episode18〜幽谷までの過程〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
「今から… 百年以上も前の事… あれは今でも忘れないっ…最悪の日。僕達アンセクト族とルー族は、ケーフ山脈の最西端で共に暮らしていたんだ。でもあの日、いつものように、ルー族の子達と木の実を獲っている時だった。大きな地震が起きたんだ。それはもう、立っていられないほどの… 僕達アンセクト族は、空を飛べるから無事だった。でも… ルー族は… そのまま落ちたんだ…」
(だからさっき、この谷にはルー族 ’も’ 住んでいたと言ったのか)
カヌアはそう思いながら、その言葉の真意を聞いた。
「落ちた?」
「そう… この谷に… 地震によって大地が…二つに割れて… この場所はその時に出来たものだから… 」
「山の地が割れた… ? それほどの大きな地震って一体… 」
カヌアは信じられないような顔をしたまま、強張る。
「もちろん僕達はルー族が心配になって、その下の谷まで行ったよ。でも… で、でも… この深さに落下したんだ… 皆… 息が無かった… 無惨で… 無念で… 何も出来なかった。ぼ、僕達はたまたま羽根があった… ただそれだけなのに… 僕達だけ生き残って… 皆… ついさっきまで一緒に… 」
ライの身体がまた震え出す。
カヌアはその小さな身体を指でさすった。
「あなた達が罪悪感に苛まれる必要はない。だって、そんな事、誰が予想できた? その地震、自然に起こったのものなのか… それとも故意に起こされたものなのか… 気になるわね… 」
カヌアは続けて聞いた。
「ねぇ、ライ? 何故エルフ達と別れてしまったの? その場に一緒にいたのよね?」
「それは、また別の話になるんだけど、呼ばれたんだ」
「呼ばれた? 一体誰に?」
「女王ロクサーヌ様だよ。アンセクト族の頂点に立つお方だ」
(また新たな登場人物出てきたな… あぁ… 混乱してきた)
カヌアは、その顎を使い、勝手にヴァスカへとパスを回した。
「その… ロクサーヌ女王は、何故エルフ達だけを呼び寄せたんだ?」
「それは、エルフ達の為なんだ。エルフ達は自身の羽根を自分の力では、動かす事ができない。その為には、ロクサーヌ様の持つ鱗粉が必要になる。それで定期的につけてもらうんだ」
「では何故、その時にコクシネル達も呼び寄せなかったんだ?」
「さすがにロクサーヌ様の力を持ってしても、全員は無理だよ」
「一度では無理でも、何回かに分ければ… 」
「僕達もそう思った。けど… ダメだった… 」
「何か理由が?」
「ロクサーヌ様は、月に一度の満月の夜にしか姿を見せない。だから僕達も次の満月まで待とうと試みた。だけど、奴が… この谷に僕達までも引き摺り込んだんだ! そのせいで、満月がいつなのかわからなくなってしまった」
悔しさ溢れるその言葉に、ヴァスカはカヌアの方を見て頷いた。
そしてカヌアは再び口開く。
「ねぇ、その狼の面の者は、あなた達に一体何をしてくるの?」
「何も… してこない」
「え? 何もしてこない? それなら… 」
「何もしないから怖いんだ… 」
「ん? どゆこと?」
「ただこっちを見てるんだ。そのお面を取ってずっと見ている。その圧が凄くて… まるで、そこから一歩も動くなと、一歩でも入るなら、身体を握り潰す… そう言っている目だ… あれを見たらきっとわかる… 思い出すだけで震えが止まらない」
「会話は交わしたの?」
顔を横に振るライ。
その姿を見てカヌアは考えに耽った。
(うーん… 何で気迫だけなんだろ? あの素早さなら、コクシネルを捉えることはできるはず… でも、それをせずに目で訴える… 訴える? 何かを訴えてるのか? もしくは言葉がわからない… とか?)
そして、カヌアはある決断と強い意志を示した。
「ライ… この先に進みたい。私達は月華山に行かなきゃならないの。そして、必ずあなた達家族、エルフ達も連れ戻してくる。その為にまずは、その狼の面の奴の所に行く必要がある。だから… 」
「うん… わかった! その道を案内するよ! でも… 家族を連れてくる必要はないよ」
「え? でも… 」
「行くから! 僕達も一緒に行く! 月華山へ! あ、その前に奴の所だね!」
カヌアの顔は、驚きと共に満面な笑みになった。
そして、ヴァスカと顔を見合わせ笑う。
「あ、でも待って。僕達コクシネルは、ここに居るので全員じゃないんだ。僕は他の子達にも説明して、全員連れてくる。だから、案内人にピッタリの親友を紹介するね!」
そう言うと、ライは辺りを見渡しながら、大きな声でその名を呼んだ。
「ゾル!? こっちへ!」
「… ?」
「あれ? ゾル?」
すると他のコクシネルとは、少し違った舞い方をする音が聞こえた。
(ん? 羽音が鮮明に聞こえるな)
カヌア達は目線より、少し高めを見渡す。
(ん? 近づいているのはわかるんだけど… どこに… )
「あ、来た来たゾル! 遅いよー」
ライの声がするその方へと、カヌア達は目を向けた。
「えっ!」
(歩いて来とる… 羽根を羽ばたかせてるのは、一体何のため?)
「カヌア! 彼がゾルだよ! ふふ、立派でしょ?」
ライはそう言って、カヌアに親友のゾルを紹介した。
「よう… 話は聞かせてもらっていた。俺がこの谷の案内人、その名も ’谷底の殺し屋’ だ」
「え? 谷底の… 殺し屋?」
(何その異名… それにしても… )
「そう! 俺がこの谷の…」
「か、可愛いっ!!」
「え? 可愛… い? な、何言ってんだ! お前! 恐ろしいの間違いだろ?」
「ううん! 可愛い!! フォルムがヤバすぎ!」
そう言って、カヌアはゾルの両脇を持ち、子犬を持つかのように抱き上げた。
「お、おい! 離せっ! それに何言ってやがる! 殺し屋だぞ!? 怖いはずだ!」
カヌアはニタニタして離さない。
「何だか皆より少し大きいのね?」
側で見ていたヴァスカが気の毒そうに、口を開く。
「カヌア様、落ち着いて下さい。怖がってます。まぁ確かに可愛いですが… 」
そして、彼にはカヌアのその目の方が怖かった。
少し怯えている。
しかし、カヌアの愛念の意は止まらない。
「そうよね! 可愛いわよね!」
(何なんだこいつら… そんな事初めて言われたぞ?)
「お前ら何言ってやがる!! 俺は可愛くなんかっ… 」
ゾルがそう言いかけると、見た目とは裏腹にその身を捩らせて、クルッと回転し、宙へと舞った。
「っない! … まぁいい、仲間を探すんだろ? 早く奴の所へと行こう。あそこを通らなければ、月華山には行けない。ついて来い」
「はいっ! ゾル! よろしくね! 頼りにしてます!」
その真っ直ぐな言葉に、ゾルは頬が少し赤くなった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




