が入り込むのが見えたんでね」
その言葉にカヌアは、怪しみの目を向けた。
「へぇ… たまたま? 今まで王宮になんて、そんなに顔出さなかったでしょ? それなのに、たまたま来て? たまたま怪しい奴を捕まえたってこと? へぇなるほどねぇ〜」
「ん? なんか含みのある言い方ですね?」
「ふふ… で? 本当は? 何かを取りに来た? もしくは、何かを探しに来たとか?」
「……… はぁ… ほんっと、敵いませんね、カヌア様には」
と言いながら、頭を掻くヴァスカ。
「ンッ… フフ、フフフ」
「あの、その不気味な笑い方、やめてもらえませんか? お話しますので」
「御意」
「バカにしてます? … そうです。俺はある物を探しに来ました」
(さっきから ‘俺‘ になってるの気が付いてないのかな? … 素になってきてるんかな)
「何を探しに来てたの?」
「それは… ある扉です。信じてもらえないでしょうけど、地下街に続く扉が王宮にあって、その扉がどうやったって開かな… ったぁ! 痛いっ! 何っ!?」
そんな声になってしまったのは、カヌアのせいだった。
ヴァスカの両肩を、これでもかってくらいの力で握っていたからだ。
(今度は肩っ!? この人暴力的! コワイ!)
カヌアは、その顔をじっと見つめたまま、何かを考えるように静止していた。
「…なっ! 何なんですかっ! 爪が食い込んでますって! 痛い! え? ちょっ… カヌア様聞いてます!? ねぇ! カヌ… え? まさか… 心当たりがあるんですか?」
「しっ! 黙って!」
カヌアは考えた。
あの歪な鍵。
夢と思しき中で、蛇から受け取ったあの鍵。
ウィルも受け取った鍵。
形の違う二つの鍵。
歪な鍵は…
「三つ… 三つあったんだ… パズル… そうか… そうだったんだ! 三つのピースで… いや本当に三つだけなのか? 確かめるしかない… ウィルのも必要だ… 」
「カヌア様? 何をぶつぶつと… え? 三つ? 鍵… ? なっ!? もしかして!?」
「ねぇっ!! その鍵今持ってる!?」
「あ、はい、ここに… 」
「よしっ! じゃあ行くよ!」
「えっ!? あ、どこに… ?」
そう言って、カヌアはグィンっとヴァスカの腕を掴むと、勢いよく歩き出した。
(ほんと… 何なんだこの人は… コワイよ)
そして、ウィルの公務室へ向かうと、そこには驚いた表情で迎えるウィルの姿があった。
「カヌア!?… とヴァスカ!? 二人してどうした?」
「ウィル! 例の鍵を今、持ってる!? この… 」
と言って、カヌアは歪な鍵を出した。
「あぁ、ここに… でも急にどうしたんだ?」
「この鍵は三つあったの!」
と言うと、今度はヴァスカがそれを出した。
「なんだと!? ヴァスカはこれをどこで?」
「はい、生まれた時から、既に持ち歩いてました」
「これ、パズルみたいになってるんじゃないかしら!?」
そう言ってカヌアは、机の上で鍵を合わせ始めた。
全員が息を呑み、そして鼓動を高鳴らせる。
「…… こうやって… こう… 」
「「?」」
「ん? あれ?」
「「………… 」」
「…… ごめんなさい。私の勘違いみたいでした… 」
「いや、勘違いなどではない」
そう言って、ウィルは難なくピースを合わせた。
(バカなのか?)
その心の声に、カヌアは思いっきりヴァスカを睨んだ。
「え? な、何です?」
動揺したヴァスカがそう言うと、カヌアは更に目を細めて言う。
「今、バカって聞こえたっ!」
(… 鋭い… コワイッ!)
ヴァスカは、思いっきり首を横に振った。
すると、その合わせた鍵を眺めていたウィルが、口を開く。
「これで地下街へのあの扉が開くな。どうする? これから行くか? いや、今日はもう遅い。明日にしよう」
「はいっ! それと! ウィル、私決めたわ! 二人に… ノゥリアとロキの二人に伝えます! 二人には、自分の種族のことを知る権利があると思うの! そして! 私はその大切な二人のためにも、その種族達を守りたい。滅びさせるなんて事させない! 絶対に」
その強い決意の言葉に、ウィルは微笑んで頷いた。
そうして二人は決断した。
滅びゆく種族を、滅びかせないために…
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




