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過去

 翌日。A子が登校してくると、例の刑事二人が校門のところに立っていた。

 二人はA子を見つけると近づいてきた。A子の心臓が跳ねる。


「ちょっといいかな?」


 E田が話しかけてきた。A子が頷くと二人とA子は職員室の応接間に通された。


「あの、今日はどんな用事なんですか?」


 E田は言いにくそうに口を開いた。


「実はね、C子さんが昨夜交通事故にあって亡くなったんだ」

「え、嘘……」


 A子の目から涙が溢れた。


「C子さんはおじさんのところへ行くと言って家を出て、国道のところで事故にあったようなんだ」

「F夫さんのところへ?」

「うん。昨日A子さんと二人で訪ねているよね。どんな用事だったのか聞かせてきれるかい?」


 A子は戸惑った。怪談話が本当に起きておるなどと言っても信じてもらえないだろうし、もしあの怪談が事実なら人に話すのは危険だと思ったからだ。


「えっと……ちょっと勉強でわからないところがあったので相談に……」


 A子は誤魔化した。E田は困ったように頭を掻いた。


「そうか……いや、変なこと聞いて悪かったね」

「いえ……」


 A子は俯いたまま答えた。


「最後にもう一つだけ聞かせてくれないかな?」

「何ですか?」

「国道についての噂話って知ってる?」


 A子の心臓が跳ねた。なぜここで国道の話になるのだろうか。だがA子は平静を装ってとぼけた。


「知りません。何のお話ですか?」


 E田はため息をついた。


「そうだよね……知らないのならいいんだ。呼び止めてすまなかったね」

「失礼します」


 A子は頭を下げ、逃げるようにその場を後にした。


 なぜC子が死んだのか?昔C子が聞いた時は何もなかったじゃないか。F夫さんはどうなるのか。何より私自身はどうなるんだろう……。A子の中で様々な思いが交錯した。


 放課後、A子はF夫の家にやってきた。もうこの話を相談できるのは既に話を知っているF夫だけしかいない。


「やあ。来ると思ったよ」


 F夫は苦しそうな笑顔でA子を迎えた。


「あの……C子が事故で死んだって本当ですか?」

「うん……残念だけど本当だ」

「私……どうすればいいんですか?」


 A子はすがるように尋ねた。


「そうだね……C子ちゃんの事故の話を聞いてから僕も独自に調べてみたんだ。そしたらね」


 F夫はノートパソコンを開いてA子に見せた。

 そこの映されていたのは例の都市伝説まとめサイトだった。


「これ、もしかして君たちが書いたんじゃない?」


『この話をした友人が事故で死んでしまいました。それも片足が切断されていたようです。この幽霊から逃げる方法はないでしょうか?』


 A子は頷いた。


「この後ついたレスでね気になるものを見つけたんだ」


 それは昨日の夕方書き込まれたものだった。


『管理人です。調べてみたのですが話の場所で十年前から遡って調べてみたのですが、過去四十年記事になるような事故は起きていませんでした。しかしついこの先日事故があったことは確認できたので書き込まれた話に嘘はないと信じます。引き続き調査をしてみます。』


「どういうことですか?」


 A子は困惑した。


「僕の聞いた話を含めて出どころが怪しくなって来たってことだよ」


 F夫はパソコンを閉じた。


「僕が最初に聞いたのは中学の頃で、その頃には既に二十年ほど前にあった事故という話だったんだ。それがだいたい二十年前だ。もし僕の前の前のずーっと前から二十年前に起きた事故って話だとしたら……」


 F夫は悲しげに続けた。


「僕が聞いた時には、話を聞いたら事故にあうなんていう話はついていなかった。昨日の話では確か君たちが友人から聞いた時もそうだったね」


 A子は頷いた。


「何十年も語り継がれているなら話の細部が変化することはおかしくないと思うけど、聞いたら事故にあうの部分はどこかで誰かが付け加えたとしか思えない」

「それってつまり誰かが悪意をもって付け加えたってことですか?」

「そうとは限らない。誰かを怖がらせるために脚色するなんてよくある話だからね」

「じゃあどうすればいいんですか?」


 F夫はため息を吐いて窓の外を見た。


「僕はもっと時代を遡って調査してみるよ。もしかしたら何か見つかるかもしれないし」

「お願いします」

「あ、そうだ」


 F夫は名刺を取り出した。


「C子ちゃんが死んだから連絡が取れないでしょ。登録したくなかったらしなくていいし、君の連絡先は聞かないことにするよ。その代わり何かあれば連絡してきて」

「はい」


 A子は頷くと立ち上がり頭を下げた。そしてそのままF夫の家を後にした。

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