episode41〜その呪い〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
そうして、テントまで移動したカヌア達。
先程、月華の泉にてカヌアの突飛な実験により、その姿を現したシレーヌ族のピアン。
ここまで連れて来たはいいが、カヌアはとても重要な事を忘れていたのだ。
「あ、待って… ! ピアンは尾鰭だから立てない!」
すると、事を察したエルフのサリドナが、カヌア達の元へとやってきた。
そして、例の如く彼女の懐から、キラキラと光るその粒を取り出した。
(気になる… あの下に何があるのか… そして… 他にどんな物が入っているのか… )
ワイムは、彼女の胸元が気になってしょうがなかった。
その視線に気が付いたサリドナ。
「ふ… 小僧… そう焦るな。其方にわしは持て余すことになるだろう… お前には扱えぬ… 」
「え? えぇと… 誤解… 」
ワイムは何とも言えぬ気持ちに襲われた。
そして、ここでカヌアの地獄耳が発動した。
「え? ワイム… そうだったの? 気が付けなくて… ごめん」
「その気遣い、史上最強にいりません」
ワイムはこれ以上にないほどの、眼瞼挙筋を使って目を見開いた。
しかしカヌアの誤解は、据え置きすることとなる。
ピアンはサリドナから受け取った、その月華糖を疑いもせずに口へと運んだ。
すると、すぐにその変化は現れた。
みるみるうちに、ピアンの尾鰭のあった部分からは鱗が消え、代わりに美しい脚が二本伸びていたのだ。
カヌアはすかさず、自身の服をピアンの下半身へと被せた。
(ふぅ… 危ねぇ… 一番出ちゃいけない場所でしょ… )
久しぶりの感触をゆっくりと確かめ始めるピアン。
「歩… ける!」
その感動は絶頂に達した。
嬉しさのあまり、サリドナへと抱きついたのだ。
(あわわわわ! 服が!)
カヌアは慌てて、黒子役へと徹した。
それと同時にサリドナの事も心配していた。
(ご老体が崩れないかしら… ?)
そうして、ピアンの姿をその場にいる者達全員が、視認する事となった。
これまでの事の詳細をワイム達にも話すカヌア。
呆れる者、ちょっぴりお叱りする者、あるいは両者。
カヌアとの関わりが少ない者は、その行動に称賛の意を向けていた。
驚く者が圧倒的に多かったが、それと同じくらい喜びを表していた。
そして今、自身の仲間であるウィル達が、シレーヌ族の入江にも向かっている事もピアンに話したカヌア。
彼女が何より驚いたのは、ノゥリアの事であった。
その時のピアンの顔は、大粒の涙で濡れていた。
ノゥリアは、本来の名である ’サーハ’ と呼ばれており、更には王族であるという事実を知って、カヌア側も非常に驚いた。
(ノゥリアが… 王女!? なんてこったい… 結構馴れ馴れしく話しちゃったけど… まぁ今更か! それにしても、ノゥリア達は仲間に無事会えたのかしら… ?)
「そうだわ! ねぇピアン、もうすぐ会えるわよ! ノゥリア達とはここ、月華の泉で落ち合う約束をしているの。おそらくうまくいけば明日… 満月の開かれる夜に、この山へと来るはずよ」
「サーハ様に… 会い… ったい! グスッ… 」
「えぇ、ノゥリアは、とても元気で素直で素敵な女性になってるのよ」
「ふふ、楽しみね」
「それで… とてつもなく言いにくいんだけど… 」
カヌアはある事を切り出そうとしていた。
「ん?」
「その耳飾り… とても大切なもので… えぇと、その… 」
「あ、そうよね! 今返し… っ!?」
そう言いながら、耳飾りを外そうとしたピアンの手を止めたカヌア。
「待って… 一応言っておくけど、これを外すことによって、あなたのその姿が、先程の姿に戻ってしまう可能性があるの… それでも… 」
「構わないわ。これを付けてなくとも、月が満ちるその時にだけ、戻れるの。この呪いは簡単には解けない… それは十分にわかっているわ。彼女達が私達に放ったこの呪い… それにあの人もまだ… 」
「その呪いを放った ’彼女達’ ってまさか… 」
「え… ? 知ってるの? 彼女達… それはそれはとても美しい姿をしていたわ。でも心は真っ黒な悪魔! 絶対に許さないっ!」
「おそらく… 女神達と言われている人達よね? この月華山の上空に浮かぶ楽園にいると言われている」
「そう… 意外と近くにいらしたのね… いつか絶対に… 」
(おっと… 目の色が変わったわね… 因縁の相手か… )
「ピアン? あの人って誰なの?」
「 あっ! 取り乱してごめんなさい! そう、私の大切な人よ」
「きゃっ! 想い人? 恋人? きゃー!」
女子のテンションは、こういった一言で一気に爆上がりする。
「ふふ、今度紹介するわね! とっても素敵な人だから! じゃあこれは返すわね」
そうして、耳飾りをゆっくりと外したピアン。
しかし、その姿はシレーヌ族そのものの形として、残っていたのだ。
更には、月華糖の効果も残ったままであった。
「あれ? え… ? 嘘… 戻らない?」
「ピアン! もしかしたら… 」
「「呪いが解けてる!!」」
二人は大いに喜び、抱き合った。
そんな二人の様子を見ていた周りの者達も、安堵するように胸を撫で下ろした。
アンセクト族が次々へと、話しかけにピアンの周りへと集まっていた。
彼女の持ち前の人当たりの良さに、すぐに会話に火がついていたようであった。
輪から離れたカヌアはワイムへと近づき、先程の会話を思い出し尋ねた。
「ワイム? さっき、破ったって言ってたわよね? 一体何のことだったの?」
「あ… いえ、勘違いでしたので大丈夫です」
ワイムは少しばつが悪そうに応えた。
「… ? そお? ならいいんだけど」
(危ない… もう少し信頼の心を保たなければ… 心を乱されてはならない… ならない)
ワイムは今一度、自分を見つめ直した。
そして、翌日。
ついに、月が満ちるその夜が来た。
カヌアの心臓は高鳴る。
数時間前には、ロキの首元をしっかりと確認し、そこに首飾りがあるのを確認した。
そして… カヌアは今、この時を思う。
(あぁ… ウィルと別れてからのこの約二か月… 本当に色んなことがあった。色んなことがありすぎて… うまく説明できるか心配… )
ウィルはおそらく、そんな事を思って欲しくはなかったと思う。
会いたかった、もしくはもう離れたくない、そう思って欲しかったに違いない。
しかし、カヌアはこれまでの出来事があまりに衝撃的過ぎた為、既に飽和状態であった。
「幽谷にコクシネル、ドレ族兄弟、でっかいトゥバン、狼ロキ、月華蝶の山、激かわエルフ、鉄の矢の雨、女神達の楽園、汚人形化したシレーヌ族、ヴァスカが… 満月が、満月による… 満月ならではの… ゔぅ… 」
「カヌア様? 大丈夫ですか?」
そう問いかけるのは、自分を見つめ直したばかりのワイムであった。
その身体を前後に揺らしながら、ぶつぶつと呟くその定まらない肩を支えながら言う。
(これから大事なところなのに、カヌア様は何故こういつも… いや駄目だ理解しよう… )
色んな意味で心底不安が込み上げてくる、見つめ直したばかりの従者。
そんなカヌアやワイムの気持ちを露知らずに、話しかけるアディ。
「そういえばお前、あの降る矢の攻撃を、一切受けてなかったな? まさか全てわかってて避けたとかないよな?」
「ん? あるわよ? 全て感じていたから」
(やはり… あの時に追われた時の脚力は、まぐれでは無かったのか… 普通のユマンの女性は、ここまでではないはず… )
それぞれの思いを抱えながらも、夜空は進んでいく。
その時が来たのだ。
月が見えた。
そして、ゆっくりと美しい小さな粒が、舞い降りてきた。
月華蝶が目覚めたのだ。
「あぁ… ほんと… 綺麗」
それを見上げながら、鱗粉を纏った月華蝶の大きな羽根が、ゆっくりと開くのを感じ始める。
鮮やかに色の変わる鱗粉が、例の如くその地に降り注ぐ。
コクシネル達は喜び、各々飛び回ったり、跳ねたりしている。
そしてエルフ達は鱗粉の加護を受けるかのように、ひざまつき、目を瞑った。
それと共に、満点の星空が鱗粉と重なるように、ゆっくりと現した。
「うんわぁ… めぇっちゃ綺麗! ね! ね!」
カヌアは両隣りにいた、アディとワイムに同意を求めるように彼らの腕を引っ張った。
「えぇ… 誠に素晴らしいです」
「あぁ… 美しい」
(ヴァスカ… 今頃… )
しかし、その感動の傍ら、カヌアの心配と寂しさは拭えなかった。
「ウィル達、入れたかな?」
「はい、きっと」
ワイムが微笑みながら応える。
「ふふ… そうだといいな」
それに対し、アディも尋ねる。
「… 待ち遠しいか?」
「もちろん!」
カヌアのその満面の笑みを見て、アディは少しだけ複雑な気持ちになった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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