episode10〜ある決意、冒険へと〜
初連載の二部幕、開始しました!
お初にお目にかかってくださる方も、心の奥底で待っていてくれた方も、緩く読んで頂けると嬉しいです。
初めての方は、一部から読んで頂けると、話が繋がり読みやすいかと思います。
一部とは少し異なり、冒険感のある二部となっております。
毎日の更新を心掛けております。
王宮へと戻ったウィル一行は、今後の事について話し合った。
壮大なものとなり得るそれは、とても二、三日の話し合いでは終わらなかった。
かれこれ二、三週間程かかったのだ。
しかし、全ての種族を探すには、どうにも時間がかかってしまう。
それにウィルがカヌアの身体を心配しすぎるあまりに、中々納得する内容に至らなかった。
その反面、カヌア自身は旅に近いその計画が、楽しみで仕方なかった。
(まぁ最終決定権はウィルにあるわけだし… でも何だかなぁ… お荷物にはなりたくないし… )
カヌアは考えた。
考えに考えて、自身の心の内を言葉にするという結論に至った。
ウィルは、その夜そんなカヌアの様子がおかしい事に気が付いていた。
そして、翌日の話し合いの場の前に、カヌアはウィルと二人きりになり、その考えを示した。
「ウィル? 私に考えがある」
「聞きたくない」
カヌアの言葉に、即座に反応したウィル。
しかし、カヌアも予想していたかのように切り返す。
「ふふっ何子供みたいなこと言ってるの? その言葉は、私が何を考えているのかわかってるってことよね? そんなに心配?」
「……… 」
黙り込むウィル。
微笑むカヌア。
そしてゆっくりと、その哀しく複雑な表情の顔に、そっと手を添えた。
「ねぇ? 知ってる? 私、とてもせっかちなの」
その愛おしさを込めた手を、ゆっくりと下へと滑らせる。
「ねぇ? 知ってる? 私…」
そのまま優しくキスをする。
「とても強いの。だから信じて、ね?」
「… わかった。聞こう」
「ありがとう。まず、この狼の谷と人魚の入江は、逆の方向にあるわよね? だから… 全員で行ってたら時間がかかる… 」
ウィルは目を少し逸らした。
その顔を自身の元へと戻したカヌア。
優しくも、決意を固めた力強いその瞳を、真っ直ぐにウィルへと注ぐ。
「二手に別れましょう」
その言葉に、険しい表情を見せたウィルは唇を少し噛んだ。
しかしカヌアは続けた。
「そこで、ロキとノゥリアはまずそれぞれの場所に行くから、その二人は決まりね。で、私とヴァスカ、ウィル… この二組は… 」
「嫌だ」
「ふふ、言うと思った」
カヌアは予想通りのその言葉に、屈託なく笑った。
「なら、俺とカヌアでいいじゃないか?」
「でも何でこの二組に分かれるかは、わかっているんでしょ?」
「… この世を制する三者…だよな… 」
カヌアの問いかけに、正直に応えるウィル。
「ご名答!」
カヌアはそう言いながら、明るく両手を胸の前に合わせた。
「ハルスの眼を所有するウィルは、完全体の両眼を持ち合わせているけど… 私とヴァスカは片方ずつしかない。だから、二人で行動した方が… ね? 大丈夫だから」
カヌアのその強い眼差しは、いつでも真っ直ぐだ。
カヌアは、心配そうなその頬を優しくなぞる。
その手を握り返しながら、ゆっくりと頷くウィル。
しかしその顔は、半分納得できていないようだった。
「ふふ、感謝申し上げます。あとはカブラとワイムなんだけど… それはどちらでもいいかしら?」
「いや、ワイムをカヌアにつかせる。あいつは従者一、腕が立つからな」
カヌアは頷くと、続けた。
「そして、どちらの種族に会いに行くかよね? ウィルはどうした方が、いいと思う?」
「そうだな… 女性二人を一緒にしたい気持ちはあるが、そうするとどちらかがどうしても手薄になってしまう。これは避けた方が良い。だから… 」
カヌアはその考えに頷くと、結論を出した。
「では、狼の谷へは、私、ヴァスカ、ワイム、ロキが。
人魚の入江には、ウィルとカブラ、そしてノゥリアね! これでいいかしら?」
「…あぁ」
(ふふ、まだ納得してなさそうだけど… )
「そして、合流地点は… あ、どうしよう? 決めていなかったわ」
「… ここだな。月華の泉」
「月華の泉?」
「あぁ、ここは二箇所のちょうど中間… とはいかないが、次に行く事になる場所だ。それに狼の谷からの方が近い」
「次に行く事になる? だって、種族はまだ二種族しか…っ!? まさかっ!?」
「あぁ… いや、まだ定かではないが、ヴァスカが言うにはおそらくこの泉には、アンセクト族に関連する何かがある。ここで合流しよう。その時に、種族の生き残りを連れて来れるのが最善だが… 無理にとは言わない。今回は見つけ出して、接触するのが目的だからな。各々の目的の種族に会えても会えなくても、キリがいいところで探索を終えて来るように」
「えぇ。でも私、月華の泉の場所わからないけど?」
「それなら、ヴァスカが知っているから大丈夫だ」
「うん、わかった。ではそこで合流ね」
そう言いながら、微笑むカヌア。
するとカヌアの背中に、心配な腕が伸びる。
(ウィル… 私が寂しいって言ったら… きっと… )
「… ご武運を… 」
カヌアはそう言って、その温かい背中に腕を回す。
抱きしめる太い腕に、ギュッと力が入る。
「すぐに見つけ出して合流する。何が何でも怪我だけはするな。危ないことはするな。無茶は… するな」
「はい。肝に銘じます」
「危ないと感じたら、ワイムとヴァスカを盾にしてでも逃げろ! いいな?」
「え? あ… 善処します」
「それから… 」
「あ、ね? ウィル? 合流して、無事に王宮へと戻ったらその時は… 」
と言ってカヌアは、ウィルの耳元で何やら囁いた。
その瞬間、ウィルはマグマのように、顔が真っ赤になった。
そして、頷く。
カヌアは、この国の王子をも黙らせる術を身につけていた。
ある意味最強である。
そして、出発の朝が来た。
まだ夜明け前だ。
もう準備は出来ている。
いつでも出発できる。
しかし中々一行は、その場から動けないでいた。
何故ならウィルが、カヌアを抱きしめて離さないからだ。
別れの抱擁からやっと解放された時には、既に太陽が姿を表していた。
(相変わらず心配性だな… )
そして、ウィルはワイムとヴァスカに何やら念を押して言っていた。
その間に、カヌアは愛馬へと跨った。
もう一度、抱擁をしようと思ったウィルの気持ちは打ち砕かれた。
「それでは、ウィル! カブラ! ノゥリア! お気をつけて! 無事、月華の泉で合流しましょう!」
そう言い、元気に手を振ったカヌア。
その目は何だかキラキラしていた。
(冒険っ! 冒険だ!! 何だかRPGみたい!)
カヌアは、オリジナルのパーティを引き連れ、冒険へと旅立とうとしていた。
主人公は心躍らせながらそう思っていたが、それを見送るウィルの背中は、非常に名残惜しそうだった。
そしてその姿を、切ない眼差しで見つめる従者達。
ワイムとヴァスカが、ウィルの前にひざまづく。
「ウィル様、ご武運を」
ワイムの言葉に、強く頷くウィル。
「あぁ、頼んだ」
そうして一行は、それぞれの道へと足を進めた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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