表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/42

ここは耽美な世界ですね(7)

 次の日、目が覚めると、やはりジーニアはジーニアだった。実はジーニアという人物になりきっている夢を見ていたのではないかと思っていた中の人だが、やはりジーニアが現実の世界らしい。


 ――大丈夫、私には推しがいる。クラレンス様がいる。だから、この世界で生きていける。


 思い出してしまった前世の記憶に戸惑うことはあるが、それでもジーニアとして生きていかなければならない。ここで彼女としての人生を投げ出してしまったら、ジーニアとしての生を閉じるということで。そうなったらあの両親と兄たちは悲しむことだろう。それだけは絶対にやってはいけない。


 さて、この世界の主要登場人物であるあの六名を思い出したジーニアであるが、ジーニア自身はどのような人物であったのか。

 まあ、モブである。場合によっては当て馬と呼べるかもしれない。第一のシナリオでは兄の恋を成就させるために、その命を散らす。

 第二と第三のシナリオでは、卒業パーティに参加しているただの参加者。それ以降の登場は無い。


 ――あれ? じゃ、私。卒業後はどうしたらいいんだろう。もしかして、あの人たちの絡みが見れない、とか?


 自分がモブであることを思い出したジーニアだが、それでも推しと推しの絡みは見たい。この目に焼き付けたい。拝みたい。

 ちなみに彼らは王宮にいる。王太子と宰相の息子はもちろんのことだが、騎士団の屯所も王宮の敷地内にあるし、王宮魔導士団というくらいだから魔導士団の研究室も王宮敷地内にある。つまり、王宮に潜り込むことができれば、彼らの絡みをお目にかかることができる、というわけで。


 ――ジーニアって、卒業後はどうするの?


 ゲームの世界では一切描かれることの無かったジーニア。ジェレミーの妹というだけの存在。そんな彼女が学院の卒業後にどのような道に進んだのか、ジーニアの中の人はまったくわからない。のだが。


 昨日、お風呂に入らなかった分、朝からシャワーを浴びて、髪の毛をもぞもぞと拭き上げていたら、メイドが「朝食の時間ですがいかがなさいますか」と呼びに来てしまったため、それなりの恰好をさせてもらってから食堂へと向かう。

 のんびり朝シャワーをしていたジーニアが最後であったようだ。


「おはよう、ジーン。今日はお寝坊さんなのね」

 母親がニッコリと笑っている。

「おはようございます。遅くなりまして、すいません。お父さまもお兄さまも、早いのですね」


「あははは。あのくらいで酔いつぶれるようなトンプソン家の男ではないからな」

 父親は、息子と酒を飲んだのがよっぽど楽しかったのか、目尻を下げて朝から豪快に笑っていた。その父親を冷たい視線で見つめる母親。この二人に何があったのかは聞かないでおこう。


「お兄さまは今日、あちらに戻られるのですね」

 ジェレミーは、王城の敷地内にある、騎士団の宿舎に常駐している。何かの呼び出しにすぐ応えられるように、と。


「ああ。だが、次の休暇にはまた戻ってくるつもりだが……。そうなると、もしかしたらジーンとは入れ違いになってしまうかもしれないな」


 ――ん? 入れ違い? あ、そうだった。私、王城で侍女として働くんだった。


 中の人の記憶に侵されて、ジーニア自身の記憶を失うところだった。そう、ジーニアは行儀見習いも兼ねて、王城の王族付きの侍女として働くことになっている。侍女にはそれなりの家柄も求められるのだが、兄のジェレミーも第五騎士隊の隊長を務めるくらいの家柄であるため、侍女になるには相応しい身分を持っていたようだ。


 ――ナイス、ジーニア。さすが、ジーニア。天才としかいいようがないわ。


 しかもジーニアはあのクラレンスの妹であるアマリエ王女付きの侍女となるのだ。ということを、兄の言葉で思い出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ