episode28〜海の民、ノゥリアの決意〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
他の民達がいるという、入り江へと案内されたウィル達。
一部が見え始めた所で、道の途中で何かが跳ねているのが見えた。
水場のない場所で、ビッチビチと魚が跳ねている。
『あー! またポワソ様ったら! 勝手に出たらダメだと何度言ったら… 』
言わずとも、ノゥリアがテティスの言葉を訳してくれた。
(ん? 魚… だよな?)
ウィルはその跳ねるものを、不思議そうに目を細めて見た。
『その声は… テティスかっ!? オロン様はっ!?』
そう言いながら、ポワソと呼ばれるものは、その身を跳ねさせながら、こちらへ向いた。
((しゃ、喋った!!))
ウィルとカブラは同時にそう思いながら、驚いた。
「ポワソ… 今戻った… とりあえず、水中へ」
テティスがその身を、摘んだ。
尾鰭の部分を指先二本で。
(え? その持ち方は… 合ってるのか?)
カブラはシレーヌ族の在り方が、少しわからなくなった。
塞がれた入り江であるのか、広場のような場所に出た。
暗いながらも、洞窟よりは少しばかり明るい。
天井の隙間から所々に、月明かりが漏れている。
その光がキラキラと、入江の水場に反射している。
「美しいな… ここが、塞がれた入江… しかし、本来なら… 」
そこには様々な生き物が、狭々しく暮らしていた。
オロンの姿を見ると、岸の方へと集まり声を上げた。
本来は広大な海原に居るはずの海の民達である。
彼らを静まらせ、声を掛けオロン。
(これは酷いな… 百年近くもこの状況下で暮らしていたのか… )
挨拶を済ましたオロンは、少し奥ばった場所へと案内された。
おそらくここが、王族の現在の居場所だろう。
「オロン、先程のポワソと言う者は、魚類に見えたのだが… その… 陸の上でも話ができるのか? えら呼吸なんじゃ… 」
「基本はそうだな… でも、彼は完全な魚ではない。私と同じ、シレーヌ族だ。今はその姿というだけ… ルテュも同じだ。完全な亀ではない」
(今は… ?)
「例の百年前の起こった出来事によって、彼らの生活は一変した。その体と共に。ポワソは魚、ルテュは亀の姿となり、普段はその姿ででしか生活できない。しかし、ある一時の条件が起こった時に、元の姿へと戻ることができるんだ。それに彼らの努力の甲斐もあって、喋れる事ができるようになった」
(喋れる魚と亀… )
「ある条件とは?」
「それは、月が満ちる時。その時のみ、二人はシレーヌのその姿へと戻る… 」
(また満月絡みか… )
ウィルは、シレーヌ族の事情を知った事によって、新たな繋がりが生まれた。
そうして、先を急ぐウィル達はカヌア達との約束の場所に向かうため、出口のある洞窟内へと歩き始めた。
その途中、何だか歩みの遅いノゥリアの足が、ついに止まった。
何かを決意したかのように、ウィル達へと口を開いた。
「ウィル様… 私… ここに残ります」
「え?」
「突然申し訳ございません! 勝手なのはわかってます! でもっ… でも私、この入江を… シレーヌ族や海の民達を助けたいんです! この入り江を解放したいんです! 外の世界は、既に普通の海へと戻っています。それにも関わらず百年以上もの間、海への海路が閉ざされているのは… 何か理由があるはずです。 ‘私になら出来る‘ … その言葉が… ずっと心に引っかかってました。それを現実にしたいんです」
「そうか… 止める理由もない。やっと会えた家族だ。しかし、心配な部分もある。慣れない土地で… 」
「大丈夫です。お兄ちゃん達もいるし… それに、おじいちゃんが… きっと力を貸してくれるはずです! 今頃地下で眠っているおじいちゃんが… 」
(ん? サーハの祖父代わりの者は、亡くなっていたのか? あれ? でも… ん?)
見送りに来ていたオロンが、首を傾げ、誤解が生まれそうになった。
「ノゥリアさん、それではタラゼド殿がまるで… オロン様が勘違いしてしまいますよ?」
「あ! 違うんですよ、お兄ちゃん! おじいちゃんは生きてますよ! ビックリするほどピンピンしてます! えへへ」
「そうか… いつかお会いしたい」
「はいっ! 是非!」
オロンの優しいその言葉に、ノゥリアは屈託のない笑顔で応えた。
そして、それを理解したかのように、ウィルが口を開く。
「オロン、俺が言うのも何だが、ノゥリアをよろしく頼んだ。妹というのは… 世話が焼けるが… 何より守るべき存在だ。俺にも一人いるからな」
「そうか… 俺は、一度は失敗してるからな。これからはこの身を犠牲にしてまでも、守ってみせる」
「俺達はこれから、別れて探索していた仲間と、落ち合うために月華山へ行く」
「月華山か… ここから北西に進んだ所にある。あそこには確か女王がいる。あまり姿を見せないが、高貴なお方だ。きっと力になってくれるだろう。しかし、道のりは長い。道中気をつけろ」
「あぁ」
「ウィル… 本当に世話になったな。そうだ、これを… 」
感謝の意を述べると、オロンは何やら硬く光るものを、ウィルに渡した。
「これは… 貝殻? ノゥリアの家にあった物と似ているな」
そう言いながら、ウィルはそれを天に掲げた。
「これを見たことがあるのか? ノゥリアの今の家に!?」
「あぁ、本人も最近知ったようだが、隠し部屋のような所で見た。壁一面に散りばめられるように埋め込んであったが… ん? オロン、どうし… 」
オロンの様子が、少しおかしいことに気が付いたウィル。
「そうか… そう… か… あの歌もきっと… 」
そう言い、オロンは顔を手で覆いながら、涙を浮かべた。
「オロン? これは一体… 」
「この貝殻は、シレーヌ族の涙だ」
「え? 貝殻が?」
「あぁ、 ’ラルム’ と言って、このラルムから暗明で変わる塗料ができる。しかし、出せるのは王族のみ。これを… アルデリアの前王に悪用され、そのまま両親は殺された」
「そう…だったのか… 」
それを聞いたウィルは複雑で、そして悔しみの感情が沸々と湧いて来た。
「しかし、おそらくその部屋にこれがあったということは… 父上と母上が… ノゥリアを守るために、部屋に加護として付けたんだな… 」
ウィルがその拳を強く握った。
「オロン… すまない… 知らなかったとはいえ、俺の国… アルデリアが其方達にしたことは… 」
「いや、その前王を抑圧し治めたのが、ウィルの血縁の女王プルヌリュヌだろ? 逆に感謝している。ルネ家は、俺たちの… シレーヌの命の恩人だ」
その言葉に、更に拳を握力を強めるウィル。
そして、再度その貝殻ラルムを見る。
「…ありがたく頂戴する」
「これを持っているだけで、加護が受けれる。その身を守ってくれる。無事、落ち合えることを祈ってる」
「あぁ。礼を言う。俺達はこれから月華の山へと行くが、アルデリアにも来て是非欲しい」
そうして、ノゥリアはこの入り江に残り、閉ざされた海への海路を見つけることにした。
ウィル達は、兄オロンにノゥリアを託すと、その場を後にした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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