episode23〜可愛い下僕〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
(いつからだろう… 感情を表に出さなくなったのは。
いつからだろう… この閉じ込めておいた感情が、少しずつ外に漏れ始めたのは… 自分でもわかっている…
それはきっと… 彼女と出会ってしまったから… )
そう目の前で周りの目を気にせず…
その巨大な竜の穴を覗こうとしている彼女…
それが臀部の穴とも知らずに…
「カヌア様? それ以上はおやめになられた方がよろしいかと… 」
その様子を見ていたヴァスカが、そう声をかけた。
「え? でも、目を開けた時、最初に見た者を主人だと思うって言うじゃない? 」
「いや、それは… 」
(また見当違いなことを言っているな。それは、産まれたての生き物が、最初に見た物を親だと勘違いするって言うあの… まぁいいか… )
そう思いながら、笑みが溢れるヴァスカ。
「え? 何よ? 何がそんなにおかしいのよ?」
「カヌア様、そこはトゥバンの目ではなく、臀部の穴です。そこが開く時は… 」
その言葉に、カヌアは一瞬にしてその場から離れた。
「もっと早く言いなさいよ! 危ないところだったわ!」
「ふふふ、そうですね、ふふ」
(ヴァスカ… 元気になった?)
カヌア達は、ゾルがライと仲間をこの場に連れてくる間、ずっと気になっていたことを聞いた。
「アディ、大事なことをまだ教えてもらってないわ」
「ルー族の少年と、黒い種族の青年の事だな?」
「ぶふっ… 黒い種族… ふふ… 」
ここに新たな種族が生まれた。
「安心しろ、二人は無事だ。弟が共についてる」
「っはぁああ! 良かったぁ! もうっ、めちゃくちゃ心配だったんだから! もっと早く教えてよ! それにしても、アディには弟がいるの?」
「あぁ、似てないがな… 」
「ねぇ、二人を攫ったのはやっぱり… 危険人物だと思ってたヴァスカから、引き離そうとしたから? ルー族のロキを守るために?」
「その通りだ。ついでに黒い青年もついてきたが… それにしても、彼は何の種族だ?」
「ふふっ… あ、でもルー族を待つ者っていうのは、やっぱり本当だったんだ… ずっと探してたの… 何百年も… ?」
「いや、数年だ。代々を含めるなら、何百年にもなるが… 」
「え? 数年? たったの?」
「ん? 容姿を見ればわかるだろ?」
「イケメンてこと?」
「… 違う。その見た目じゃない。俺はまだ齢十九だ」
アディは ‘イケメン‘ という聞き慣れない単語に適応しつつあった。
「ん? どゆこと?」
カヌアが混乱している中、ある事を察したヴァスカが驚いた顔をした。
しかもこれまでにない、驚愕の表情だ。
「まさかっ… そんなっ… 生きていたとは… 信じられない… 」
「え? 何? 何!?」
カヌアは訳が分からずに聞き返す。
「彼は… ユマン族… 人間です」
「え? 人間? じゃあ私達と同じじゃない。何でそんなに驚いてるのよ?」
「同じではないんです… カヌア様… 彼は、ユマン族の中でも… 太陽の種族と言われている、ドレ族の生き残りです」
「ドレ… 族?」
カヌアは王宮書庫室で仕入れた知識を、頭の中から引っ張り出した。
(ドレ族… 確か既に絶滅したはず… 太陽の種族!?)
「えっ!? 嘘! 本当に!? 太陽の種族の!? あの!? 滅びたはずの!?」
「はい… 左様かと… 違うか? あ、いや、相違ございませんか?」
ヴァスカは言葉と態度を改めた。
「今更だ、話し方を改めなくていい。その通りだ… それにしてもお前、やけに詳しいな」
「わかった。やはり… と言うことは、ロキ達と共にいるという、弟君もか?」
「あぁ、そうだ… 今、月華山にいる。ルー族の少年と黒い種族の青年と共に」
(あぁ衝撃の事実が重なりすぎて、頭混乱中… それにしても、何でわかったんだ? そんでもって、ワイムが現代のフェール族だっていつ言おう… 黒い種族なんていませんって… 面白いからもう少し黙っておこう… ふふ)
カヌアは、ワイムの事で気を紛らわせていた。
そして、突然それは起こった。
トゥバンが目を覚まし、その身をぬるりと起き上がらせたのだ。
カヌアはその姿を見て思った。
(あれ? やっぱり… 身体が大きくなった分、効き目が切れるのが速いわね)
その場にいる全員が警戒体制に入った。
しかし、カヌアだけは違った。
その身をゆっくりとトゥバンに近づける。
そして、鋭い睨みを効かせるとともに、一発の拳をお見舞いした。
その衝撃でトゥバンは、カヌアに服従することとなる… いや、せざるを得なかった。
そして、それを見ていた二人は思った。
(さすがに見慣れてきたな… )
とヴァスカ。
(この女、支配力の塊か?)
とアディ。
トゥバンの頭部には、大きなタンコブらしきものが浮き出てきた。
これは、カヌアによる、カヌアの為の、カヌア式服従法であった。
単に殴るとも言う。
良い子は真似してはダメです。
更に二人は思った。
(ほんと、この人だけは敵にしたくない)
とヴァスカ。
(これが現代のユマン族なのか?)
とアディ。
当の本人は、そう思われているとは、露知らず、気合いを入れて、その若干怯えている大きな竜に挨拶していた。
「よしっ! よろしくね! トゥバン! 私の可愛い子ちゃんの仲間入りね! ふふ」
こうして、カヌアの狙い通り、トゥバンは素直にカヌアの大切な友… いや、従順な下僕となった。
程なくして、カヌア達の元に集まったコクシネル達。
この状況に驚いたのは、言うまでもないだろう。
ヴァスカの事は、ここに到着するまでの間に、簡単にゾルが話していた。
まだ、少しの警戒が残るが、それでも信じるしかなかった。
それよりも、これからトゥバンの背に乗って、月華山まで行くという計画を知らされた時の方が、彼らには信じられなかった。
その慌てた表情ときたら、虫生一と言っていいほどの、光を放ったのではないか。
そして、そのトゥバンが既にカヌアの手に、いや拳によって従順な子犬の様になっていたことも…
それから、その場にいた全員はトゥバンの背に乗り、月華山へと向かうこととなる。
もちろん先頭にはカヌア、そしてヴァスカ、アディと乗り、コクシネル達の間にはゾルとライが並んで乗っていた。
この先、更なる出会いがある事を想像しているのか、カヌアの感情は高揚したまま、空の旅へと飛び立った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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