進展
昼休み、A子はあのサイトを再びチェックした。すると返信が来ていた。
『マジで?実話だったん?』
『ご友人の冥福を祈ります(-人-)』
『なりすましじゃね?』
『↑そんなのはわかった上で楽しんでんだよ』
『管理人です、私は対処法を知らないので知人にも当たって見ます。しばらく時間をください』
『ファ◯リーズが効く』
『その国道に近付かなけりゃいいんじゃね?』
『呪いなら無意識に国道に向かうんじゃね』
他にも有象無象の役に立つような立たないようなコメントが残されていた。
「見てC子!」
「え?何これA子サイトに助け求めたの?」
「だって他に頼れる人もいないし……」
「でも、みんないい加減なこと言ってない?」
「……確かに。でもこの管理人さんは調べてくれるって!」
「まぁ、とにかく今は待ちましょう」
C子が微笑むとA子も笑顔で返した。
放課後、C子が例のサイトをチェックしているA子に話しかけてきた。
「ねぇ、A子。今日時間ある?」
「え?何?」
「あの話親戚のおじさんから聞いたって話したじゃん。おじさんと連絡取れたの」
「ホントに!?」
A子は興奮気味に立ち上がってC子に詰め寄った。
「うん。だからさ、これからおじさんの家行かない?」
C子はA子をなだめるように言った。
「えっ、でも大丈夫なの?」
A子が不安そうにしていると、C子は悪戯っぽく笑った。
「大丈夫だよ。在宅ワークだし、可愛い姪っ子が遊びに行くんだもん。ついでにお小遣いもせびっちゃお」
そうしてA子とC子は、あの国道を通ってC子の親戚の家の前に来た。
「ここがそのおじさんの家なの?」
「うん。とりあえず呼んでみるね」
「うん」
A子とC子はインターフォンを押した。少し間があってから返事があった。
「はい」
「こんにちは。C子です」
「あーC子ちゃん。今開けるよ」
扉が開くと同時にC子はA子の手を引いて中に入った。
「おじさーん!久しぶりー」
「やあ、C子ちゃん大きくなったね」
「C子ちゃん、そちらの子は?」
「友達のA子」
「はじめまして」
A子が挨拶すると、C子の親戚と思われる人は優しく微笑んだ。ガリガリに痩せていて頭はボサボサで髭も少し生えているけど、怖い印象は受けなかった。
「C子ちゃんの親戚のF夫だよ。よろしくね」
F夫はお茶とお菓子を出してくれた。
「それで、どうしたの急に」
「あー……ちょっと聞きたいことがあって」
「何?学校の課題とか?」
「ううん。昔教えてもらった話あるでしょ?」
「話?」
「国道で事故があったって話」
「つい先日も同じような事故があったよね」
「うん。あれ友達なんだ」
F夫のお茶を持ち上げる手が止まる。
「え?」
「だからね、あの話について詳しく知りたいんだ。だってあの話を聞いたら事故にあって片足切断されちゃうっていうから……」
「それは本当?」
「え?」
今度はC子が止まった。
そしてF夫が深々と頭を下げる。
「ごめんあれ嘘なんだ。聞いた話を親戚の話ってことにしただけで……」
「嘘……」
「C子ちゃんを脅かそうと思って出来心で……だからあれ以上の話は知らないんだ」
それを聞いたC子は呆然としていた。そして震えながら泣き出した。
「C子!?」
A子がC子の肩を抱く。
「A子、ごめん……私、おじさんなら何か知ってるかもって思って……」
「ううん……いいよ」
A子はC子の背中をさすった。しばらくしてからC子は落ち着いた。
「本当にごめんね……」
F夫が再度謝る。
「いいよ。それに謝るのはこっちの方。いきなり押しかけて変な話して」
A子とC子は深々と頭を下げた。
「気休めににしかならないと思うけど、もし本当にこの話を聞いたら事故にあうって言うなら、僕やC子ちゃんはとっくに事故にあってるはずだよ」
目を見開いたA子とC子は顔を見合わせた。
「そっか」
「確かに」
A子とC子は声を出して笑い合った。それからしばらくの間三人で他愛もない会話を楽しんだ後、二人は家路についた。別れ際、C子はA子に手を振った。
(よかった……またいつもの日常が戻ってきた)
その夜。「おじさんに話を聞きに行く」と言って家を出たC子がF夫の家にたどり着くことはなかった。