episode20〜過去を知る者〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
幽谷の奥深く。
そこに大きく開けた場所があった。
その大きな岩に座って、こちらを静かに見ている一人の男。
狼の面の男だ。
(遠くからでもわかる… あいつ強いっ!)
カヌアは放った殺気と共に、一滴の雫を流した。
嫌な汗だ。
そしてヴァスカも感じていた。
(何だ? この異様な気配は… )
カヌア達は、その場で立ち止まったまま、男の様子を伺っていた。
(先程はここまで感じなかったが、肌にピリピリと伝わってくる… どうするか… カヌア様を守りながらイケるか… ?)
そう思いながら、策を練ようとするヴァスカ。
しかし、彼はまだ分かっていなかった。
カヌアという人間を。
いや、頭の中では分かっていたのかもしれない。
それに心がついていかなかっただけなのである。
そしてそれをこれから、目の当たりにすることになる。
カヌアの身体がゆっくりと前に進む。
「え…?」
ヴァスカの声が思わず、漏れた。
カヌアは男を凝視しながら、言葉をかける。
「あなた… 何者? 何故私達を襲ったの?」
「……… 」
男は微動だにせず、応答する気配すらない。
「私達と一緒にいた二人… ロキとワイムがどこにいるのか、知っているわよね? 答えて」
「……… 」
男はぴくりともしない。
「カヌア様… 」
しかしヴァスカが近づこうとしたその時、カヌアは何かに気が付いた。
「ヴァスカッ! 待って!」
その声にビクッとし、ヴァスカの足が止まった。
(こいつ… 一瞬だけど、ヴァスカに対して物凄い殺気を放った… ?)
すると、面の男はゆっくりと立ち上がると、一瞬にしてカヌアの背に回り、その身を拘束した。
「… なっ!」
(速すぎて見えなかった!)
カヌアはその力のせいで、身体をびくともすることが出来ない。
「… 安心しろ、お前には手荒にしない」
(いやもう、既に荒いんですけどっ!! てか、喋れるんじゃん!!)
カヌアの目だけが左右に動く。
「その方を離せっ!!」
ヴァスカの殺気を帯びた声が、辺りに轟く。
男はカヌアを拘束したまま、首だけをヴァスカの方に少し向けた。
腰を抜かして怯えたゾルが、少し離れた所で身体を震わしている。
そして、次の瞬間鋭い衝撃と共に、カヌアは目の前が真っ暗になった。
面の男が手刀によって、カヌアを気絶させたのだ。
そしてカヌアを抱え、ゆっくりと岩の方へと横たわらせた。
男は、その身体をぞんざいに扱う事はなかったのだ。
再び、ヴァスカの方へと向き替える面の男。
「お前… 何が目的だ? 何がしたいん… っ!?」
次の瞬間、男の身体がヴァスカの目の前に来ていた。
(速いっ… !!)
そして、それと共に大きなナタの様な物が、ヴァスカへと振り翳される。
「… っく… 何が目的だ… 」
ヴァスカはその素速い攻撃を、自身の剣で受け止めながら問うた。
しかし、男に声は応えない。
間髪入れずに、次々と攻撃が降ってくる。
その全ての攻撃を受け交わし、今度はヴァスカが仕掛けた。
男の動きを上回る速さ。
そして感情も思考も無にする事によって、予想だにしない攻撃を仕掛ける。
ヴァスカの足元から、更に武器が出てきた。
それによって、男の両腕から血が飛び散った。
谷の隙間から、陽の光がヴァスカの顔を差したその時だ。
「… やはり… お前だったか」
男はヴァスカの、薄らと浮き出た花の模様を見て言った。
「お前、話せたのか?」
二人は距離を開けたまま睨み合う。
「… 何か… 知っているな? 何者だ、お前」
「… まだ足りないか? あんな事をしておいて、それでも尚… 残った者達を狙うのか?」
「は?」
「お前のせいで… この世が狂い始めた」
「何を言っている? 言っている意味がわからない」
「お前… あの時の残虐の血腫… その膜を破ったのは… 」
(こいつ… どこまで知っている… )
その言葉に、ヴァスカの緊張が更に強くなった。
そしてその会話を、しっかりと耳に入れていた者がいた。
(残虐の血腫? えー何そのコワイ異名… 初めて聞いた。それよりもあの男は、ヴァスカの事を以前から知っている? その上で過去に何かの因縁があって、ヴァスカを狙っていたんだ。最初から、ヴァスカだけを… ? て事は、ロキとワイムは無事? 私にだって… こぉんな軽い手刀じゃ、すぐに起きちゃうよ… 全然痛み残ってないし)
そう、カヌアは気絶させられていた事に、すぐに気が付いていたのだ。
いつからか。
気絶させられた事は、させられていた。
しかしそれはほんの一時のこと。
彼女はすぐに目が覚めていたのだ。
そんな素振りを一切せずに、遠くで死闘を繰り広げる二人を、その場で観察していた。
気絶したふりをしながら。
そして、この場にいる四名以外の、ある存在にも気が付いていた。
その存在をカヌアは知っていた。
(まさかここに… 居たなんて… でも、コクシネル達はそんな事一言も… )
ヴァスカ達は緊張を張り巡らせながら、未だ話を続けている。
「人違いじゃないのか?」
「その陽によって浮かび上がるアザ、間違いない… それは… 」
男が何かを言いかけたその時、陽の光を遮るような大きな影が二人を覆った。
(え? え? こんなに大きかったっけ?)
カヌアは気絶しているフリを忘れて、その身を起こした。
「んなっ… トゥバン!? 何故ここに!?」
ヴァスカは、目を見開いて顔を上げた。
そう、その存在とはトゥバンの丘にあった遺跡に存在していた、竜… トゥバンであった。
トゥバンは遺跡が崩れ、クーロスと黒の女神と共に姿を消したはずであった。
しかし、今、再びその姿をここ、狼の幽谷に現すこととなる。
(ハッ! カヌア様!!)
ヴァスカは驚きから、すぐに我に返った。
「う、わ… あ、うわぁぁぁぁぁぁあ!!」
驚きのあまり、ゾルが泣き叫ぶ。
その声に反応し、見た目とは思えないほどの速さで、ゾルの方へと勢いよく向かい出すトゥバン。
いち早く反応したのは、狼の面の男だった。
ゾルの身体をその腕に抱え、トゥバンから離れた所に立っていた。
(なんて速さなの!?)
カヌアは目を追うので精一杯であった。
男は怯えるゾルを、岩場の陰に下ろすと、すぐにトゥバンの方へと向き直した。
(え? 今… ゾルを助けたわよね? あいつ… もしかして… )
カヌアには、ある一つの考えが浮かんだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




