episode37〜天からの襲撃〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
そして、月華の泉へと到着してから数日後。
その夜、見張り番をしていたヴァスカの元へと近寄るカヌアの姿があった。
「ねぇヴァスカ、私少し思ったことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「もしかして、あの文献に書いてあった空を飛ぶモノって… ライの事なんじゃ… えぇと何だっけ? 何て書いてあったっけか?」
(むむむ、思い出せぬ)
「空を飛ぶモノ、精神、心、魂か… 」
「おゎ! 凄い! 覚えてた!? それそれ! その精神と心と魂… あれ? でも予言とか未来予知とかじゃないね? じゃあ違うのか… 」
「いえ… そうとも限りませんよ?」
「え? どういう意味?」
「精神と心は繋がっております。しかし、それを切り離し、魂だけを飛ばす。魂に刻まれた記憶。それが何かを示したのでは? もしくは ’視た’ か」
「うーむ、そうなの? よくわからないけど、じゃあライがハルスの件を知っていたのも、その魂の記憶ってやつ?」
「定かではないですが… その可能性はありますね」
「それにその竜が、本当にトゥバンなのかもわからなくない?」
「… っ!? 確かに… トゥバンの他にも竜が? 考えたこともなかった。ですが、そうだとしても… どっちにしろ、拳一つで制圧するって事ですよね?」
「ん? 誰が?」
「…… さぁ」
そして、翌日。
遠くの方に、ある二つの姿が見えた。
「… ヌア様っ! カヌア様ぁ!!」
そう言いながら、こちらへと走ってくる影。
そんな彼を力強く抱きしめるカヌアの手は、加減を知らなかった。
「へへ、苦しいです」
「ロキッ! ロキッ! 無事で良かった! 怪我はない!?」
「はい… あの、でも… 僕のせいでワイムさんが怪我を… 」
その罪悪感の溢れる顔の下には、きらりと光る黄色い鉱石のついた首飾りがあった。
次にカヌアはロキと同じように、ワイムを力強く抱きしめた。
その腕には、ロキの変異によって傷つけられた跡があった。
「ワイムッ! ロキをありがとう! 二人とも無事で良かった! 腕の傷、大丈夫?」
ワイムの顔は赤くなりながらも、何かを堪えるように拳を握っていた。
「あ、はい… カヌア様もご無事で何よりです」
(若干… 慣れて来たぞ… 若干な)
「後でちゃんと見せてね!」
「かしこまりました」
すると、コクシネル達が一斉にロキ達の元へと集まって来た。
「どっち? どっちがルー族の子?」
「こっちの子かな?」
「目つきがルーだもんね!」
「色も黒いし、それに… 」
「匂いも何だか… 」
(色… 臭い…ブフッ… )
カヌアの笑いが込み上げてきた。
喜びで騒ぎ立てるコクシネル達が、ワイムへと群がっていた。
(匂い… 獣臭いってことか… ?)
ワイムが少し困ったようにしていた。
しかし、そんな中ライが一言放つ。
「違うよ、皆! こっちの子だ! ちゃんと見て。この瞳の色… まさに… 」
「「「ルー族だぁ!! わぁ!」」」
間違いに気が付いたコクシネル達は、一斉にロキのをへと囲んだ。
「え? 何? てんとう虫さん? 何で僕のこと… ふふ、くすぐったいよ、ふふふ」
そんなロキ達を見ていたカヌアは、良からぬ考えが浮かんでいた。
(え? え? 何!? あの可愛い現象は! 私も飛び込みたい! 一緒にスリスリし… )
その危なく伸びる脚を止めたのは、言わずもがなワイムであった。
行かせまいと、首根っこを掴まれている。
「あ、失礼」
そう言いながらも、本人は一ミリもそう思ってなどいない。
(くそ、ワイムめ… )
飄々としたそのフラフィーを視てカヌアは確信していた。
そして、彼らの様子がある程度落ち着いたのを見計らって、カヌアがアンセクト達の事を紹介した。
「それで、カヌア様、ウィル様達はまだこの山へと、入山してなさそうですね? もし入れていなかったとしたら、次のタイミングまではあと半月以上はあります。それまで如何致しますか? まぁ、ここに留まる他無いと思いますが… 」
「そうね、彼らと歴史の照らし合わせをするわ… そして… 愛でる!」
(… 愛でる… )
ワイムは少し気の毒な表情をしながら、アンセクト達を見た。
「それにしてもよく間に合ったわね。あの後の… 逸れた後の話を聞かせてちょうだい」
「はい。あの後、俺は暴走したロキを追いかけました。近くに落ちていたロキの首飾りを拾い上げ、山の中へと。ロキが途切れ途切れに言っていた言葉で、それをつければ、その変化が収まると思ったので」
「ロキが言ってたあの言葉… 首飾りをつけてって… やっぱり、あの首飾りはロキの変化を止めてたのね。それで?」
「それで、何とか追いついた時には… 既に狼の姿になっておりました」
「狼… ロキは、本物のルー族だったのね。て事は満月だったあの夜が鍵って事?」
「えぇ、おそらく。そして、その首飾りを何とかロキの首にかけ、事を収めました」
「それで… こんなに傷だらけに… ありがとね。ワイムでなければ難しかったと思うわ。あなたがいてくれて本当に良かった」
(この人は… 本当に率直過ぎて… いつも真っ直ぐだからこそ… その言葉が… 嬉し… )
ワイムは一瞬、何か温かいモノが込み上がるのを感じた。
「… いえ。それほどの事は… それで、急いで戻ろうとした時、雪のようなものが空から降って来たので、上を見上げました。目の前には山ほどの大きさをした、蝶らしきモノが飛び立とうとしておりました。それを見た瞬間、悟りました。もしかして、月華山が開かれるんでは無いかと。相当遠くまで来てしまったと感じていたので、この機会を逃すと遅れてしまうのではないかと思い、それでそのままこの山へと向かう決意をしました」
「そうだったのね。ナイス判断っ! 本当に間に合って良かった」
「ワイム… その… 」
ヴァスカが何かを言おうとした瞬間、カヌアはヴァスカの手首を握り何かを制するように首を振った。
(ヴァスカ… まだ焦る必要はないわ… ウィルが来てからでも)
そのカヌアの意図を汲み取ったのか、ヴァスカはその言葉を止めた。
「… ? ヴァスカさん? どうしました?」
「あ、いや… 今後、月が満ちる時は… その… よろしく頼んだ」
「はい… かしこまりました」
(絶対、今何か言おうとしたよな?)
そうしてウィル達が入山できる次の満月まで、あと三週間ほど。
その間、カヌア達はこの月華山で過ごすこととなった。
その中で、アンセクト族がバラバラになったこの現在までの、エルフ達がどう過ごしていたのかを聞いた。
約百年程前、大地震による地割れにより、ルー族と悲しい別れをした後の事である。
ライが言っていたように、定期的に女王ロクサーヌが放つ鱗粉の加護がなければ、エルフ達は飛べなくなってしまうのである。
呼び寄せられたエルフ達は、そのまま月華山に留まることとなったという。
その理由は、女王ロクサーヌの命令からであった。
『待ちなさい。あなた達はここで待つの。必ず来るから… ハルス様が導いてくれる』
そう言ったそうだ。
彼らには、狐に摘まれたような思いであっただろう。
しかしハルス様という聞いたこともない名が出てきてはいたが、その場にいた誰一人として、その言葉に対し問いかけることができなかったのだ。
仲間を見捨てるはずない。
女王のその言葉には必ず何か意味がある。
女王ロクサーヌの命令とあらば、それを信じ、グッと堪えて従うしかない。
(あれ? 空を飛ぶモノ… ん? ライじゃなく月華蝶様の事だったのか?)
しかし、その言葉にカヌアは、以前にも同じ様な言葉を聞いたのを思い出した。
「その… 言葉ってもしかして… ライが言ってたものとは少し違うけど… 同じ様な光景を見たのかしら… ?」
「それはわからない… 誰も何も聞けなかったから… 」
そう言うのは、ゾルの妹リルであった。
「でも私達がわかるのは、それがこの百年後の今、現実になっているということだけです」
「今が… その現実になっているの?」
「確かなことはわからないけど、私にはそう思うの。現にこうやって、仲間達と再会できたから」
リルはコクリと頷き言った。
同じように、その周りにいるエルフ達も頷いている。
(確かに… ウィルが生まれる前はどうだったのかはわからないけど、ハルスであるウィルがここへと向かっているのは確か… そして、派生者の私とヴァスカがここにいるのも… 現実に)
「ライから聞いたわ。そのハルス様というお方はここにはいないけど、その仲間であるラジェットとスラーって… あなた達の事なんでしょ?」
その言葉に一番に反応したのは、他でも無い、彼らをずっと探していたアディティアであった。
「何っ!? 本当なのか!? お前達が… ラジェッ… 」
(あれ? ちょっと待てよ… )
「え? あ、うん… そのうち話そうと思ってて… 黙ってるつもりはなかったんだけど、ウィルがまだ来てなかったから」
「まさか、そのアルデリアの殿下が?」
ライが聞き返す。
(ここって… )
アディがその会話を聞きながら、その胸騒ぎが一気に跳ね上がるのを感じた。
「っ待て… 」
しかし、カヌアはアディのその言葉の意図が分からず、その問いに応えた。
(あぁ… ほんと言っちゃって大丈夫だったかな? まぁもうここまで知られてるし、時間の問題よね!)
「てへ! そうだよぉぉ、お… ?」
一瞬にして、アディの手がカヌアの肩へと力強く伸びた。
カヌアはここで、やっとアディのその形相に気が付いた。
「何故っ! そんな大事な事をここで言うんだ!!」
「へ? ここで? いや、だって… ずっと探してたって… 」
「まずいっ!! 走れっ!!」
シュンシュンッ!
ザクッシュンシュンッ!
その瞬間、空から大量の矢が降って来た。
それと共に、何かキラリと光る物が宙を飛ぶ。
(なっ! 何っ!? 鉄の矢!?)
カヌア達はその声に、一斉に散らばった。
アンセクト達とロキ、ワイム、フレールは近くの洞窟の中へと。
カヌアはアディと。
そして、ヴァスカは一人、それぞれが違う場所へと散らばった。
そしてその矢は、何故かヴァスカとカヌアがいる方へばかり落ちて来た。
まるでその二人を狙うかのように。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




