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遭遇

 家に帰ったA子は生活安全課の刑事の顔を思い出し、ダメ元で電話をかけてみることにした。

 しばらく呼び出し音が鳴ってから電話に出たのは髭で背の高いD川だった。


『はい、D川です』

「あの、すいません。今日学校で会ったA子ですけど」

『ああ、君か。どうしたんだい?』

「今、お時間大丈夫ですか?」

『うん。大丈夫だよ。それで何の用だい?』

「実はですね……変なことを聞くかもしれませんけど……あの国道で昔、事故とかありませんでしたか?」

『ああ、その話かい。無いよ』


 A子はD川が調べもせずに断言したので驚いた。


『あの場所に道路が敷設されて以来、B子さんが事故にあうまでは、記録には残っていないよ』

「なんで、なんでそんなことを知っているんですか?」

『それは言えないな。話はそれだけかい?』

「え、あ……はい」

『それでは切るよ。何か思い出したら連絡をお願いします』


 やる気なさげなお願いしますの直後に電話は一方的に切れた。

 A子は呆然とした。あの怪談はまるっきり嘘ってことなのか?でも噂通りにB子は死んだ。C子も死んだ。いったいどうなってるんだ……。


 その夜。A子はF夫に事故は無かったという報告を入れようと思いたって電話をかけた。


『プルルルル……プルルルル……ザッはい。F夫です』


 F夫の声は少し遠くくぐもって聞こえた。そしてどことなく抑揚がない気がした。でもそんなこともあるだろうとA子は話を続けた。


「夜分遅くに失礼します。C子の友達のA子です」

『……ああ。君か』

「あの過去の事故の件なんですけど、知り合いの刑事さんに聞いたら、そんな事故は起きていないそうです」

『なんだって?……実は僕の方で調べた結果、すごい情報が見つかったんだ。もしかしたらこれで助かるかもしれない』

「え?なんですか?」

 A子は身を乗り出した。

『ザッ……直接見せたい。今から来れないかい?……ザッ』


 やけに雑音が多いなとA子は思った。


「え。こんな夜遅くにですか?」

『ああ、申し訳なザッけど時間がないんだ。ザッ……頼むよ』


 少し迷ってからA子は答えた。


 「……わかりました」


 A子は承諾して電話を切った。


(なんだろう……変だったな。F夫さんさん大丈夫かな)


 心配になりつつもA子はコンビニに行くと言って家を飛び出した。

 向かった先はF夫の家だった。F夫の家には例の国道を通らないとならない。嫌な感じだけど歩道橋もあるし平気だろうと自分に言い聞かせた。

 夜の国道は街灯も少なく人通りも少なく不気味だったが、音漏れなど気にせず大音量曲を聴いて恐怖を紛らわすことができた。

 そうして歩道橋に近づいたその時、誰かに呼び止められた気がして足が止まる。

 きっと気のせいだ。

 自分にそう言い聞かせA子は再び歩き出した。

 だが次の瞬間、後ろから肩を掴まれた。


「きゃああああ!」


 A子は悲鳴を上げて振り向いた。そこには誰もいない。


「やだ!やめてよ!」


 A子は叫んで走り出した。すると今度は誰かに足を掴まれ転んでしまう。


「何なのよ!!」


 A子は泣き叫びながら足元を見ると、足首を掴む白い手が見えた。そしてその手は徐々にA子の体を這い上がってくる。


「いやあああああ!!!」


 A子は絶叫しながらその手を蹴った。だが手はびくともしない。その瞬間、A子の背後から光が差した。振り返ると車が迫ってきていた。

 A子がハッとすると、白い手はA子を車道へと引きずり込もうとする。A子はガードレールに捕まり抵抗を試みるが、凄まじい力で引きずられ、指が千切れそうだ。


「嫌っ!死にたくない!助けて!!誰か!!」


 A子が叫んだ瞬間、何かが弾けるような音が遠くでして、白い手の力が消えた。

 A子は這いずって歩道に戻ると、車がその背後を通り過ぎる。車はそのまま走り去り、交差点を曲がり見えなくなった。助かったのだ。

 足首を見ると白い手も消えている。

 A子は周囲を見渡すが何もいない。


「なんだったの?」


 A子が呆然としていると、いつのまにかイヤホンを落とした耳元で誰かが囁いた。


「その足ちょうだい」


 「!?」


 A子は飛び上がって振り返った。しかしそこにも何もいない。

 逃げるために震える足でなんとか立ちあがろうとするとまた足首を掴まれ、A子は悲鳴をあげた。


「きゃあああ!!!」


 A子が足元を見ると、そこには雨の日に校門で見た白いワンピースを着た女が這いずってA子の足を掴む姿があった。女は黒い髪を振り乱し血走った目でA子を見ている。


「足をよこせ。足をよこせぇぇぇぇぇ!!」

「ひっ……」


 A子は恐ろしさのあまり腰が抜けてしまった。そして女は腰が抜けて立てないA子の体を這うようによじ登ってきた。

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