episode40〜光の柱〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
カヌアはヴァスカの指示によって、ワイムに担ぎ上げ込まれていた。
そしてその場から、遠く離れた場所へと、強制的に移動させられた。
「ワイム! 離せっ!」
「全てはあなた様の為なんですよ? 拒否します」
(チッ、こうなったら… )
「痛っ! ちょっ… あなた本当にユマンの民ですか!?」
カヌアは、その脇腹にかぶりついた。
「何よ、この筋肉! 硬すぎて顎やられるわ!」
これが本当の ’歯が立たない’ である。
「何しても無駄ですよ? ふっ… 」
「…… 」
(あ… そうだ)
「… わかった… 二人が心配してくれてるのは… わかったから」
(ん? 急に大人しくなった?)
カヌアはその力を弱めて言った。
「ワイム… サリドナさんの所へ連れてってくれない?」
「かしこまりました」
そして、今度はカヌアの指示によって、アンセクト族が待つ場所まで戻った。
「ワイム… ありがとう。アディに、もう戻っていいって伝えてくれる?」
「はい… カヌア様決してここを… 」
「うん、大丈夫よ。ちゃんと言うこと聞くから」
(やけに素直だな… )
「では… アディティア殿を探して参ります」
そして、カヌアはある話をしに、ゾルの祖母にあたるサリドナの元へと近づいた。
「あの、サリドナさん、先程の続きなのですが… この耳飾り、あと二つあるんですよね?」
「あぁ、そうじゃ。全部で三つあるからの」
「とても大切な物だということは、重々承知なのですが… その二つの耳飾り、私に譲ってくれませんか? 一つはヴァスカに、もう一つは私の大切な人に。これから落ちう予定なんです」
「もちろんじゃ… 其方らがその三者である事は、聞いておるからの。それに持つべき持ち主に返す。それがこの任務を与えられた、私の役目だからな」
「任務?」
「あぁ、まぁ詳しい事は時が来れば、いずれわかる」
(何の時?)
そうしてカヌアは、その耳飾りを受け取ると、ある場所へと向かった。
辺りが暗くなり始める頃、ワイムがアディと共に戻って来た。
夕餉の支度をしているライに、カヌアの行方を尋ねたワイム。
「ライ、カヌア様はどこにおられる?」
「え? カヌア? サリドナさんと話した後は、姿を見てないけど… ゾルやロキ達の所かな?」
ワイムは少し表情が曇りかけた。
しかし、ゾルやロキもその後のカヌアの存在を、把握していなかった。
「さっき少し耳飾りの機能について聞いてきたけど、すぐにどこかへ行ったよ」
ワイムのその表情は、完全に曇った。
(くそ! やけに素直だと思ったら! 約束破ったな! ヴァスカさんの所か!!)
そうしてワイムのその目は、光を通り越して、光線を放っていた。
一方カヌアは、その水の音のする場所へと向かっていた。
そして、先程のサリドナと別れた後、ゾルの元へと行った際に聞いた耳飾りの機能。
その事をある人物に実行しようとした。
そう、その手に持つ黙ったままの ‘彼女’ に。
カヌアの手には、ある姿を模った薄汚れた人形があった。
’彼女である’ とカヌアは、それを自然と感じ取っていた。
しかし、普通に見るとそれが彼女だとは、到底思えない。
それには理由がある。
全体が藻や泥まみれになっていたからだ。
それは、狼の幽谷への入り口にあった滝の水場で、ヴァスカが水底から拾い上げたものだった。
これをこの月華の泉に着いた時に、預かっていたのだ。
(ヴァスカ… このお人形さんの事、何だか気に入ってるからなぁ… 意外と乙女?)
そう思いながら、泥だらけの人形を撫で微笑むカヌア。
(でも私も、何だかこの人形が気になるのよねぇ… ほとんど意味ないと思うけど… この機能、ちょっと使ってみたいし、試しにっと… すまぬな)
そう思いながら、カヌアは自身の左耳から飾りを外した。
カヌアは、先程ゾルから聞いた、全ての機能の発動方法を試したくて仕方なかったのだ。
そして、今、その彼女の目の前には、いたいけな人形がいた。
ここに、新たな犠牲者が増える事となる。
「さてと、怖くないよぉ… だいじょぉぶ大丈夫! 試しに良いかしら? 良いわよね? ふふっふ… 」
じりじりと近づきながら、怪しく指先を動かす。
この物語の女主人公は、あろうことか、従者の大切な預かり物を実験台に使おうとしているのだ。
更に深まる不気味な笑みは、その汚れた人形より不気味であった。
そこはかとなく、少し怯えているようにも見える。
「サリドナさんが言っていた機能は、 ’存在をわからなくすること’ よね。んで、ゾルが後からつけてくれた私の耳飾りには、 ’蓄光石’ 、’突風を起こす’ 。そして ’位置を示す’ … この位置を示すっていうのを発動する為には、蓄光石機能と突風機能を同時に使う事って言ってたのよね… それによって位置をわかるようにするってことなのよね、きっと」
そして、その耳飾りを人形の耳であろう部位につけた。
蓄光石と突風を起こす機能を同時に使う為、教えてもらった通りにある特定の手順を同時に行った。
その瞬間、カヌアの予想の遥か上の、更に上の出来事が起こる事となる。
徐々に光を蓄めたその耳飾りが、眩い光を放ち、そして人形の足元からも同時に風が起こった。
そしてそのまま、人形とその光を包むように、天空へと向かって、竜巻となり一直線に一気に伸びていった。
そう、それはまるで光の柱のように。
「え… 何… これ… き、聞いてないっ!! 聞いてないよー!」
カヌアは事の重大さに気が付き、両手でそのオーバーヒート状態の頭部を抱えて叫んだ。
「これっ、突風っていうより、竜巻じゃん! に、逃げ… なきゃ… 」
しかし、すぐに事は収まった。
カヌアは確かめるように、人形がいたであろうその場所を恐る恐る見た。
そして、更に衝撃の事実を知る事となる。
カヌアのその目の前には、それはそれは美しい女性が居たのだ。
その瞳はとても大きく、潤っていた。
そして、耳が少し大きく、それはヒレのようであった。
「え… 人… 魚? いや、シレーヌ族っ!」
「戻っ… た? キャーー! 戻りましたわっ! あなたが!? ありがとうございますぅ!」
陽気なシレーヌ族の娘は、目の前に居たカヌアへと盛大にお礼を放った。
「あ、そ、そうなん… です… 」
(実験してたとは言えない… )
カヌアは少し、ばつが悪そうに応えた。
「えぇと… 何で戻れたのかはわからないんだけど… 多分その耳飾りが… 」
そうそれは位置を示す機能… を通り越して、存在を示す機能であった。
その本来の姿形を現す、というものであった。
もちろんゾルが嘘をついていたわけでもない。
作り上げた本人ですら、想像以上の代物に仕上げてしまっていたのだ。
そして、ヴァスカが拾った人形。
それは何かの呪いで人形にされていた、シレーヌ族の女性であった。
(よく見ると、手足に水掻きみたいなのもある… )
尾鰭があるのか、月華の泉から出ることができないでいた。
そのシレーヌ族の女性は、警戒心を全く見せずに無邪気にカヌアに話しかける。
「あら? 綺麗な耳飾りね。ふふ」
「あ、えと、私はカヌア。怪しい者ではございません。あなたの名前は?」
「えー全然怪しくなんてないわよ? ふふ、可愛いお嬢さんっ! 私はピアン! カヌア? あなたは… 」
「私はユマン族。ピアンはシレーヌ族よね? 何故人形の姿に?」
「ユマン族!? どのユマン? ん? えっ!? 人形… そうっ! 私ずっと狭い所に居たの! しかも、すんごい深くて暗い場所に居たような気がするのよ!? 酷いと思わない!? 人形にさせられていたなんて! だからずっと身動きも取れなったのね! あぁ… それをあなたが助けてくれたのね! 本当にありがとう!」
「あ… え、えっと… そう… いうことかな?」
(偶然だけど… それにしてもよく喋るな… )
「わたくし、ある入江に居たのだけれど、そこで誰かに呪いをかけられてたのか、こんなことになっちゃって… あら大変っ! 早く帰ってあの人に会わなきゃっ!」
「ここは月華山よ。ピアンの居た入江って言うのは、おそらくここから南東にある、人魚の入江なんじゃない?」
「月華山!? ここが!? て事は… って、こ、と、はっ! 今わたくしが入っている、この心地良いこの場所は… まさか! 月華の泉!?」
(表情豊かだなぁ… ふふ、楽しい人ね)
「えぇ、そうよ。とても気持ちいいわよね?」
「きゃぁぁあ! ついに来た! 入れたっ! ん? カヌア、わたくし達の入江の事を知っているの?」
(感情が先に来るタイプだな)
似た者同士である。
「そうなの。あなたの仲間を探しに今、私の仲間が入江へと行っているの。と、とりあえず、その格好じゃ、不便だと思うから、ちょっと待ってて」
ピアンはありのままの姿になっていたため、カヌアは
荷物のある場所へと一旦戻った。
そして自分の服を適当に選び、戻ろうとしたその瞬間。
黒くて大きな影が、カヌアの背後を覆った。
そこには、鬼以上の形相をしたワイムが立っていた。
「カヌア様… 破りましたね… あれほど… 」
しかしカヌアはその気配に、臆する事なく返事をした。
「え!? 何を破ったの!? てかワイム! それより大変なの!! 来て!」
「な! ちょっと! 俺は怒っているのですよ!? 反省してるんですか!? と言いますか先程、とてつもなく大きな光の柱が… っまさか… カヌア様が? 違うと言って下さいっ! これ以上問題を起こさないで下さっ…」
「そうっ! いいから急いで! アディも!」
(そうって… 全く! 次から次へと!!)
(黒い青年… 大変だな… )
アディもそろそろわかってきた、この奇天烈ヒロイン… の周りの者の苦労を。
そう思いながらも、従順について行くワイムとアディ。
しかし、さすがの光の柱の存在感に、月華の泉には他の者達も集まって来ていたのだ。
「こ、この方は?」
驚いた表情のワイム。
それに応える前に、カヌアは急ぎ、ピアンの元に駆け寄った。
そして、肌があらわになったその身体に、自身の服を羽織ってあげた。
「シレーヌ族のピアンよ。ここじゃあれだから、とにかくテントの方へ… 」
(シレーヌ族だと!? 何故いきなりこの場所に現れた? どういう事だ?)
アディは驚きのあまり、声が出なかった。
「力が弱ってるようなの。抱っこしてあげて! あ、お姫様抱っこね」
嘘である。
むしろ今まで動けなかった分、超絶元気なシレーヌ族の娘が目の前に居た。
それはカヌアのただの趣味である。
美しい娘のお姫様抱っこが見たいだけである。
しかし、ワイムはその趣味嗜好中心の命令を、疑問に思いながらも実行しようとしていた。
「え?」
(何故?)
そうして、言われるがままワイムは軽々とピアンを抱き上げ、皆がいる場所へと連れていくこことなった。
(キャーー素敵!)
カヌアの心の声は、表情だけで手に取るようにわかる。
ある意味、 ’感情がわかる’ 令嬢物語りである。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




