episode38〜喜びの島〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
「カヌアッ! こっちだ!」
その声に引っ張られるように、カヌアは足を走らせた。
アディに腕を引かれ、岩場らしき下へと身を隠した。
カヌアは、アディから伸びる長い矢が目に入った。
その肩からは、血が滴っているのがわかる。
「アディッ! 矢がっ… 」
「あぁ、このくらい大した事ない… それより… 」
そう言いながらその矢を一気に抜くと、傷口を抑えた。
「ダメだよ! ちゃんと止血しないとっ」
そう言いながら、カヌアは持ち歩いていた布で肩の傷を抑え始めた。
「… っく… まさか、お前がハルス様の派生者だったとは… どっちだ?」
「え? えと、ラジェット… 」
「ラジェットか… てことはヴァスカがスラーか? 意外だな… いや、そうでもないか」
「え? 私もまだ知って間もないの… 実感もないし… それより、さっきのは一体何!? 何でヴァスカがスラーってわかるの? あの場所で名乗ったのが、まずかったの? 矢はどこから降ってきたの!? 何故突然… っ」
「落ち着け… あれは… お前達二人を狙ったものだ。カヌアとヴァスカをな… 」
「あの場所にいた誰か? いや、私達の他に誰かいた?」
「あの場所には居ない。居るのはその遥か上にある場所にいる者だ。そして奴らはハルスを狙っている」
「上!?」
「あぁ」
「それって… 空?」
頷くアディ。
「マジかっ! こっから聞こえたの!? 耳良すぎじゃね!? てか、何故私達を… ん? 私達だけを?」
「あぁ、お前達がハルス様の派生だとわかったからな」
「てことは、私とヴァスカだけ離れれば、皆には降り注いで来ないって事?」
「え? あぁ、そう… なるな… ん? お前、変な事考えてないよな?」
「じゃあ、それを教えてあげればっ!」
「待てっ! っつ… 」
「大丈夫!? 痛む!?」
「ヴァスカが… 一人だけ離れて行くのを見た。おそらく他の者達は近くにあった洞窟に居るはずだ」
「本当っ!? そっか… なら良かった… でも、他の皆を巻き込んじゃった… 」
「いや… 知らなかったのだから仕方あるまい。この事を他に知る者は? … と言っても先程で、大勢の者が知ったからな。それを聞いたところで意味がないか。あとはハルス様であるウィルという者が、無事にここへ辿り着けるかどうかなんだが… 」
カヌアは少し思案顔で、遠くを見つめた。
(ウィル… 早く会いたい… どうか無事でいて)
「でもアディ… 私、他の場所でもその話した事があるけど、その時は何にも起こらなかったわよ?」
「それは、この場所にある。月華山でなければ特に問題はなかった。しかし、彼女達のいるその場所は、空の上に浮いている。このちょうど真上にな… 」
そう言いながら、アディは人差し指を上に示した。
「彼女… 達?」
「あぁ、キティールという島だ。その名も女神達の楽園… ’喜びの島‘ 」
「女神たちの… 楽園! なんじゃそりゃ!! しかも喜びのって! そんな楽園あるんなら… 是非行ってみたいっ!」
「おい… なんかまた変な妄想こいて、勘違いしてないか?」
「エ? ナニガ?」
(やっぱりな… )
「楽園や喜びといった名ばかりは良いが、実際は魔女の島だぞ? それは、この世で最も残酷な場所だと言われている」
「言われている? 残酷なのに楽園? しかも喜んでるの? はて?」
「あぁ、彼女らにとっては、楽園だからな」
「そんな話も、存在も聞いた事ないけど? それどこ情報よ?」
(まずい… これ以上は… )
「んてか! 誰によ! 誰から聞いたん!? 残酷な場所って! 誰か実際に見たの!?」
「いやいやいや! お前! さっきの見ただろ! いや、実際に狙われたじゃねーか! これ見ろ! この傷!」
「あ、傷大丈夫? 結構痛む?」
「痛いわっ!」
(何なんだこいつ… 調子が狂う… 何でこんなに腹立たしいんだ)
「でも待って… その場所ってどうやったら行けるの?」
「は? それは月…… お前、まさか」
「ふふん、そのまさかよ! 今からその場所へ行って、この馬鹿げた行為をやめさせる! ついでにその楽園という場所を見… 」
「本物の馬鹿か! お前! 死ぬ気か! あんな場所へ行ったら、一発で命を落とすぞ!?」
「あんな場所? アディ? 知ってるのね? 行き方を… てかまさか行ったことあるとか?」
「… シ、シラナイ」
「嘘! 知ってるでしょ! ほらっ吐きなさいよ!」
そう言いながら、カヌアはアディの頬をつねる。
「いばばいっ… 」
(その前に喋れない)
「あら? じゃあ、そうね… この傷口にさっきの矢を戻してもいいのよ? ふふん」
「お、おばっ、やべぼっ」
(悪魔かこいつ!! 正気じゃねぇ! 楽園に行く前にここで殺される!)
「… っだぁあ! やめろ!」
カヌアを引き離し、そのまま覆い被さるように地面へと押しつけた。
「キャッ! エッチ!」
「腹立つな… 何語だそれ! … まぁ、行き方はわからなくもない」
「やっぱりぃー! じゃあっ… 」
「だが、すぐには行けないぞ?」
「え? 何でよ?」
「その楽園に行くには、月華蝶の力が必要だからだ」
「月華蝶様の?」
「そうだ。今は月華蝶のみが、その場所に行ける」
「て事は… あと数日後?」
「そうだ」
「うーん、じゃあどうすればこの矢は止まる?」
「知らん」
アディはその顔を、ぷいっと横に向けながら言った。
「し、知らんってそんな無責任… ん? あれ? なんか苛立ってます?どして?」
(こいつ… )
「チッ」
「うっわぁ… 今、舌打ちしたっしょ? 女の子に舌打ちする男はモテないぞー」
「お前なぁ… あ、そういえば、これ落としてたぞ?」
「あらやだ! 気が付かなかった! ありがとう!」
「おい、これ… 」
「これ? ふふふ、貢物って言ったらいいのかしら? 私にくれた素敵な子が… えっ! ちょっ何するのよ!」
カヌアの左耳の飾りを奪うともう一度手に取り、アディは観察するようにまじまじと見た。
「大切な物なんだから返してよ!」
奪い返すカヌア。
「ウィルと言うやつから貰ったものか? 婚約者だったな? 貢がれてるのか?」
「違うわよ! これはゾルからもらったの!」
(あいつ… 貢がされていたのか… いや、買収か? この女ならあり得る)
「コクシネルのあいつか… これは、使えるかもな… 」
「え? どういう事?」
「その貢がされていたゾルは、これについて何か言ってなかったか?」
「何だか鼻につく言い方ね… まぁいいわ、ええと、確か、蓄光石で出来ているって。それと、この先端を押すと、突風が起こるとも言ってたわね」
「光る石に風か… 他には?」
「他にはえぇと、うーん、確か位置がわかるとも。でもやり方はわからないなぁ」
「位置がわかる? どうやってその場所を知らせるんだ?」
「さぁ… うーむ…… あっ! あと、もう一つ何かあるって言ってたな。でも、それは秘密って言われちゃったのよねぇ」
「そのもう一つが知りたいな。よし、一つずつ試すか! それをもっかい貸せっ… 」
「ちょっ! 待って! 嫌よ! 本人に聞いた方が早いでしょ! もし危険な事だったり、一度ぽっきりしか使えない機能だったらどーするのよ!」
「俺の勘が当たってれば、もう一つはおそらく… 」
二人が奪い合いをしている最中、突然少し大きな影が二人を覆い被さった。
「カヌア!? ここにいた! 大丈夫だった?」
そこには矢の襲撃が収まったのを確認してから、カヌア達を探しに来ていたゾル達がいた。
「ゾル! それにワイムも! 皆無事!?」
「はい。カヌア様もご無事で何よりです。矢の出所はわかりませんが、あの後は一本も降っては来ませんでした。と言いますか、その矢はカヌア様とヴァスカさんを追うように放たれたと、そう感じました」
「そう… 良かった。あ! それよりゾル! 良いところに! この耳飾りの効果をもう一度ちゃんと聞きたいんだけど教えてくれない?」
「耳飾りですか?」
「うん! この耳飾り、蓄光石でできていて、突風を起こしたり居場所がわかったりするって言ってたじゃない? あとの一つは何?」
「もう一つの機能? えっと… それは、居場所がわからなくするんだ」
「え? わからなくする? どうやって?」
「それを耳にするだけで、その者の居場所をわからなくするんだ」
「透明になる… とかって事? でも私… 」
「あ、いや、姿形は変わらないんだけど… 特定の者から、居場所をわからなくする事ができるってばあちゃんが… 」
「特定の者? おばあちゃんが? あれ? これはゾルが作ったものなんじゃ… 」
「えぇと、実はばあちゃんから貰ったものを、僕が改良して付け足したんだ。他にも同じのが二つあるんだけど… どうやって、位置をわからなくするのかはわからないん… ん? カヌア?」
「あと二つ… 全部で三つ… 誰から身を隠すっていうの… ? 女神達から… ? 居場所わからなくするための? そういう事… そっか! だから、さっき耳から外れて、彼女達に私の場所が… なるほどね! ふんふん」
例の如く、ぶつぶつと考え始めるカヌア。
「ゾル! お願い! あとの二つ! 私に譲ってくれない!? おばあちゃんの大切な遺品って事は重々承知! でも! 必要なの! お願い! お願い!」
「えっ? え? あ、でも他の二つは、全然手をつけてなくて、他の機能が付いてな… 」
「いいの! いいの! その亡きおばあちゃんの機能がとんでもなく必要なの!」
「え? あ、う、うん、それはもちろん良いと思うんだけど… でもカヌア、俺やり方がわからないから直… 」
「ほんとう!? ありがとう!! 今度おばあちゃんのお墓に… ん? やり方がわからないっ!? ぎゃーどうしよう!! 今すぐ必要なのにぃーー!」
(全く… 勘違いしたまま突っ走る癖… )
ワイムは様子を見る事にした。
「えと、直接聞いてみたら?」
「え… ? 直… 接?」
「カヌア… そのばあさん、勝手に殺すのやめろよ。多分生きてるぞ?」
アディが思わず突っ込む。
「え? そうなの?」
コクンと頷くゾル。
「あへ… えへへへへ… じゃあご挨拶しないと! んね!」
そう言いながら、慣れないウィンクをバチッと放つ。
(早とちりが多いなほんと)
ワイムは表情を変えずにその姿を横目で見ていた。
「ワイム、その矢は私とヴァスカを狙ってる者らしいの。だから、そのゾルのおばあちゃんを、ここに連れて来てくれない? 私達が外に出ない限りは安全だから」
「かしこまりました」
ワイムは思うことは多々あれど、従者としての任務を全うした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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