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episode4〜兄達の教養〜

初連載の二部幕、開始しました!

お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。


初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。

一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。

毎日の更新を心掛けております。

そして翌日。

カヌアは悪夢にうなされていた。


「ゔーん… ゔぅ… ヴァ… スカ… 羽根の音が… うるさい… その脚の引っ掛かりも… やめ… て」


カヌアは最悪の気分で目覚めた。

汗の量が尋常じゃない。

心配そうに、隣で手を握るウィル。


「カヌア大丈夫か? まさか… 夢に?」


「ええ… 最悪な夢だったわ… うわっ! あっ! ビックリした!! なんだ! カーテンか!」


カヌアの髪には、風でなびいていたレースのカーテンが引っかかっていたのだ。


(昆虫の脚… )


更には、何だか外が騒がしかった。


「てかこの音… 」


カヌアが窓から外を見ると、庭を草飼りしている音も聞こえた。


(この音が、羽根の音を連想させてたのね… こんな朝から… ん?)


「ウィル! 今何時!?」


「あ、あぁもう昼前か… 」


(カヌアが自然に名前で呼んでくれた… 嬉しい)


「寝過ぎた… ごめん! 準備するね! そして、書庫室に行ってくる!」


「あ、カヌ… ア… 」


そこには、ウィルの行き場のない手だけが伸びていた。


カヌアは身支度を足早に終わらせると、宣言通り書庫室へと来ていた。


なぜなら、無知過ぎる自分が、恥ずかしくなったのだった。


(これから種族達を探しに行くとなると、最低限の知識は必要よね! まずはユマン族の事を頭に入れないと!)


カヌアはあの事件の時も、自身の無知さに肩を落としていた。

天体に関する知識を、クーロスが手配したという家庭教師によって、省かれていたからだ。


数ヶ月前、あの事件からすぐに、天文物理学を猛勉強した。


そしてカヌアにとっての、壮絶な戦いが始まったのだった。


そう、自宅屋敷と王宮での、飴と鞭の指導である。


屋敷では、その甘いマスクで、優しく教えてくれる次男のフーリ。

しかし時が変わると、鬼のような指導の三男レイルが登場する。


そして、王宮でも時間を設けてくれる彼らがいた。

カヌアを愛してやまない王子様だ。

甘やかすように教えるウィル、しかし王子ともなるとやはりお忙しい。

なのでほとんどが、従者であるカブラが教えたのだった。

これが何ともまぁ、教育には厳しいお方であった。


そんな飴と鞭の教育を受け、カヌアは何とか抜けのあった、天文物理学を習得することができた。


(天国付きとはいえ、もうあんな地獄多めの指導はされたくない… )


ということで、今回の種族の知識は、独学にしようと心に決めていた。


そのため今、彼女は王宮書庫室へと足を運んでいた。


(今回は範囲が狭いからな。文献からで十分でしょ)


その文献の数も少ないため、数時間程ですぐに読み終える事ができた。


(なるほど… 現代が一番、心が黒い時代… ってこと?うーん、とてもそんなふうには感じないけど… 欲まみれな時代なの? でも… )


すると、隣から慣れ親しんだ声が聞こえた。


「ん? カヌアか? 朝から何を調べているんだ?」


そう声をかけてきたのは、リヴール家の次男のフーリだ。

彼はここ、王宮書庫室の副責任者である。


(フーリお兄様!! 今日も素敵)


「おはようございます。お兄様。少し歴史的な事を学んでおります。あ… ただ、復習しているだけですので、言わなくて大丈夫ですからね?」


カヌアのその言葉に、疑問をかけたフーリ。


「言わなくて? 誰にだ?」


「ええと、それは… レイルお兄様とか?」


カヌアが気まずそうにそう言うと、フーリが更に気まずい顔をした。


「レイル? いや、レイルなら… 」


その時、隕石でも落ちたのかというくらいの重みが、カヌアの肩にのしかかった。


実際には、その大きな手が、軽く触れただけであったが、彼女には恐ろしく重かったのだ。

それが ‘圧‘ というものである。


カヌアは言葉が出なかった。

背筋も固まる。

振り向けない。

数秒前の自分に言ってやりたかった。


気をつけろ、と。


「俺が? 俺がどうしたって? ん?」


普段は笑わないレイルの顔の筋肉が、上昇している。


(悪魔降臨! 彼はきっと悪魔族の末裔だわ!)


勝手に新たな種族を創り始めたカヌア。

そうなると、自身も悪魔族だという事になるのは、わかっているのか。


「ぁゃゃゃゃやっ! レイルお兄様! ご機嫌よう? 朝からお仕事でごさいますか? お疲れ様でしっ。本日はこの書庫室でやんすか? 私は… 」


(言葉がおかしい)


するとその顔は、いつもの無の表情に戻った。

レイルは、カヌアが見ていた種族関連のその本を持ち上げて見た。


「何を調べている?」


「し、調べ? いえ! 少ぉし眺めていただけですよ? えへへ」


「朝から? お前が? 書庫室へと? 来るなんて相当珍しいな? 相当な。まぁいい。それで?」


「……… 少し、私達人間の、種族の事を調べておりました」


カヌアがもごもごしながら、そう言うとフーリが反応した。


「種族? 珍しいな。そんな事調べるなんて。幼少期時代に少し習うが、俺達以外の種族は絶滅しているから、サラッとしか記憶がないな」


昨日の今日であるので、まだ王宮の一部の者にしか、種族の件に関して知らされていなかった。


(幼少期に習うんか… 習ったっけ?)


「お兄様達、何か知ってますか? その、私達以外のユマン族に関して」


すると、フーリが応える。


「まぁ文献に書いてあるような、基本的なことしか知らないが… 復習がてらな? 

 俺達ユマン族はドレの時代から始まって、アルジャン、ブロン、デュー、そして俺達のフェールの時代になるんだよな? 

 そのはじまりのドレの時代では、皆が幸せに何不自由なく暮らしていたという。彼らは ’太陽の種族’ と言われていた。

 次にアルジャンの時代では、四つの季節に分かれた。そのために、家を造ったり、自給自足をし始めたりした。ここまでは良かった。

 この次のブロンの時代から、人々の心が荒れ始めたという。海へ出たり、金属を求めたり…欲求という欲求が人々の心を争いへと導いた。そして国という概念ができ、境界が生まれた。そして、神は人々に怒り、滅ぼすことに決めた。しかし、滅んだと思われてた人類だが、ある山に二人の人間が生き残っていたんだ。それが ’風雲児デュー‘ の時代の始まり。

 そしてその時代が終わり、今がフェールの時代だ」


(これが… お兄様の言う、サラッとした記憶? 恐るべし)


「今の人類は悪に染まって、昼も夜も辛苦と悲哀で、心休まる時がないと言われている。正義は腕力の中にあり、恥の心は失われてしまった…それが現代」


フーリの説明が終わると、レイルが口を開いた。


「まぁこのくらいは、当たり前の、事だとは思うがな?」


(さすが… 素敵フーリお兄様! それに比べて…鬼…悪魔…)


カヌアは細めた目を、元に戻しながら言った。


「先程から思っていたのですが、現代の私達フェール族は、そんなに悪に染まっているんですかね? 心が暗いとか、荒んでるとか思ったことがないのですが… ?」


「そうだな… それは慣れだな。今、この時にしか生きてない者達の慣れだ。他を知らないからこその。そして、目の前の事しか見えていないからかもしれない。他の国や見えない所では、想像以上の苦痛を抱えている生き物がいるんじゃないか? そして、それまでの時代は、今以上に色んなものが豊かだったのだろう」


フーリがそう言うと、カヌアは少し悲しげな顔をして言った。


「慣れ… ですか… あの、そのブロン族を滅ぼしたと言われる神… というのは、今もこの世界のどこかに存在するのでしょうか?」


「あぁ… 本当に実在したのか、どのような姿をしているのかは、未だ不明だ。もしかしたらその辺にいるのかもな?」


カヌアはそのフーリの言葉に、少しキョロキョロと辺りを見回した。


「んで、またウィル様絡みか? あまり心配させんなよ?」


レイルはもっと何か言いたげそうだったが、そうひと言に収めると、あまり詮索せずに大きなその手をカヌアの頭に乗せ、優しく包んだ。


(もう… 子供じゃないのに… )


と思いながらも、兄の優しい手がとても嬉しかった。


そしてカヌアの腹の虫は、起床してから何も食べていないことを思い出したのだった。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。


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