episode47〜小さな決意〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
それから数日後。
月華山の探索もそれなりに終えたウィル達は、次の行き先を考えるために話し合いを行なっていた。
「ヴァスカ、俺はずっと疑問だったんだ。レグが殺されたあの日、カヌアの意識はラジェットに持っていかれていた。その時、俺に言ったよな? ’ラジェットをよろしく‘ と… その名を口にしたのは、カヌアでは無く、ハルスの派生者として見ていたからではないか?」
ヴァスカは神妙な面持ちで、その言葉に真っ直ぐ耳を傾けていた。
「今思えばお前は、その時には既にその事実を知っていた事になる。俺達よりも随分と先にだ。王宮書庫の禁書を見る事ができない、お前がだ。それは百年以上も前から生きていた、ヴァンパイヤ族だったからと、先日の告白のおかげでやっとそれが繋がった。ここからは… 推測に過ぎないが、おそらくヴァスカが住処としている場所が、何処かにあるのではないか? そしてその場には、様々な書物などの文献や何かが記された物が、存在するのではないか?」
「さすがウィル様、感服致しました。ご名答です。私には、あの出来事で得た種族達の紅血を、保管する場所を考えなければなりませんでした。その量は加工したからといって、決して少なくはありません。そして私は、更に幼き頃によく足を運んでいた、ある場所の事を思い出したのです。そこからそう遠くない場所にある、古い城の存在を… 」
(古いお城… ?)
「… 運良くそこには誰も… いや、 ’住めることのできる者は‘ 誰もおりませんでした」
「住めることのできない? どういう事だ?」
「はい… 何故ならその場に居た種族も… 亡くなっていたからです。到着した時には、既にその種族はもう… 事切れていたのです。そして、彼らを弔う為に、そのまま城内の庭園に埋葬致しました」
(ヴァスカ… 本当に… 偉いよ)
「そうか… ではそこに行けば、詳しく記された文献があるのだな?」
「はい… かなりの量かと… 不言しており、申し訳ございません」
ウィルは頷いて応えた。
すると、カブラがふと何かを思い出したかように、口を開いた。
「ヴァスカ、私も少し思い出した事がある。ある夜、アルデリアとアルガダの途中にある湖で、夜月を見ていた事があったな?」
「はい… その節は大変失礼致しました。あの日の翌日が月が満ちる予定だったので、警戒しておりました。確か、あの時は… カヌ… 」
「ゔゔんっ!」
その時を思い出させないように、ウィルが思いっきり咳払いをした。
そして続ける。
「では何故、つい最近まで自身の種族を黙っていた?」
「それは… お側に居られなくなると思い… 私には、貴方様が必要だったからです。もちろん派生者である関係もありますが… 何よりあの時… 」
そこでヴァスカは、一瞬口篭った。
しかし、これ以上は失礼だと感じ、話を続けた。
「あの時、貴方様… 光の… 方々が、私に手を差し伸べてくれたからです」
「俺の… ルネ家か?」
「左様でございます。私が古城付近で息倒れそうになっていたのを、助けて頂いたのが、プレヌリュヌ・ルネ・アルデリア様でございます」
「プレヌリュヌ女王が?」
「はい。幼い私がありのままの姿でも、それを受け入れ… そしてアルデリア国へと手を引いてくれたのです。あの優しくて温かい手の感触は、今でも鮮明に覚えております。その後も代々受け継がれてきたルネ家の方々は、私を侮蔑することもなく、アルデリアへと置いてくださいました」
「知らなかった。そんな過去があったなんて」
そう、ウィルが呟いた。
「本当に… アルデリアの王族の方々は良い人ばかりよね! わかるわぁ。でも、古城の事は、あまり知られてないみたいだけど、誰が知っていたの?」
「プルヌリュヌ様だけでございます。女王にも自らは話した記憶がございません。しかし、彼女だけは知っておりました」
「そう… そういう所も考慮していてくれたのかしらね?」
「今となれば、真実はもうわかりませんが、おそらくは… それで、時々古城へと足を運んでは調べ物をまとめたりを繰り返しておりました」
「なるほど… 古城か… 決まりだな、カブラ」
ウィルが何かを決意したかのように、従者達へと目配せをした。
「はい、ウィル様」
「次の目的地はそこへ赴こう。カヌア、それでいいか? それとも一度、アルデリアへと… 」
「ううん。次の目的地はヴァスカの住処である、その古城よね! 私なら大丈夫! この前はごめんね! もう弱音は吐かない! むしろ今は、早く次の見知らぬ土地に行きたくて、ワクワクしてるわ!」
「いや… しかし、俺にだけは… 」
「言ったでしょ? 私、強いって」
(強がってないか? 本当に… )
「あぁ、しかし… 俺の前では… 弱… ふ、ふふふふふ… 」
「ん? ウィル?」
「あぁそうだな! そういうところが愛おしい… だが、いつでも胸を貸すからな!」
ウィルはそう言いながら、カヌアを思いっきり抱きしめた。
「え? ちょ、な、何!? 急に!」
突然の行動にカヌアも動揺を隠せないでいた。
そうして一行は、次の目的地への計画を進めるにつれ、今度はゾルが突然の申し出をしてきたのだ。
カヌア達の旅の共に行きたいと。
外の世界を見たいと。
カヌア以上に、その胸の高鳴りが止まらない。
そしてアルデリアにいる仲間を、探しに行きたいと自身の強い意志を持って。
「でもいいの? 折角仲間に… 家族に会えたのに… 」
「あぁ、もちろんもっと一緒にいたいという気持ちはある。しかし、俺に出来ることがあれば、出来る限りのことはしたい。それにこの広い世界をこの目で見てみたいんだ」
「ふふふ… そうよね? 楽しいわよぉ」
(煽ってる… )
ワイムは横目に見ながらも、その発言を止めようとは思わなかった。
「ライはこの国を背負って立つからな。わかったばかりとは言え、彼は王族だ。元々まとめ役でもあったし、その素質もある。アンセクト族を守らなければならない立場で、ライはここに残るべきなんだ。俺は外にいるというアンセクトが無事であると知って、迎えに行きたいという思いが一番に込み上げてきた。それにもしかしたら、他にも何処かにいるかもしれないしな。俺も何らかの形で、皆の力になりたいんだ」
「強い絆ね。そう… わかった! その気持ち、私にも少しだけ分けてくれない?」
「え?」
「ふふ、良い旅にしましょ、ね、ゾル」
そう言いながら、カヌアはゾルの大きな意志を握りしめたその手を、力一杯包み込んだ。
「あぁ… ありがとう」
そして、カヌアはライに向き直すと、更に念を押すように言った。
「ライ… この間話したと思うけど、私… あなたが女神達がいるあの楽園へと行く手段になるのは、やっぱり疑問が残る。だから、まだ月華蝶様と交信するのは、もう少し待ってくれない? 必ずそうならない為の方法を見つけ出してくるから。せめてそれまで… 」
カヌアの願いを快く聞き入れるように、力強くライは頷いた。
「わかった。カヌアがそう言うんなら待つよ。女王とは… 母さんとは話したいけど… 俺にも何か出来ることがあるか、探してみる!」
「うん! ありがとう!」
そう言うと、ライはカヌアの肩に乗り、頬を擦るように抱きついてきた。
「カヌア、道中気をつけてね。ゾルをよろしく。きっとまた会えるよね」
「当たり前じゃない! 必ずまた会うわよ! 絶対に! 約束! ゾルの事は任せて!」
そして、この月華山の地で、ライを含めた他のアンセクト族とは、ここで別れることとなった。
「ヴァスカ、その場所はここから、その方向へと行くことになるんだな? かなり遠いのか?」
「少しばかり南西へと戻る形となります。ケーフ山脈を越えます。位置的には、アルデリア国の西側に位置します。ケーフ山脈の端に被るような感じになるかと」
「そうか… どのくらいかかる?」
「普通に向かえば、おそらくひと月は… 」
その言葉に、カヌアは即座に反応を示した。
「えっ!? 片道!? 片道ひと月!?」
「あ、はい、大体ですが、月の満ち欠けで見てましたので… 」
「そんなに時間をかけてられないわね」
「かと言って、少し足を早めたとしても、それなりに限界がある。馬があるわけでもないしな… 」
「ふっ… ふふ」
「カヌア様?」
ワイムが変なモノを見るかのように、言った。
「ふふふふふ… 」
「あ、そうか!」
「ん? 何だ? 一体… 」
「ウィル! 私達、狼の幽谷からここまで、どうやって来たって言ったか覚えてる?」
「それはトゥバ… え? まさか… いやでも、ここには既に居ないんだよな? 二ヶ月近くも、その姿を見てないんだろ? この山には入れないからって… どうやって見つけるんだ?」
「ウィル様、カヌア様なら… ソレが出来るかと」
(ソレって何だ?)
「ウィル! あなたが言うように、月華山の麓でトゥバンと別れてから、ふた月が経つわ! トゥバンが何処に居るかもわからない。でも… でもね… ふふ… ふふふふ、私の為ならあの子は、この場所に来てくれるのよ? そう、私の為にならね… ふ、ふふふ… 」
(うわぁ… ものすんごい悪い顔してる… )
(悪魔だ… )
(こればかりはあいつが気の毒になる… )
「その道を使えば、おそらくはその半分以下で辿り着くんじゃないかしら? どう? ヴァスカ?」
「はい… そのくらいで行けるかと… しかし、私もその手段で行った事が無いので、上空からすぐに見つかるかは、定かではございません」
「大丈夫大丈夫! 道案内任せたわよぉ、よっ案内人っ!」
ヴァスカは謎の声掛けと受けた事のない心意気に、身体をビクッとさせた。
(えぇ… 何だろ? 胸騒ぎがする… )
「しかしカヌア、どうやってトゥバンを呼び寄せるというんだ?」
「ふふ、気になるわよね? でも今はそれができないから、まだ秘密ね! その時まで待ってて! 簡単だから」
カヌアは人差し指を、自身の唇に当てながらそう言った。
(可愛い… )
「あぁ、楽しみにしている」
ウィルは周りが見えなくなっていた。
盲目状態発動である。
(た、楽しみに… ?)
(ウィル様の、カヌア様に対しての思考がわからない… 本当こればかりは… 理解不能だ)
(今、絶対に可愛いだとか愛おしいだとか思ってらっしゃる… 謎だ)
心の中が色々と失礼な従者達は、満場一致で同じ様な事を各々思っていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




