episode14〜狼の面〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
それから三日。
ロキとワイムとは、未だ合流出来ずにいた。
そして、目的であるルー族に会えないのはもちろんのこと、彼らがいるであろう谷にも辿り着いてさえいなかった。
(うーん… 方向はわかってはいたんだけど、さすがに手探りの旅だから… 疲れてきたな… ヴァスカは… )
と思いながら、カヌアは斜め前方に歩いていたヴァスカの横顔を見る。
(疲れて… るのか? 顔色ひとつ変えてないけど… )
すると、その視線に気が付いたのか、ヴァスカはカヌアの方を見た。
それに少しビクッとするカヌア。
(フラフィーが見えないから、何考えてるのかわかりにくいんだよなぁ… )
「カヌア様? 少しお休みになられます?」
「あ、ううん。大丈夫。それより、ルー族の谷ってもっと奥なのかな?」
(何だか気が狂いそうで… )
「何だか気が参りそうですか?」
「えっ!? あ! え? いっ、いいやっ!? そんな事なっ… ゔゔぅ… そうね… 少しだけ」
(わかりやすいな。まぁ… そうだよな。目的はあるとはいえ、先が見えにくい目的地だ… 俺自身も文献で見ただけで、実際に見た事はないからな… 今もまだ存在するのかも… )
「ん? 何だ? 何か…… 」
ヴァスカは何かを感じ、少し… いや、ずっと遠くの方を見ながら目を凝らして、呟いた。
(ん? 何… ?)
「… っは!! カヌア様!」
ヴァスカは急に叫び出すと、重い荷物を背負ったままカヌアごと担ぎ、そのまま近くの浅い崖から飛び降りた。
「… っんな!! ヴァス… 」
カヌアは担がれながら、後方を見た。
何者かが、ものすごい勢いで追いかけてくる。
先程までいた崖の上には、先日襲撃されたのと同じような煙が立っていた。
(誰!? 一人か… !? あれは人なの!?)
「お、狼の顔!? 狼人間か!?」
その者は狼の面を被っていたのだ。
しかしそれ以外は、人間の容姿をしていた。
ものすごい速さで、カヌア達の後を追ってきていた。
カヌアは担がれたままのその状況で、ヴァスカの耳元に言葉を発した。
「敵は一人、狼の面を被ってるわ… ものすんごい速い! ねぇ、もしかして彼がルー族なんじゃ?」
「ルー族? 誠ですか?」
「うん。どうする? 話しかけてみる? でも、そう簡単にうま… グギャッ!」
カヌアはその反動で首が持っていかれ、舌を噛みそうになった。
ヴァスカが急にその脚を止め、方向転換をしたのだ。
ヴァスカはゆっくりカヌアを下ろすと、今にでも襲いかかってきそうな、面の男の前に立ちはだかった。
「… っ、ルー族の方とお見受けすっ… 」
ヴァスカが声を張り上げて、接触を試みる。
しかし、その言葉は皆無に近かった。
面の男はその脚を止めることもなく、そのままの勢いでヴァスカへと何かを振り翳した。
「っく… 」
それを即座に受け止め、跳ね返すヴァスカ。
(違うな… こいつはルー族じゃないっ… じゃあ何故… )
何の躊躇もなく剣を振り翳す男。
しかし、ヴァスカの方が上手であった。
その剣を交わすとともに、天高く弾き飛ばし、そのまま男の身体を捉えた。
(つ、強ぇ! ヴァスカやるじゃん)
そして、首に腕を回し、息の根を止めるギリギリのところまで力を強めていた。
少しずつ、男の面が外れていく。
その目が現れ始めた瞬間、カヌアはマズイと思った。
「ヴァッヴァスカ! やめいっ!」
カヌアは思わず、ヴァスカの脳天へ、強めの手刀をお見舞いした。
その瞬間、男の首元からヴァスカの腕が緩んだ。
男が自身の首元を押さえながら、激しく咽せ返る。
それと共に、逝きそうになった男のフラフィーも戻ってきた。
カヌアが男に問いかける。
「ねぇ! あなた一体… 」
しかし、次の瞬間、男は人間とは思えないほどの跳躍力で、一回転すると、木の上に身を飛ばした。
「なっ! ちょっ… 」
その男は、外れかけた面をつけ直すと、そのまま向きを変え、逃げ去ってしまった。
「ちょっと待って! ねぇ! 待っ… 」
カヌアは冷静さを失った。
元々冷静さの薄いその気を、失うのは容易であった。
そう久しぶりに、頭の糸が切れたのだ。
その到底追いつけるとは思えない男の後を、今まで使ったことのない筋力を駆使して、追いかけ始めた。
そして瞬く間に、横並びになるほどまでに追いついたのだ。
「…… っ!?」
男は非常に驚いていた。
「ねぇ… ロキを… ワイムを返して… 返して!! どこにいるんだか知ってるんでしょ!?」
「……… 」
「ねぇ! 聞こえてるんでしょ!? 答えっ… て、え?」
その瞬間、カヌアの足元は絶たれた。
カヌアが進もうとしていたその木の枝を、何十メートル先も見越して、その男は切り落としたのだ。
カヌアはそのまま、真っ逆様に落ちた。
(うっわぁ… やられたっ!!)
カヌアが着地の体勢を直そうとした瞬間、柔らかい何かに包まれた。
「ヴァスカッ! ナイスキャッチ!」
「… はい。カヌア様、本当… 無茶はおやめ下さい。困ります。勝手に追いかけたりなど」
(しかもめちゃくちゃ速い… あんなの俺でも追いつけない)
「ブヒュッピュゥウ〜ヒュッヒュゥ〜」
「出来ない口笛で、無理やり誤魔化すのも、おやめ下さい」
「あーはいはい。スイマセンネ」
(心が込もってない… )
「それよりあいつ… 何者?」
「わかりませんが、おそらくルー族ではありませんね」
「えっ!? そーなの!? なんでわか… 」
「なんとなくです」
「なんと… なく?」
(なんとなくでわかるもんじゃねーだろ?)
カヌアはヴァスカに詰め寄る。
「随分勘が働くのね?」
「え? あぁ、そうですか?」
「ねぇ… あなた、本当は自分が何の種族か、検討がついているんじゃないの?」
「………… いいえ。突然何故そのようなことを?」
「うーん、気になったのよねぇ。こんなに知られていなかった種族の存在を、人間の他、四種も見つける事ができたなんて… それは何故かなって… それにあなたは五種の生存者がいるとわかってるって言った」
「… 調べればわかる事です」
「そうね、確かに王宮の書庫室でも調べられるわ。でも、それも極一部。国で一番情報が集まるその場所で極一部よ?」
「……… 」
「… あなたが言ってた存在する五種族。それは、ドレ族とデュー族、シレーヌ族、ルー族、アンセクト族の五種かと思ったんだけど… ドレ族とデュー族を同じユマン族の種としたら、あともう一種類わかっている種族があるんじゃないかなって。そのもう一種があなたの種族なんじゃないかって」
(おつむが弱そうなのに、たまに鋭い事を指摘してくる… この人は本当… )
ヴァスカは珍しく、変な冷や汗を掻き始めた。
「……… チョット、ナニイッテルカ、ワカリカネマス」
(嘘つくの下手だな… )
カヌアは、ジトジトとその逸らす顔を見て言った。
「怪しい… あと、これも勘だけど、このアザ、何かの印なんじゃ… ?」
と言いながら、カヌアはヴァスカの花模様のアザをなぞった。
その瞬間、咄嗟にヴァスカは顔を背けた。
「こっ、これはっ… 生まれつきです」
「その生まれつきに、何か意味があるのかなぁ?」
カヌアはニヤッとして続ける。
「……… 」
「うーん… 無理矢理誰かに、付けられたとかでは… ないのよね?」
「… はい、それは違います。このアザに恐怖は感じませんから」
「それなら良かった! まぁ、でも種族に関してはあまり言いたくないようなら、今はそれでもいいけど… ヴァスカにも考えがあるだろうし。でも、いつかは話してね… とても重要な事だと思うから」
「そうですね… それはもちろん… しかし、もう少し調べさせて下さい。それからきちんとお話しします」
「はい、よろしくー」
(軽っ!)
カヌアの気持ちの切り替えは、時に突風のように速くなる。
しかし、それによって、気持ちが軽くなる者もいるのは事実だった。
心配する者もいるが…
そして、再び真っ直ぐな目をして、ヴァスカに新たな言葉を投げる。
「それに、ウィルはちゃんとあなたの事を信頼してると思うから」
「ウィル様が? それは… 誠ですか? 光栄… ですが… 」
(カヌア様の事で、目の敵にされてるもんだと、てっきり… しかしこの状況を見たら、今度こそ刺されると思うが… でも… そうか… )
「ふっ… 了解致しました」
そう言って、自然に笑みが溢れたヴァスカ。
カヌアは、そんな風に笑うヴァスカの顔を見るのは、初めてだった。
少し尻込みをして言う。
「わ… かったんならそれで良い… 」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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