episode21〜面の男〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
トゥバンは以前とは比べ物にならないほどの、その大きな身体を畝らせ、面の男の方へと向かって行った。
男は、トゥバンに慣れているのか、軽くその攻撃を交わしていく。
(トゥバン、なんかめっちゃ荒れてない? ご機嫌斜めなのかしら? … あ、そういえば… )
カヌアはそう思いながら、以前の地下道での出来事を思い出していた。
(トゥバン… ! 久しぶりにその姿を見た。しかし何故、こんなにも姿が大きくなっているんだ? そして何故、カヌア様があんなに近くに… ん? 何をっ… !?)
ヴァスカはそのカヌアの異様な行動に、緊張を更に強めた。
カヌアがその足を、ゆっくりとトゥバンの頭部の方へと忍ばせていたからだ。
面の男は未だに、トゥバンと格闘中であった。
さすがに体力を使うのか、男の息が上がってきていた。
(ガンバレーガンバレー… もうちょいだから、そのまま気を逸らしといてくれ)
カヌアは、面の男をチラチラと見ながら、更にその足はトゥバンへと近づいていた。
もちろん男も、そのカヌアの怪しい行動に気が付いていた。
察しているのか、いないのかは別として、男はその手を止めないでいてくれた。
そして、次の瞬間。
カヌアは精一杯の脚力を駆使して、その身をトゥバンの目の前に、そう顔面の前へと繰り出した。
そして腕を振り上げた。
そのキラッと光る物は、すぐに効果を表してくれた。
そう、黄色のその飴を大きな口へと放り込み、トゥバンを眠りへと誘ったのだ。
その光景を見た男は驚きのあまり、面をゆっくりと外した。
「ふぅっ! やっぱりトゥバンにはコレが一番効くのね! … ん? あら? そのお面、取ったの?」
カヌアは、男の顔を見ながら言った。
「お前… 一体何を?」
「ふっふーん! コレよコッレッ! 以前にもあったのよ! この黄色の飴ちゃんをトゥバンに与えたら眠ったの。それをちょい思い出してね!」
「… いつも持ち歩いてるのか?」
「たまたまね、たまたま。それより、そのお面、何のためにつけてたの? 顔バレが嫌だったんじゃ… うん! お面、外した方が素敵よ! イケメン隠すの勿体無いっ! 世の女子のためにも好評しとこ?」
「え? あ… なっ… 」
(何を言ってるんだ!? イケメンって何だ? 何なんだこの女… )
男は動揺し、何故か顔が赤くなった。
そして、咄嗟に面を再び装着した。
「あーぁ」
カヌアは謎に残念がった。
そして、ヴァスカが二人の元に駆け寄る。
カヌアを守るかのように、男の前に立ちはだかる。
それに対し、再び男の殺気が立ち戻ろうとした。
しかし、カヌアがそうさせなかった。
「二人ともやめいっ! ちょっと、その無駄な殺気一旦やめて! 話をしましょ! あ、ゾルッ!? ゾールー? ここへ来てくれない?」
カヌアはその場にいた全員と話し合う為に、呼び寄せた。
全員が不自然な距離を保ちつつ、警戒を残す。
「勝手に手を出したら、許さないからね! ではでは… 」
そう言いながら、カヌアは全員の間に入った。
ある事に気が付いてから、カヌアの面の男に対する態度が一変したのだ。
「まず、あなた、名は何て言うの? 私はカヌア、この子はヴァスカ、そしてこのかわい子ちゃんはゾルよ」
(カヌア様は一体何をなさるおつもりだ? それにしても、この子… ?)
(かっ、かわい子ちゃんだと!? この俺が!? それにしても… こいつに話なんて通じるのか?)
二人はそれぞれ思う事があるようだが、カヌアは気にせず続ける。
「……… 」
しかし、男は名乗ろうとしない。
「あぁ… 名乗りたくないなら名乗らなくてもいいけど… じゃあ勝手に呼ぶね! そうだなぁ… 面被り人間? それとも、俊敏銀髪イケメンがいいかしら? あとは、ナタ振り幽谷男とか? 睨めっこ負けなし男なんてのも… 」
((ダ、ダセェ!!))
それを見ていた二人は、少し気の毒に思った。
「… アディティアだ」
カヌアはニヤッと笑った。
「そうっ! アディ! 素敵な名前ね!」
「アディティア… だ」
「それでアディ? 私思ったんだけど… 」
(無視かよ… )
「あなた、ここでコクシネル達を、この先に行かせないようにしてたんじゃない? 彼らを… 守る為に」
「え? 僕達を? 守る… ?」
ゾルが恐る恐る、そして意外な事実を耳にし、驚いた表情で顔を上げた。
カヌアはニコリと笑い、頷いた。
「あーでも、ヴァスカを目の敵にしてるのは、目に見えて分かるわ! あからさまにわかる! でもどうして? あ、まだ手は出しちゃダメよ! めっ、だからね?」
アディの強く握る拳が、強まるのを感じたカヌアは、宥めるように言う。
「おそらくアディは、巨大化しかつ凶暴化したトゥバンから、あなた達コクシネルを守ろうとしたんじゃないかと思うの。だって、私達には殺意を感じないんだもの。いや、むしろ優しいから。ゾルも感じたでしょ? トゥバンから守ってくれた時に、ね?」
「え? あ、うん… 確かに… まだ信じられないんだけど、そうかもしれない」
「ふふふ… やっぱり! 最初からそう言えばいいのに! 何年、勘違いされて、恐れられてきたのよ! 口下手なんだからぁアディは!」
そう言って、カヌアは慣れ慣れしくも、突然アディの肩をポンと叩く。
すかさず、アディはその身を逸らした。
「いや、まだ俺は何も言っ… 」
「でも、そうなんでしょ?」
「守って来た… と言うのには語弊がある。俺は… ただその先へ行かせない為に、残りのアンセクト族をこれ以上… 亡き者にしない為、行かせないという選択をしたまでだ」
「自分の時間を犠牲にしてまで?」
「犠牲? そうは思った事ないが?」
「いやそれ! 守ってるに入るから! 語弊でも何でもないよ!」
カヌアはその指を、ビシッとアディの胸に当てた。
アディは表情一つ変えてはいなかったが、少し困ったようにしていた。
「全く、自覚なしですか! だから、ゾル… 安心して? あなた達アンセクト族にとって、アディは脅威ではないの。むしろ、守ってくれてた… 言わば守り人ね… あっ! そうだ! 彼を幽谷のイケメン守り人と名付け… 」
「カヌア様、話が脱線しています」
「… そうね。失礼」
ヴァスカの制止で、カヌアは話を戻した。
「んで? 何でアディはヴァスカを親の仇みたいに、そんなに殺気を放っているの?」
「この男こそが… 全種族の滅亡に手を加えた張本人だからだ」
「えっ!? な、何を言ってるの!? ヴァスカ… 本当なの!?」
「違います」
「何が違うんだっ!? 実際その血を握っているのはお前だろう!? それが欲しいが為に、残虐を企てたんじゃないのか!?」
今にも切り掛かりそうなその腕を、カヌアは掴んで制止した。
「落ち着いて」
(ん? この女、震えているのか… ?)
カヌアは必死に堪えていた。
疑いたくない気持ちと、何処までが真実なのかという気持ちが綻び始め、烈火の如く身体中を不安が駆け巡っている。
「ヴァスカ… 話せる?」
「… ここではまだ」
「二人で… 話せる?」
「… っ! …… はい」
カヌアのその真剣な心と、何かを察したような目を感じたヴァスカは素直に応じた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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