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ここは耽美な世界ですね(5)

 重要なのは学院の卒業パーティだ。クラレンスの乾杯の儀からシナリオの分岐は始まっている。ここでクラレンスが毒入りグラスを選ばなかったら、第一もしくは第二のシナリオへ進み、それを飲み干してしまったら第三のシナリオへと進む。

 このグラスを選択するのが第三者である神のような存在であるプレイヤー。初プレイではこれが分岐を決める選択肢とはわからず、どっちでもいいやと適当に選んでしまった記憶が蘇ってきた。

 本来であれば、第一のシナリオ、第二のシナリオ、第三のシナリオと順番通りに進めていくのが王道というか、心臓に負担の少ない進め方なのだが、ジーニアの中の人は第三のシナリオから初めてしまったというチャレンジャーのような精神の持ち主だ。いや、当時のジーニアの中の人にとっては不可抗力。だって、知らなかったのだから。


 では、そんな心臓に負担の大きい第三のシナリオとは。


 先にも説明したが、シナリオの分岐はクラレンスが手にするグラスによって決まる。つまり、第三のシナリオは毒入りグラスを受け取ってしまったクラレンスによって始まってしまうのだ。

 毒入りの飲み物を口にしてしまったクラレンスは、もちろん毒にその身体を侵されてしまう。しかもその毒入りの飲み物、ただの毒ではなく呪いも込められているという、なんともまぁ、やっかいなもの。

 呪いの込められた毒によって、クラレンスは徐々に身体を蝕まれていく。その呪いを解くために必要なのがシリルの愛だったとなれば、結果オーライ、一粒で二度美味しいシナリオになるのだが、そうならないのがこのゲームの嫌なところでもある。


 残念ながらこの呪いを解くために必要なのは、シリルの愛ではなかった。解呪も兼ねた解毒薬という、いたって普通の方法。

 そこで登場するのが王宮魔導士。


 じゃじゃん♪とジーニアは心の中で効果音をつけてみた。


 第三のシナリオの対象の二人は『メガネ攻め』と『健気受け』である。

『メガネ攻め』こと王宮魔導士のジュード・ホルダー、二十七歳。他の対象者よりも少々年上。銀色の長髪で眼鏡をかけており、偏屈魔導士とも言われている。長髪、眼鏡、偏屈と萌え要素が揃っている一人で三度美味しい男だ。

 そしてそんな彼を支える『健気受け』がミック・アップルガース、十九歳。昨年、学院を卒業したジュード付きの事務官である。ミステリアスな黒髪に茶色の瞳。偏屈で気まぐれなジュードに振り回されながらも、しっかりと彼のサポートをする優しくて真面目な可愛らしい男の子。そう、男の子という表現が似合うような男性。


 ――捨てがたい。


 胡坐をかいていたジーニアは、そのままパタリと後ろに倒れた。


 ジーニアの本命は『スパダリ攻め』と『誘い受け』の二人ではあるのだが、この第三のシナリオの『メガネ攻め』と『健気受け』の二人の絡みも見てみたい。見てみたいだけ。そう、二人が並んで立っているところを見るだけでもいい。とにかく、二人をセットで見たいのだ。

 シナリオの先は求めていない。

 だってこのシナリオ、進めていくとあんなことやこんなことが起こってしまうのだから。


 第三のシナリオでは、とにかくミックが一途で応援したくなるのだ。心の中で「イケイケー、たまにはジュードに嫉妬させろー」と、何度応援したことか。

 だけどそうは問屋が卸さないところがジュードという男。何よりも長髪、眼鏡、偏屈と三拍子揃った男。ミックを翻弄させるドSな男という、四拍子目もつけておこう。とにかく、見た目に違わずそういう男なのだ。

 そんなジュードと対照的で、とにかくミックがいい子過ぎる。ジュードがそのような態度をとるようになってしまった背景まで汲み取って、ジュードに尽くす。それすらもドSな反応で冷たくあしらうジュード。だが、ジュードが健気なミックの愛に気付く瞬間が訪れる。


 それは第三のシナリオが心臓に負担が大きすぎるという理由も関わっている内容。

 実はこの第三のシナリオ、最終的にクラレンスが亡くなってしまうという血も涙も無いような流れ。さらに、このクラレンスの死に関わっているのがジュード。


 ――うっ……。思い出しただけでも、胸が苦しい。


 胸を押さえこむようにしてダンゴムシのように身体を丸めたジーニアは、第三のシナリオの内容を必死で思い出す。

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