episode36〜予知夢〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
月華山に到着し、数日ほど歩くと、ある音に気が付いたカヌア達。
探し求めていたその音は、どんな疲れをも散らせてくれた。
野性の勘なのか、仲間の匂いを嗅ぎつけたのか。
ライやゾル達のスムーズな案内により、その場所に辿り着いたのだ。
それはそれは美しい風景であった。
水面に映る陽がとても眩しく光を放つ。
ここには他の場所とは違い、少しばかり緑が多かった。
蔓のような草花に、水面に浮かぶ色とりどりの花の蕾。
「これは… 極楽浄土かしら?」
「え? ごくら… ? じょう?」
(カヌア様、またおかしなこと言ってるな)
「でもここの花は蕾なのね?」
「ん? カヌア様、お気付きではございませんでしたか?」
「何が?」
「昼間はここだけではなく、山の中全ての花は閉じています」
「… 確… かに」
(この反応は、絶対に気が付いてなかったな… )
「そして夜になり、月の光が舞い込むと、それを浴びた花々は咲き誇るのです。それが月華山なる由縁なのですよ」
(さすが、長年生きているだけのことはあるわね)
「物知り爺さん… 」
「ん? 何か仰いましたか?」
「ううん! 素敵ね! えへへへへへ」
すると、遠くの方からそれはそれは可愛らしい声が一つ、二つと聞こえてきた。
「その通り! ふふ、素敵でしょ!?」
「この月華の泉は、夜になると更に美しいんだ」
その声のする方へと、カヌアは目を凝らした。
そこには透き通るような美しい四本の羽根を、ひらひらと羽ばたかせながら飛んでいる、小さな男の子達がいた。
(か… かわわっ! あれ? この子達、もしかして… )
「エルフだ! ライ! ゾル! ここに… っ」
カヌアの声に驚いたコクシネル達が、一斉にその場に飛んできた。
「みんなぁっ!! 会いたかった! 会いたかったよ! うわぁぁあんっ!」
アンセクト族は互いの存在を確かめ合うように再開の涙と喜びを解放した。
そこに遅れて走る一人のコクシネル。
ゾルだ。
彼は生まれつき、自身の羽根では飛べないので皆の元まで、その足で走ってきたのだ。
それをいち早く飛びゆく二つの影があった。
「お兄ちゃんっ!」
「会いたかった… うえぇんっ… ひっく… 会いたかったよぉ」
二人のエルフは、ゾルに抱きつき泣き叫ぶ。
他のコクシネルよりも大きなその身体で、二つの愛情をいっぺんに抱きしめるゾル。
その再開を見ていた三人の男。
微笑むように、安堵した顔をしていた。
しかし、ここに微笑んでいるとは到底言えない、ニタつき顔をしている一人の女がいた。
「ギャーーー! 可愛い!!」
それを横目に見るヴァスカ。
「カヌア様、心の声が… あ、失礼、漏れしているのでしたね」
「そうよ! こんな美しくて、可愛くて、感動的で、超絶可愛い種族、他にいないわ!」
(可愛いが重複している)
「え? じゃあロキは?」
「ロキは全く別の、もふもふ可愛いキュンな種族じゃない!」
「……… 」
(全く理解できん)
カヌアは隠しきれていないそのニタリ顔を隠しながら、ゾル達へと近づいた。
「ねぇ、ちょっとこの子達紹介してくれない?」
カヌアは親指を立てながらそう言う。
これこそ歪んだ欲望だ。
「あ、うんっ! リルとメル、俺の妹達だ。リル、メル! この人は、ユマン族のカヌアとヴァスカだよ。そしてあっちに見えるのが、アディとフレール」
すると、その聞こえるはずもない足音がカヌアには聞こえた。
トトトトテト…
「初めましてカヌア! 兄を… 仲間達をここまで連れてきてくれてありがとう! また再開させてくれてありがとう」
そう言うと、二人のエルフはくるりとその身を一回転して舞い、華麗な一礼を魅せた。
それを見たカヌアは思考が止まった。
そう… 止まったのだ。
「… カヌア様? ヨダレを召してますよ?」
「あぁ君達… 可愛いね」
(ダメだこりゃ… )
「ゾル… 本当に良かったね!」
「あぁ… そうだな」
「ん? なんか… 気になることでもあるの?」
ゾルは少し晴れない表情をしている。
「あ… いや、そうじゃないんだ。妹達… 仲間達に会えなかったのは、俺のせいなんだ。だから… 」
「え? だって、エルフ達は無事ここへと辿り着いてるのよね? それは鱗粉の為に女王に呼ばれたからだって」
「うん… でも、他のコクシネル達は? 彼らだけならその羽根で行けたはずでしょ? 月華山に。何日もかかるかもしれない。それでも行けたはずなんだ」
「え… そう… なの?」
「コクシネルの皆は、僕の為に行かなかったんだっ… ! だから… 俺さえ飛べたら、すぐにでも迎えに行けたかもしれない… 他の皆より身体が大きい分、体力もあるし… なのに… っ俺のせいで… 足を引っ張ったから… 」
「それは違うぞ、ゾル」
そう言うのは、ゾルの親友ライだった。
その後ろには、コクシネルやエルフの仲間達も、こちらへと集まって来ていた。
「違… くなんかないだろ! だってあの時、お前は行くのを諦めた! 俺が… 俺がいるからっ!」
「諦めた? そんなわけないだろっ!! 諦めなかったから、今俺達はここにいるんだ! こうやって全員が無事で会えたんだ! あの時は好機を待つと決めた俺の判断だ!」
ライはゾルに言い詰めるように言う。
「ここにいる仲間は、お前の事一度も足手纏いだとか、お前のせいだとか一度も思ったことなんてないぞ!」
「じゃあ… じゃあ何であの時っ… 」
「視えたんだ… 大きな竜と… 彼らの姿が」
そう言いながら、ライはカヌア達の方を向いた。
(視えた? まさか… 未来がか?)
ヴァスカは驚き、その言葉を待った。
「ライ? どういうこと?」
カヌアがそう聞くと、ライはしたり汗を流しながらも頷き口を開いた。
「信じてもらえないかもしれないけど、大きな竜と君達と思われる人物が、ここへ来るのが視えたんだ。でもその時には、面を被った二人の姿はなかった。その竜が… りゅ… 」
言葉が詰まるライに何か違和感を感じたカヌアは、ライの汗を優しく指で拭う。
「大丈夫! あなたのどんな言葉でも、私達は受け止めるし、それに信じる… その一択しかないの」
「… ありがとう。その竜… おそらくトゥバンだと思うけど、その背中に乗っていたある人影が言ったんだ」
一同が唾を飲み込んだ。
『燃やせよ』
「え… 燃やせ? な、何を?」
「おそらく、この月華山までの道、全体を… トゥバンから吐き出されていたその激甚な炎は、月華山を目掛けて放っていた… 」
「その背に乗った人物の顔は?」
首を横に振るライ。
「男かも女かも… 何族かもわからなかった」
「でも燃えてないってことは… これから起こり得る… ?」
(いや、もしくは… )
「その未来を変えた可能性があるな」
そう確定的に近しい言葉を放つのは、終始黙って聞いていたアディであった。
(未来を… ?)
「… こ、これにはまだ続きがあって。場面が変わったんだ。三人のユマン族らしき影が、それを止めるように誘導していた。色んな人に避難をさせながら、その竜を… 」
「竜を… ?」
「拳一つで制圧していた」
一斉にカヌアを見る二人の男。
それに続いて、全員がカヌアを見た。
彼らは、それを実際に目の当たりにしていた。
そう、狼の幽谷でカヌアがトゥバンに与えた一撃を。
その衝撃的な光景を、ヴァスカとアディは思い出したのだ。
「あ、えぇと… ふふ、それって夢よね? 実現率はどのくらいなのかしらね? うふ… ふふふふふふふふふふ」
(状況は違うが、案外合ってるな)
アディは、鼓動が一つ上がった。
その状況を知らないライは、考えを続ける。
「わからないんだけど、でもトゥバンがここにいるってことは… 既に制圧されてる… ? もしくはこれから… とにかくその時の僕は、その未来が来るまで待っていようと決めたんだ。谷に留まれば、そのユマン族達がきっと来るんじゃないかって、そんな気がして… これってきっと、君たちの事だよね?」
ギクリとするカヌア。
「あ、うん、そう… なのかな? 確かに私達はユマン族だけど… 」
(てことは、カヌア様が未来を変えた… ?)
「だから、ゾルのせいとかじゃないんだ! そんな風に誰も思ってない!」
「でもそれだけじゃないでしょ!? わかってるんだ。皆とは何か違うって… 僕… 歪だから… 」
「え? どこが?」
「身体だってこんなに大きいし、皆よりも光も強い。形も何だか… 」
(みにくいアヒルの子的な?)
「… ゾル、私にはあなたのその考えの方が、歪に思える。それはねぇ、個性っていうのよ? 素敵な個性。あなたにしかない」
カヌアがそう言うと、更に妹達が参戦する。
「そうだよ! 私達… お兄ちゃんの事、一度も歪だとか変だとか、恥ずかしいとか思ったことなんてないよ!?」
(ん?)
「いつも私達のこと考えてくれてる。忌みも嫌われもしてない!」
(忌み嫌われ… 何だか誇張されてないか? 俺、そこまで言ってない気が… まぁいいか)
「お兄ちゃんの心を蝕んでるソレは、お兄ちゃん自身だったんだよ! 私達… 大好きだから! お兄ちゃんの事、大好きなんだよ!」
その熱い言葉に、震えを堪えるゾルの身体。
正直な涙は、ゆっくりと頬を流れ始めた。
(でも… 私にだってわかる。ゾルは変とか思われてないと思う… むしろ)
「グスッ… っく… ひっく… ズズ… ッ」
「え? カヌア様?」
ヴァスカのその言葉に、同じくアディも反応する。
「泣きすぎだろ… ん? おい… 」
カヌアはアディのその服で、涙と鼻水を拭っていた。
(遠慮ねぇな… こいつ)
そしてカヌアは気持ちを切り替えた。
同じく涙を拭うライの元へと、近寄り聞いた。
「ふふ… だってゾル? 私もそう思うわ…あなたは素敵すぎるほど男前よ! ほんと良い兄妹ね」
「うん! ありがとう、カヌア」
更に抱きしめ合うゾル達。
十分にその時間を堪能したゾル。
カヌアは見計らって尋ねた。
「ねぇねぇ、少し聞いても良いかな? 先日、私達アルデリアからの王宮地下通路に行ったの。その時に、光を帯びた動くモノを見たんだけど、あれってもしかして… 」
「えっ!? アルデリアの地下通路に!? それはきっと僕達の仲間だ! そうか! あの日、確かにアルデリアに使いに行った者が、何名か居たな… そうか、彼らも無事だったんだ!」
「そうなんだ! アルデリアに来ればきっと会えるわ! アンセクト族って色々と働き者… というか… すごく信頼されてるのね、色んな種族に」
「えへへ、そうかぁ、無事だったんだ。早く会いたいなぁ」
「あ、ねぇねぇ、あともう一つだけ聞いても良い?」
「ん?」
カヌアはライへと耳打ちをした。
「どっちがライの想い人?」
「えっなっ、ちょっ! 何言っ… 」
「ヌフフ… わかるのよ、私には! へへへ」
カヌアはその不気味な笑いを、抑えることができなかった。
リルとメルを指差しながらそう聞くと、動揺しながら顔が真っ赤になるライであった。
(メルの方か… ふふ)
カヌアの女ハンターの勘は、それに長けていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




