episode42〜愛しい人〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
それから二日程経ったある日。
遠くから騒めきが起こった。
カヌアはそれまで、いつウィルが来てもいいように、月華の泉にて身体を清めていた。
もちろん肌着は着ている。
この泉は温水であるため、とても心地が良く、身体中に染み渡るように膜を張っていく。
しかし、遠くからその愛おしい声が聞こえた瞬間、細胞中が騒めいた。
そして気が付いた時には、その胸に飛び込んでいたのだ。
「ウィルッ!」
「カヌア!」
「会いたかった」
「俺もだ! 怪我はないか?」
「うん! ウィルは?」
「俺も大丈… カ、カヌア、その格好っ… !」
ウィルは久しぶりのカヌアに加え肌着一枚の、しかも濡れた状態のその姿に、意識が飛びそうになった。
刺激が強すぎたのだ。
「ほ、他の者に見られたらどうするんだ!」
「え? 周りには女の子しか居な… 」
カヌアも同じく、久しぶりのウィルに赤面した。
「ごめん! 濡れちゃったね! す、すぐに着替えてくる!」
早々と着替えたカヌアは、ウィルがいるテントの元へと向かった。
テントに入ると、一段と輝きを放つ男性がいた。
「カヌア、こちらへ」
優しく微笑むウィルに誘われ、その横へとそっと座る。
(な、何だろう… すごく… 照れる)
カヌアは少し頬を染めながら、ウィルの方をチラリと見た。
彼はまだこちらを見て、微笑んでいた。
カヌアは思わず目を瞑り、俯いてしまった。
(ヤ、ヤバいぃ! カッコ良すぎやしやせんか!? こんなにだっけ!? キラキラがヤバいよ!?)
顔が真っ赤になるカヌア。
心臓の音が、地鳴りのように響いている。
「… ア様? カヌア様?」
「はっ! え? 居たの?」
「… はぁ… 先程からずっとおりましたが… 本当にウィル様しか見えてなかったのですね?」
そう言うのは、その周りに立つカブラやその従者達であった。
「… ご無事で何よりです、カヌア様」
カヌアはコクリと頷く事が精一杯で、何も言えずに顔が更に赤くなった。
隣にいたウィルが口を開く。
「カヌア、これまでに各自で起こった出来事を、簡単に擦り合わせていたんだ。その者、アディティアと言ったな? 始まりのユマンである、ドレ族だそうだな? 太陽の種族か… 」
少し離れた所に座り込んでいたアディに、そう話しかける。
(アディ… 居たのね、全然気が付かなかったわ)
「あぁ、その通りだ」
(こいつがウィル… ハルス様の… 確かに何か違う… 光の国の王族だったな… )
そう思いながら、アディは遜る事なく、ウィルと向き合った。
「そして、その弟君であるフレール。二人はルー族であるロキを探していた。ロキの両親に恩があったからと聞いた。しかし、その道中誤解があり、ヴァスカ ’を’ 襲撃したと… 」
深みのある言い方をするウィルの言葉に、続けて頷くアディ。
(ヴァスカを… ね… 深くは言わなかったのかしら?)
カヌアは眼球のみを動かした。
「更には狼の幽谷で、凶暴化したトゥバンからコクシネル達を守っていたと? ところでそのトゥバンは?」
その言葉にカヌアがすかさず反応した。
「えっと、お散歩に出掛けてるんじゃないかな? へへ、ほらこの山には入れないみたいだし、ね?」
「ん? 入れない? … それにしても、よくあのトゥバンを手懐けたな? カヌアがと聞いたが、それは誠か?」
「えっ!? あ、えと、そうだっ… たかな? うふふふ… そういえば、ウィルの方は上手く入江へと… ん? てか、あれ? ノゥリアは?」
(今頃気付いたのか… )
カブラは少し呆れたような眼差しを送った。
「あぁ、その事なんだが… 俺達はカヌア達と別れた後、ノゥリアのおかげもあって、順調にその人魚の入江へと無事辿り着いた。そこは洞窟になっていて、奥に入江へと繋がっていたんだ。そこは百年近く、閉ざされた入江となっていたようだ。そこで出会ったのが、ノゥリアを知る者達だった」
「シレーヌ族?」
「あぁ。他にも、たくさんの海の民達も居た。そしてノゥリアの兄であるオロンという者が居た。しかし、彼は何者かによって蒔かれた蔓薔薇に、身体中を磔にされていた。それを助けたのが、他でもないノゥリア自身だった。ノゥリアとの再会を果たした彼らに、これまでの生い立ちや、現在までのシレーヌ族の事を聞くことができたんだ」
「そう… 本当に良かった… 本当に… 家族が生きていたんだね… ノゥリア」
ウィルは優しく頷いた。
「ノゥリアは… シレーヌの王女だったんでしょ?」
「あぁ、しかし何故それを?」
「ここにも居るの、シレーヌ族が… 」
「何だと!? ここにか!?」
「えぇ、報告することが多過ぎて、まだ話が全て伝わりきれていないようね? でもこの事実は私達もつい最近知った事なの。彼女はおそらく何かの呪いによって、人形に変えられていたみたい… もしかしたら、先程のオロンさんという方が、蔓薔薇によって磔にされていた事と何か関係があるのかしら?」
「確かに気になるな… その者から後で詳しく話を聞きたい」
「えぇ。名前はピアン。ノゥリアの事は彼女から聞いたのよ。呪いを掛けたという者の心当たりもあるみたいだから、後で案内するわね」
「あぁ、よろしく頼んだ。ところでここまでにくる途中、ロキが狼になったと聞いた。満月の夜に… やはり、ロキは本当にルー族だったんだな?」
「そうなの、私も完全なその姿は見ていないんだけど、ワイムが一部始終を見ているわ」
「そうか… ん?」
「あと… 」
カヌアが言いにくそうに何かを言いかけた時、テントの中にゆっくりと入るその影が見えた。
「カヌア様、そこからは私が自分の口で説明します」
「ヴァスカッ! 戻ったんだね! 良かった!」
カヌアがそう言いながら立ち上がる。
「只今、戻りました」
「戻る? どういう事だ? ずっと一緒だったんじゃないのか?」
「ヴァスカは… 少し身を離していたから… 」
カヌアがそう言いながら、ヴァスカに視線を送ると、深く頷いた。
「ウィル様、道中ご無事で何よりでございました」
「あぁ、カヌアの事、世話になったな。それでヴァスカ、話があるのか?」
「はい。私の種族の事にでございます」
「… やはり、其方は自分の種族をわかっておったようだな?」
「黙っていて申し訳ございません」
「事情があったんだろう? その事に関しては咎めない。今なら… 話せるんだな?」
「はい… 私は、’ある時’ から古い城を拠点として暮らしておりました。それまでの記憶はうる覚えの事がほとんどでございます。しかし、それまでは家族が居たのも事実です」
「ある事… それは百年ほど前の事か?」
「… っ!? 左様でございます」
「そうか… 何故かどの種族も百年前のあの出来事に繋がる… ヴァスカ、詳しく聞かせて欲しい」
ヴァスカは深く頷いた。
それから自身がヴァンパイヤ族である事。
百年前、大きな地震によって、数日前から閉じ込められていた部屋から出た時には、何十万もの亡骸があった事。
それを全て弔った事などを洗いざらい話した。
「そうか… これで合点がいくな。大変な思いをして、ここまで生き抜いて来たんだな。其方の行動は全てが正しかった… とははっきりは断言できない」
「え?」
「その場に、誰も目撃者が居なかったのだからな」
「……… 」
「しかし、これだけは言える。俺はお前のその行動を称賛したい」
「え… ? しかし… 」
「俺はお前を信じる… その行動も、そう思おうとしたその心もだ。誇らしい事だ」
「ウィル様… ありがたきお言葉」
カヌアは嬉しくて、その笑みを抑えられずには居られなかった。
「ふふ、ほらね… 幼いながらにしてのあなたの行動は、本当に勇気あるものだったと思う」
それと共に、ウィルにも愛おしい目線を送った。
ウィルもそれに応えるように、ニコリと微笑む。
「それにしても、この月華山の仕組みには驚いたな。まさか、女王がこの山全体を覆っていたとは。この美しい情景には、息を飲まざるを得なかった。更には、アンセクト族の種類にもコクシネルとエルフの存在があったとは。両者とも無事に再開できて何よりだ」
ウィルのその横顔は、喜びに満ち溢れていた。
「世界はまだまだ俺の知らない事ばかりだ。もっと… 知りたい」
(ふふ、何だか嬉しそう)
「そうね… きっとこれからも、もっともっとたくさんの物を見たり、知ったりする事が出来るわね。それにしてもウィル、百年前に他の種族にも、何かが起きていたの? さっきそう言ってたから」
「あぁ、シレーヌ族にあった時にも耳にしたんだ。百年前のある時に、大きな地鳴りによって海が割れ、海水が一度全て空へと舞い上がったと… 」
「なっ!? 空に!? しかも全て!? 一体どういう事!? そんな事って本当に… 」
「俺も最初聞いた時は、とてもじゃないが信じられなかった… しかし、ノゥリアの兄、オロンがその目で確かめたと言っていた。出会って間もなかったが、俺は彼を信じる」
「そんな事が、現実にあるなんて… 」
「それがもし… 本当だとしたら、かなり厄介だな… 」
アディが神妙な面持ちで、そう口を開いた。
「アディティア? 何か知っているのか?」
「断言はできないが、今まであの女共がやった事だと思っていたことは、他の神も関わっている可能性が出てきた」
「他の神? 女共って、例の女神様の事でしょ?」
「女神?」
「えぇ、この月華山の上空にあると言われているキティール島。通称 ’女神の楽園’ 。そこに居るのが、その女神達よ」
「初めて聞いたな… 空に浮かぶ島か」
「そう… それで彼女達が最も狙う者達がいるの… それが私達よ、ウィル」
「何っ… !? 俺達を? ん? 俺達とは一体… 」
「ウィル… 話す前にこれを… 」
カヌアはそう言うと、ウィルの口元に月華糖を含ませた。
「美味だ… カヌア、これは?」
怪しい物をウィルに与えた時の、カブラの視線が多少気にはなったが、カヌアは見ないふりをして話を続けた。
「月華糖よ。この土地でのみ採れる木の実よ。これは一時的に、ある者達から身を隠せる効果があるの」
そして、カヌアはハルスとその派生者達の事を狙う女神達の事を話した。
無論、矢が降ってきた時の事を話すと、ウィルは顔を青ざめた。
カヌアには怪我がなかった事を確認すると、安堵した表情を浮かべた。
そして、ウィルは更にある事に気が付いていた。
「カヌア… その耳飾りはどうした? ヴァスカのと同じようにも見えるが?」
(そうだそうだ! ヴァスカにはウィルが来る前に、サリドナさんから譲ってもらった一つを渡してたんだった! ウィルにも… ん? なんか怒ってる?)
「えっと… これは… 」
カヌアがもう一つを渡そうとしたその瞬間、今度は美しい羽根を広げたサリドナが、その場へと現れた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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