episode35〜真実の心〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
深い深い山の中。
まだ夜が深いその山道を、迷いもせずカヌア達はコクシネル達の歩みに続いて、進んでいた。
その出入りの少ない月華山では、生物達が少し特殊だった。
草木… いや、もはや花だ。
その名の通り、この山は草木というよりは花々でできていた。
大小様々な色とりどりの花が、所狭しと咲き誇っていた。
(月華蝶で包まれている間、光合成とかどうしているんだろう?)
カヌアの小さなの疑問が、ライへと届く。
「ふふ、とても綺麗でしょ? これはね、月の力で咲いてるんだ。ふふふ」
「そうなんだ! 素敵! 本当に綺麗! それにライ、何だか嬉しそうね」
「そりゃそうだよ! だってこれから、仲間に… 家族に会えるんだもんっ!」
その広大で深い山の中、泉には簡単に辿り着けない。
大所帯の一行は、どこかで寝床を探すこととした。
コクシネル達は、自然の中の花のベッドで気持ち良さそうに眠る。
カヌアは、アディの弟フレールをテントの中へと誘ったが、断固拒否された。
(ロキなら寝てくれるのに… 一人じゃ寂しい)
そうして、夜が更けていく。
ふと外の灯りが弱まったことに、カヌアは気が付いた。
(あ、ヴァスカの交代の時間なのかな?)
カヌアはそっとテントから顔を覗かせた。
すると、案の定少し火から離れているヴァスカがいた。
ヴァスカも気が付いたのか、静かに目線を送る。
「カヌア様、眠れませんか?」
「あ、ううん、違うの。ヴァスカと話がしたくて… 」
「例の件ですね?」
「うん。ヴァスカ、昨夜の事なんだけど… 私が思うに… 」
カヌアがその質問を言う前に、ヴァスカは自身について告白した。
「… はい。私は、ヴァンパイヤ族の末裔です。黙っていて申し訳ございません」
「やっぱり… じゃあ、やっぱり食事を取らないのって… 」
「あ、そうですよね。大丈夫です、安心して下さい。突然襲ったりはしませんので」
(いや、信憑性が… )
カヌアがじっと見つめるその顔に、勘付いたヴァスカが弁明する。
「… 確かにさっきは噛み付きましたけど… 」
「でも、百年前のあの日、何万もの亡骸を埋葬する際に、血を浴びたって言ってるのが聞こえたけど… それはやっぱり… ヴァンパイヤになる度に… その… 誰かの血を… ?」
「あ、いや、血のストックがあるんです… 滅びゆくその日に… 死ぬ間際の人々から頂戴したものが… 」
「ん? 死ぬ間際?」
「… はい、実は、あの日俺の目の前に横たわっていた種族達は… その… まだ屍ではありませんでした」
「え? どういうこと?」
ヴァスカは少し言いづらそうに、少し目線を外して言葉を絞り出す。
「彼らは全員生きていました。しかし、意識はなく、呼吸も薄かった。ほぼ、虫の息だったんです。俺には、判断するほどの知識も勇気もなかった。だから、思いました。この者たちの血が新鮮なうちに… これ以上… 種族達を苦しませないように… 全員の血を抜こうと」
「全員の… ? 血を? 抜いたの?」
「はい。その膨大な量の血を加工して、大切に保管しています。だから、今は誰も傷つけていません。おそらく千年以上は持つかと… 」
「せっ千年っ!?」
(こいつ… 一体何年… )
「こいつ一体何年生きる気なんだ? … 今そう思いましたね? ふふ」
カヌアはそのわかりやすい表情を両手で隠した。
「…でも、何でさっきそう言わなかったの?」
「怖がらせないためです。アディティア達が聞いているあの場では、とてもまだ言えなかった」
「でも埋葬したのは本当なんでしょ?」
頷くヴァスカ。
「… 間違ってなかった… 」
「え?」
「それは勇気だよ! ヴァスカの判断は正しかった! その場にいなかった私が言うのも変だけど、少なくとも私はそう思う! 既に呼吸がほぼなかった人達の命を、どうするのが一番良かった? そんなん誰にもわからない! それも何万人もの命を、たった十歳の子が判断できる状況じゃなかったのよ!? それでもヴァスカは決断した。彼らと向き合う選択をしたの。彼らの血を未来へと繋ぐために… 」
ヴァスカが何かを堪えるように無理やり笑う。
「何で… ? 何で笑ってるの?」
「え?」
「もう誰も苦しんでいない?」
「……… 」
「たった一人その苦しみを抱え続けている者がいるわよね? 今もその時の傷が残って、心に錘がのしかかって、苦しんでるのはのはヴァスカ、あなたよ。でももう、それもこれで終わりね!」
「終わり… ?」
「そうよ! その苦しみはもういらない! 頑張ったんだね、ヴァスカ」
その無理矢理貼り付けた笑みが、ゆっくりと崩れ始める。
「… もう… ほんと叶わないなぁ… カヌア様には… っく… これ以上、泣かせないで下さい」
「ヴァスカ… 」
「ありがとうございます。一人でもそう思ってくれる人がいると、わかっただけでも救われます」
今度は心からの屈託のない笑顔を見せた。
そしてこれをきっかけに、心の内を更に明かし始めるヴァスカ。
「俺は、火も苦手なんです。まぁ色々とお気付きだとは思いますが… 睡眠を取る必要もない」
「うん、最初は何かの昔にあったのかなとか、護衛としての慣れのようなものなのかとも思ってた。でもそれを知ると、合点が行くわね。それで、何か条件があるんだよね? 我を忘れちゃう… そのヴァンパイアになる条件って言うのが何か… えぇとやっぱり満月? その時にエネルギーが満ち溢れて、人間からヴァンパイアへと変身する感じ?」
「そうですね。半分合ってますが、半分は違います。逆なんです」
「逆?」
「はい、それに関しては他の種族とは異なるんです。夜でも太陽のエネルギーが一番多いのが、満月の夜です。その時だけは、ヴァンパイヤの力が一番弱まってしまう。なので本来の姿に変わり、血を吸うという行為によって、自我を保てる… 」
「そうなの? そういう種族も居るのか… でも昼間は? 普通に太陽を浴びてるわよね?」
「まぁ、あくまでもヴァンパイヤ族ですので、人間としての血も流れてるんですよ。簡単に言いますと、昼は人間の気が、夜はヴァンパイヤの気が強いという事です。それに、このアザが… 俺達種族を守ってくれているので… 」
「そのアザが… 太陽の光を浴びると浮き出てくる花のような模様… そういう意味があったのね。じゃあ大切なヴァンパイヤ族の誇りだ」
カヌアが嬉しそうにそう微笑み返す。
少し赤くなった顔を背けながら、ヴァスカは話を戻した。
「はい、なので、月の満ちる日を予測して前日には身を隠します。ご安心下さい」
「えーそれは困るな?」
「え?」
「ヴァスカがいないと困る」
「それは… どういう」
「だって… 」
そう言いながらカヌアは前へと進み、そして少し振り返る。
「だって、私達はハルスから派生した仲間じゃない!」
「仲間… 」
「そう! 確かにハルスであるウィルだけでも、最強かもしれない。でも三人でこの世界を戻してくって、そう決めたじゃない! ハルス… いえ、ウィルには私達が必要! そして同じくらい大切なのよ! もちろん私にも二人が大切な存在よ? ね! だからっ… 」
ヴァスカは感極まり、カヌアの肩に顔を伏せた。
「その言葉… 信用してよろしいんですね?」
「あ、あ、当たり前じゃない! … あ… あぁあれ? あれれ? ヴァスカ? もしかしてまた泣いてるの?」
「泣いてなど… 決して… 」
「ふふ… 泣き虫小僧… ふふふ」
(今度は小僧か… )
その身を離すと、すぐにヴァスカは顔を背けた。
「失礼しました…それに、別にずっといなくなるわけではありません。一日だけ姿を消すだけですよ?」
「それも許さないわ! まぁ… もしまた次もヴァンパイヤになったとしても、私がその牙へし折ってあげるから安心して!」
(それはそれで、なんか… やだな)
そして、まだ聞き足りないカヌアの疑問は続く。
「それで、例の鍵… あの王宮から地下街への扉の鍵の事なんだけど、あれは産まれた時から持っていたって言ってたわよね?」
「はい、その通りです。物心ついた時には、いつも首に下げていました。それが何なのかあの時までは全然わかりませんでしたが」
「そう… じゃあ違うか」
「何がでしょうか?」
「うーん、勘だけど、ヴァスカにもロキみたいにその姿を制御出来るものが、何かあるんじゃないかしら?」
「制御する何か…ですか」
「うん! まぁこの先きっと見つかるわ! んね!」
「ふふ、気長に探します」
「そういえばあなた… 今日までずっと一人で生きて来たのよね? その… ヴァンパイアの誕生の仕方は独特なんじゃない? てことは本当に誰かの血を吸う事もなかったって事よね?」
「はい、これまで誰の首筋も狙う事なく、生きて来ました」
「さっきまで、ね」
「… はい、誠に申し… 」
「ふふ、冗談よ! じょーだんっ!」
(冗談にならなくもないから、怖いんだよな… )
「大丈夫! ウィルならわかってくれるからっ! ふふふ」
ヴァスカはその言葉を信じるかのように、ふっと笑みを溢した。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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