episode44〜後継者〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
ハルスのイヤーカフ。
それは派生者含め、三者同士が同時に付け合う事で発動する。
その効果は、 ’ある者達’ からその存在をわからなくする。
また、それによって各々が付けられた者の感情が、相手の持つフラフィーとなって露になるようになってしまった。
カヌアには、ヴァスカの感情が小悪魔男の子として。
ウィルには、カヌアの白ふわ爺さんが。
ヴァスカには、ウィルの妖精ギャルが。
そう、ウィルが視ていたそのフラフィーは、カヌアの元いた世界でいう ’ギャル’ であった。
それが今、ヴァスカにも視えていた。
(何だろう… 何か… 苦手な感じだな… いや、他人にあまり接して来なかった俺が言うのも何だが… 苦手だ)
思う事は様々であるが、こうして各々の左耳に同時につけたカヌア達。
ウィルが頭の中で整理していた事柄から、気になる点を話し始めた。
「ここまでの話で、各種族達に共通するものが何点かあるな。一番気になるのが、百年ほど前に起きたという大地震だ。それによって、地上では地割れが起こり、アンセクトとルーが別れた。また海では、海水が全て空へと吸い込まれるかのように滝登った。そして、ヴァスカが目の当たりにした各種族の大量の亡骸… 」
「百年前って言ったら、アルデリアの王家も交代した時よね?」
「あぁ、そうだな。それも何か関係があるのかもしれないな。国へ帰ったら、もう少し調べるとしよう。タラゼドにも聞きたい事があるしな」
「タラゼド長老?」
ウィルは頷くと、話を続けた。
「それと、満月だ」
「満月… そうね、やはり満月は鍵よね」
「種族達は、その月の満ちる力によって、その姿に影響をもたらす。今わかっているだけでも、ルー族、月華蝶、ヴァスカ、シレーヌ族… 」
「それは何かの呪いなのかしら? それとも本来の姿が持つ性質?」
「確実な事はわからないが… 」
「ウィル様… 私の調べによりますと、おそらく後者であろうと思われます… 」
そう口を開くのは、ヴァスカであった。
(ヴァスカの… 調査… おそらく決定的な何かがあるのか? 例えば、書物などの… )
ウィルの考えが視えていたヴァスカは、コクリと頷くように相槌を送った。
すると、ウィルは少し髪を掻き上げて言った。
「話足りないが、今日は少し疲れた。ここまでにしてまた明日話し合おう」
(早くカヌアと二人きりになりたい)
その場にいた全員が、その心を感じていた。
(ウィル様はここに着くまで、カヌア様の事でずっと気を張り詰めていたからな… )
主人を心配するカブラは、ホッと胸を撫で下ろす思いだった。
「そうだウィル! 月華の泉で身体を癒してみたらどう? 少し暖かいから湯浴みしているみたいでとても気持ちいいのよ?」
「そうか… では、一緒に入るか?」
「んなっ、な、わ、私はさっき浴びたばっかだからっ、そのっ… 」
すると捨てられた子犬のように、寂しそうな表情をするウィル。
「あ、え、えと、じゃあ… 側にいようかしら?」
「ほんとかっ! カブラ、支度を!」
「御意」
(下は… 隠すわよね?)
そんなやり取りを見ていたアディは、少し複雑な思いでいた。
(カヌアは、この者に本当に愛されているんだな… それにしても会話の温度差がすごいな)
月華の泉で幸せなひと時を過ごすウィル達。
水浴びをしている間のウィルは、とてもキラキラと輝いていた。
(っかぁ! 直視できない!)
カヌアはその恥ずかしい気持ちを、必死に抑えていた。
しかし、全てはウィルに視えていた。
そんなカヌアの近づいて手を伸ばすウィル。
「カヌア、手を… 」
「え?」
カヌアの手に触れ、愛おしそうに頬に当てる。
「本当に会いたかった」
「… ふふ、うん、私もよ」
二人はお互いを指先で感じた。
それはそれはとても愛おしかった。
「ねぇ、ここに来てまだ会えてない人がいるんだけど… 」
「あぁ、月華蝶のロクサーヌ女王だろ? 俺も出来れば挨拶をしたいと思っているのだが… 」
「後でサリドナ殿にお目通し願おうと思っている」
「うん! 私も連れてってくれる?」
「あぁ、もちろんだ」
その目はとても真っ直ぐにカヌアを見つめていた。
濡れる髪が、キラキラと月に照らされてとても優美に見える。
「ウィル… 本当に無事で良かった」
「あぁ、カヌアも何事もな… 」
すると先に唇を閉じたのはカヌアだった。
「愛してる… ウィル」
再び二人の唇が重なる。
「俺もだカヌア」
そして、二人は久しぶりに夜を共にすることができた。
その温もりをどんなに欲したか。
横になると、すぐに瞼は重くなり、朝まで幸せな眠りについた。
そして、翌日二人は早速サリドナの元へと話をしに行った。
「すまぬが、私も長い間女王とは会話をしておぬ… 」
「え!? じゃあ誰も?」
頷くサリドナ。
「一体どうしたら… 」
するとサリドナは、思いもよらぬ提案をした。
「一つだけ方法がある… 息子である者なら会話できる… かもしれない。女王は会話ができない。その代わり、王家の血を受け継いだものだけが、言葉を介せずに会話をすることができる」
(テレパシーってことかしら?)
「息子? 王子様ってことですか?」
サリドナはゆっくりと頷くと、その口を開いた。
「ついに… 真実を伝える時が来た。全員を泉の前に… 」
そう言うと、近くにいたお付きのエルフが一礼し、どこかへと行ってしまった。
そして、その場にいる全員が泉へと集まって来た。
サリドナを筆頭に事情を知る一部のアンセクト族が、その横に並び集まって来た。
「おばあちゃん! 一体何事?」
孫のゾルが、不安そうな表情で話しかける。
「ライ… いやライ様。こちらへ」
(ライ様… ? えっ!? まさか… )
「女王には息子がいた。その名もライネル・デュ・フルール、あなた様でございます」
「僕… ? え? 何を言って… いるの?」
その場にいたエルフ達が真っ直ぐな瞳を向け、そしてひざまづいた。
それに倣い、他のアンセクト達もひざまづく。
「僕が… ロクサーヌ様の… 女王の息子… ?」
「ライ! 知らなかったの!?」
カヌアも驚きながら、ライへと問いかける。
「う、うん… 僕、何も… 昔から家族はいなかったし… それに、皆がいたから… 気にもしかった… んだけど… 」
「ライ様… 今申し上げた事は、全て誠の事でございます。今一度、女王様にご確認されてはいかがでしょうか?」
「えっ! ちょっ… や、やめてよ! 皆! そんな… 」
「そういうわけにはいきませぬ」
「で、でも… もし、本当にそうだったとしても… 急にそんなこと言われても、全然頭が追いつかないよ! それに何で今になって、そんな大事な事を言い出したの? 女王とは話したこともないんだよ?」
「それは… 女王の命令により… あなた様をお守りするためだったのです」
「僕を… ? 一体何から守るっていうの?」
「ある地への道を閉ざすためです。しかし、先日の矢の襲撃によって、そうはいかなくなりました」
「それってもしかして、女神達の楽園からって事ですか?」
カヌアが先日の事を思い出しながら発言した。
「そうじゃ。その場所に行く唯一の手段が、ロクサーヌ様なのだ」
「それと、ライの正体を隠してたのと何が繋がるんですか?」
「うむ、先程も言ったように、女王様の唯一の家族はライ様のみだ。その女神達からライ様をお守りするためだったんじゃ」
「ん? んん?」
カヌアは首を傾げた。
「カヌア… つまりだ。いつかはその役目を、息子である後継者のライが担うという事だ」
ウィルがいつものように助け舟を出してくれる。
「そうじゃ… 女王は何としても、その役目を自身までに留めたかった。この役目を受け継いでしまうと、周りとの会話もできなくなってしまう。その子孫のみしか… 」
「声と引き換えに役目を担うって事? じゃあ役目を担わなければいいんじゃ… 」
すると、事実を受け入れ始めたライが考えを述べた。
「カヌア… そういうわけには、いかないんじゃないかな… もし本当に僕が王族だった場合、その任務を負うのは僕しかいない。きっとそれには、何か大切な意味があるはずだから… とても大事な役目なんだよ」
「うーん… 女神達の楽園に行くための任務? そんな任務ある? 声を犠牲にしてまでも? 何のために、その場所へと行くっていうの? 他にも大事な役目があるんじゃないの? おかしい… 怪しい… 私が知っている王族達は、民達の道しるべになっていると思うのよね。道を示す… ? いや… もしかしたら実際は、違う理由があるんじゃ? 後付け? オプション? 他の道… 」
カヌアの独り言はだんだんと大きくなり、少し恐怖を覚えるアンセクト達。
それに慣れているウィルやその従者達は、その一語一句に何かヒントが隠れてるのではないかと、聞き漏らさずに聞いていた。
たまに聞き慣れない単語が登場するが、まぁ聞き流す術もある。
(違う道か… )
(他の理由が本当に存在するのであれば、それを探さないといけないですね… )
(カヌア様、いつも以上にダダ漏れですね)
「ねぇ、サリドナさん! どうしたら任務が受け継がれるんですか?」
急なその声量に、ビクッとするサリドナ。
「あ… あぁ… 王の交代というのは普通死去すると、次の候補に受け継がれる。しかし、この役目は、ある事をするとその者に受け継がれるのじゃ。役目のみがな。そして… 声を失う」
「世代交代せずに、役目のみを受け継ぐ? そのある事って一体… 」
「それは本人達のみぞ知る。しかし、それを行ったことによって、現王が死ぬ可能性がある」
「死ぬ… えっ!? 死んじゃうの!? そこまでして… ? 相当な覚悟が必要ね。その役目と、王族である事の使命は違うって事ですよね?」
「… そうじゃ」
「女神達の楽園に行くための、謎の任務を受け継がなかったらどうなるんですか?」
「それは… わからない。なんせ今までに、そのような例が無かったのでな」
(これは、一度その楽園に行ってみるしかないわね)
そう思いながら、カヌアは空を見上げた。
いや、睨みを利かせていた。
「カヌア、気持ちはわかる。楽園に行って直接聞くのも良いだろう」
(えっ!? あ… そうか、このカフのせいね… 慣れないな… )
カヌアは左耳を撫でながら、気まずい表情をした。
そう、ハルスのイヤーカフは効果を発していた。
それがなくとも、大体のことはお見通しであるが。
「しかし、今はまずこの世界の事を… 種族達の捜索が最優先ではないか?」
「そ、そうね。ウィルの言う通りだわ」
(さすがウィル様。猛獣を納得させる程の信頼と実績)
ワイムは横目に見ながら、絶対に口には出来ない事を思った。
しかしその瞬間、カヌアとバチリと目が合った。
(ワイム… フラフィーで視えてるんだからねぇ… そうだ、あの時の事… 何処で実行しようかしら?)
彼のフラフィーが小さく拍手をしていたのを目撃した後、すぐに恐怖の表情になったのを見逃さなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




