episode26〜シレーヌ族〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
蔓薔薇によって磔にされた、シレーヌ族と思われる男を助けたノゥリア達。
カブラが手当てをしている間、ノゥリアはここへ導いてくれた者の言葉を聞く。
『オロン様を助けて下さり、ありがとうございました。私の名は、テティス。オロン様にお仕いしている者です。そして、私共、シレーヌ族は、貴方様をずっと探しておりました。サーハ様、良くぞご無事でお戻りになられました。先程から思っておりましたが、私共の言葉を話す事ができないようですね? えぇと… 水の中なら… 』
すると、カブラの方から低く、そしてとても美しい男性の声が聞こえた。
「その必要は… ない」
「え… ? あなた… えぇと、オロン様? 私達の… ユマン族の言葉が話せるんですね? それよりまだ… 傷がっ… 」
ノゥリアがそう言うと、その痛々しい身体をゆっくりと起こしながら、彼はノゥリアに向かって話しかけた。
「大事無い。それよりも… サーハ… 会いたかった… 」
オロンが、その身をゆっくりとノゥリアへと近づける。
「どんなにこの時を待ち望んだか… 」
そして、ノゥリアを愛おしそうに、その傷だらけの腕で抱き寄せた。
ノゥリアは恥ずかしさと不思議な懐かしさで、心と身体が温かくなった。
しかし、すぐさま負傷したその身体を労るように、優しく離した。
「あ、あの… まだ傷が… ん? え? あれ?」
「いや、傷ならもう… 」
そう言って、オロンはその傷だらけであったはずの身体を、ノゥリアへと示した。
流れていた血は既に止まっており、その深かった傷も浅くなり始めていた。
その光景を側で見ていたウィルが、口を開いた。
「聞いたことがある… 人魚の血肉には不老不死の効能があると… 」
その言葉に、オロンは何故かウィルへと鋭い目線を送った。
(ん? 何だ?)
ウィルは一歩下がった。
「傷の治りが早くて、良かったです。でも、ごめんなさい。私、あなたの事わからなくて… 待っていたのは、本当に私ですか? 私の今の名は、ノゥリアなんです… ノゥリア・シアン・オミロス… その、‘サーハ‘ という名は… 」
「間違いない。お前を間違えるはずがないんだ。その、髪の色… 」
そう言って、ノゥリアの髪を優しく撫でるオロン。
照れるノゥリア。
「サーハ… お前は、俺の大切な妹だ。生まれたばかりのお前を一人にしてすまなかった。あの日をどんなに悔やんだことか…」
「お兄… ちゃん? … お兄ちゃんが… 私には… お兄ちゃんが… 家族が居たの?」
そう言いながら、大粒の涙を流し始めるノゥリア。
「ゔぅ… 嬉しい… っく… 嬉しいよ… お兄ちゃん」
ノゥリアは兄オロンに抱きついた。
兄との再会を果たしたノゥリア。
気持ちが落ち着いたところで、ウィルが再び会話を試みようとした。
しかし、何だかまだオロンが、ウィルの方へとに鋭い目線を向けているような気がした。
(さっきからこの突き刺すような視線は、一体何なんだ?)
そして、オロンはウィルから目を逸らさずに、ノゥリアに何やら耳打ちをした。
ノゥリアはそれに応えるように、力強く首を振った。
すると、今度はカブラの方を見ながら、耳打ちをした。
再びノゥリアは首を横に振り、今度はその腕を使って、大きくバツを作った。
心なしか少し顔が赤い。
すると、オロンの気が一気に緩み、その態度が一変した。
そのまま二人は何か話すと、完全に癒えたその身体を立ち上がらせる。
オロンがウィルの前まで来ると、忠誠を示すかのようにひざまづき始めた。
「アルデリアの殿下とお伺いました。これまでのご無礼をお許し下さい、ウィルテンダー様」
「… いや、頭を上げて下さい。我々、他種族間では、主従関係はないはず… 同等でなければならない… そうではありませんか?」
そう言うと、オロンは顔を上げ、ニコリと笑った。
「そう… だったな… では、砕けた話し方で、失礼させてもらおう。こういうのは、永年、他種族と関わってないと、わからなくなるもんだな。改めて、シレーヌ族の王家に属しているオロンミリアだ。オロンでいい。ここまで、妹のサーハを… いや、今はノゥリアか、無事届けてくれて感謝している」
「いや、俺達はさほどの事は… 彼女が逞しんだ。逆に俺たちが助けられてきた。何度もな。先程の善行が物語っている。あの腕前… アルデリアいちだと思っている。それが今のノゥリアだ」
「ふふ、そうか。それは誇らしいな」
側で見ていたカブラが、そっとノゥリアに聞いた。
「ノゥリア? 事が穏便に進んだようだな?」
「はい。たった今、兄オロンにはウィル様が、アルデリアの殿下という事をお伝えしました」
「そうか… それだけか?」
カブラにそう問われ、ノゥリアは顔を赤くしながら動揺した。
「あ、えっ、えっと… その… お二人のどちらかは、私の想い人なのかということも… 聞かましたので、恐れながらも否定させて頂きました」
(なるほど… だからか… )
そう、先程のオロンの睨むような行為は、敵視というよりは… 兄の目だったのだ。
オロンは二人のどちらかをノゥリアの恋仲と疑い、確認していたのだ。
「ふふ、兄心ですね」
カブラはニコッと笑い、そう言った。
(これは… もしその相手があいつだとオロンが知ったら、大変だぞ… )
「オロン… 先程の蔓薔薇は、何故あのような状態になったんだ? 本来あの植物は、このような場所には、生息していないはずだよな?」
ウィルが先程の状況になった経緯を聞いた。
「俺達もよくわからないんだ。それは突然現れた。あれはつい最近の出来事だ。数日前、辺りが一瞬にして真っ白になったんだ。まるで霧が立ち込めたように、洞窟中の視界が遮られた… そして気が付いたら、身体中に蔓が撒かれていた。その棘により身動きが取りにくくなった。もがけばもがく程、蔓の締まりが強くなり、身体に棘が食い込んだ。従者が手を出そうにも、状況は一向に悪くなるばかり。俺の再生力を持ってしても、ダメだった。血が停めどなく流れ、体力をどんどん消耗するばかり… なす術なくそのまま死を覚悟した。そんな時に、其方達が来たんだ。すぐにわかった。ノゥリアの気配は特にな」
「そうか… 間に合ってよかった。それにしても、その再生力は凄まじいな」
「あぁ、シレーヌ特有の治癒力だ。この力を狙う者も少なくない… その為に俺達シレーヌの一族は深い海へと身を隠し、更には力を付けた。しかし… 事は一変した。百年ほど前、海が割れるほどの地鳴りが起こった。そして、その時に一度、この海の水が全て引かれ、無くなったんだ。海水のみがな。その為に、多くの生き物達が犠牲となった」
「この大量の海水が引かれただと!? 一体何処に?」
ウィルがその事実に驚きながら聞く。
すると、オロンはその長い人差し指を天に向けながら言った。
「空だ」
「空だと!?」
「あぁ、信じられないかもしれないが誠だ。この目で見たからな」
「確かに、海で生活するほとんどの者達は、陸では生きながらえることは難しいはず。しかし、その中でも、オロン達はよく無事でいたな?」
「あぁ、俺達は運良くこの入江へと来ていた。そしてこの入江の構造上、一部の海水が溜まってくれた。しかし、それも一部の生き物達だけだがな… 」
「その地鳴りと海水の引いた因果関係は、わからないが… 気になるな… 百年前というのも引っかかる」
「あぁ、それからこの通り、俺達はここから出られなくなった… ん? あれ? そういえば、ウィル達はどうやって、この入江へと入って来たたんだ?」
「え? いや… 普通に入っ… 」
(違う… 普通には入って来れなかった… 俺達だけじゃ到底… あれは、ノゥリアが居たからこそ、一発で成し得た… ここまでの導いてくれたのは、ノゥリアだったからだ)
急に黙り始めたウィルを心配して、オロンは声をかけた。
「ん? ウィル、どうかしたのか?」
「… ノゥリアだ。ノゥリアが居たからこそ、ここまで来れた。ここの陸からの入り口は、洞窟のようになっている。その入り口は、はたから見ると、辺りと変わらないただの景色の一部でしかなかった。ある一定の位置から見た時にだけ、その本来の入り口が見える。あっという間のこと過ぎて、気が付かなかった。何の躊躇もなく、その場所を見つけていたノゥリアに。今思えば、まるで… 最初から知っていたかのようだった… 」
「知っていた… ? もしかして… 」
何かを勘付き、オロンはノゥリアの側へと近づいた。
「ノゥリア、ここの入り口が何故わかった?」
「え? 入り口? あぁ、それは、歌です」
「歌?」
「はい。とても素敵な歌詞で… メロディーは、何となくでしか覚えてないんですけどね! でもその歌の歌詞に、あるんです。ここに似た状況のことが…それで私、試してみっ… 」
「それは一体何処で!?」
オロンは少し冷静さを失って、ノゥリアの肩をギュッと掴んだ。
「えっ!? えっと… 頭の中?」
オロンは何かの期待が薄くなった事に、冷静さを取り戻した。
「そうか… 突然すまなかった… 何か思い出したら、その… 教えて欲しい」
「ふふ。えぇっ! もちろん! だって、これからたくさん時間はありますもの!」
ノゥリアのその真っ直ぐな言葉に、思わずギュッとその身体を抱き締めるオロン。
「えへへ、痛いです。お兄ちゃん」
と言いながらも、細い腕でその身体を抱き締め返すノゥリア。
「オロン、もう一つ聞きたいのだが、水の中でなら、シレーヌの言葉がわかるというのは本当か?」
「あぁ、誠だ。試してみるか?」
そう言いながら、冷たそうな入り江の海水を親指を立てて、ニヤリとするオロン。
「… 今度にしとこう」
ウィルには、今その勇気はなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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