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結局スパダリと元腐女子ですか(7)

 無事、呪いが解けたジーニアであるが、正式にクラレンスの婚約者となっていた。

 つつがなく手続きは行われており、国王も王妃もジーニアを快く受け入れてくれた。むしろ、あのときのクラレンスを、身体を張って助けてくれた彼女に感謝の気持ちを示していた。

 そしてジーニアの父親が元第一騎士隊の隊長の彼であったと思い出せば、「納得、納得」と頷いているのだった。


 そうやってジーニアの周囲も少々騒がしくなっていたが、やっと落ち着き始めた頃。


 クラレンスのはからいでヘレナと会うことができた。クラレンスはただ単純にジーニアに喜んでもらいたいという気持ちがあっただけ。


「あぁ、ジーン」

 ジーニアの姿を見た途端、黒の騎士服に身を包んだヘレナがぎゅっと抱きついてきた。


「苦しいわ、ヘレナ」


「ジーンが無事で良かったわ。それに、今では立派にクラレンス様の婚約者様だし」


「もう。やめてよ」


 そんな二人を気にもとめず、ルイーズは黙って自分の仕事をこなしている。

 紅茶の香りが部屋に漂い始めたのを合図に、二人は並んでやっとソファに座った。ルイーズは立場をわきまえているため、控えの間に下がる。


「本当に、ジーンが生きてて。よかった……」

 むしろヘレナがヘレナをやり直しているのは、ジーニアを死なせないために、という理由だったはず。だから彼女は卒業後に騎士団入団を決めたのだ。


「あれ?」

 ジーニアは気づいた。

 結局、今進んでいるルートが第一から第三のどのシナリオとも異なっているのだ。

「もしかして、ヘレナのせい? ヘレナのせいなの?」


「何が?」


 ヘレナは両手でカップを包み込んで、のんびりと紅茶を嗜んでいた。


「今のこのルートよ。なんで、私がクラレンス様とくっついてるの? 本来であれば、このポジションはシリル様のものよね」


「やっぱり、あれよ。あれだからよ。究極のプレミアム裏ルート。あの六人が幸せになるルート」

 ヘレナはカップを置くと、ワッフルに手を出した。王宮料理人の自慢の一品である。それを食べ終えてから、言葉を続ける。


「そうそう。今日、ジーンに会いにきたのは、報告があったからです」


「なんの?」


「私、婚約しました。わぁ。パチパチパチパチ」

 ヘレナは自分で拍手をしている。


「うっそ。おめでとう。え? 誰と?」

 ジーニアは身体をヘレナの方に向け、恋する乙女のように胸の前で両手を組んだ。


「グレアム様です!」


 ヘレナが腰に手を当て、胸を張って答えている。


「え?」


「だから、グレアム様……」


「え、えぇええええ?! なんで、どうして? ジェレグレは消えたの? え、お兄さまは?」


「え? ジーン。聞いてないの?」


「何が?」


「ジェレミー様のことを……」


 ヘレナがジーニアを見る視線が「可哀そうな子」と言っている。

 ヘレナがきょろきょろと辺りを見回してから、右手を「こいこい」と振ったのでジーニアは顔をヘレナの方に近づけた。


「ジェレミー様ね。ルイーズとお付き合いしているのよ……」


 ヘレナが耳元で囁いた。だが、ジーニアは停止した。


「ちょ、ま。ジーン、大丈夫? え? あなた、息、息をしなさいよ」


「はっ。はぁ……。ごめん。なんか、情報量が多すぎて……。お兄さまの件は、何も聞いていない」


「うん。まだお付き合いの段階だからね。ジーンには恥ずかしくて言えないんじゃない? そのうち、きちんと紹介されるわよ」


「って、なんでヘレナは知っているのよ」


「騎士団では噂になってるから」


 どうやらジェレミーはジーニアを見舞うたびに、ルイーズから妹の様子を聞き出していたらしい。それがきっかけで――というのが、騎士団内に広まっている噂だ。いや、噂ではなく事実。


「で、私とグレアム様。ほら、第一のシナリオカップルは幸せになったでしょ? 第二も、クラレンス様とジーン」


「待って。シリル様がいらっしゃるじゃない。シリル様は?」

 ジーニアはクラレンスを奪ってしまったことで気になっていたのは、もちろん()()である。


「シリル様は、アマリエ様との婚約をすすめるそうよ」


「え、えぇええええ?! そっち? まさかのそっち?!」


 シリルの相手が兄から妹に変わったということか。


 ジーニアは両手で頭を抱え込んだ。

 あの六人中の四人の相手が決まっている。そこに巻き込まれてしまったのは不本意ではあるが。


「ちょ、ちょっと待って。まだジュード様とミックが残っているわ」


 考えを整理するかのように、静かにジーニアは言葉を吐き出した。


「そう。そうなのよ。それも聞いて、ジーン。ジュード様って既婚者だったのよ。ほら、本編ではそういったことに全然触れてなかったでしょう?」


 ――なんなの、その裏設定! そしてなんなの、ヘレナの情報網。どこから仕入れてきているの?


「どこからその情報を仕入れてきているの、という顔をしているわね」


 ヘレナは勝ち誇った笑みを浮かべ、二個目のワッフルに手を出した。


「これ、美味しいわね」


「あ、うん。そうなの。美味しいの。やはり王宮料理人というだけあって、お菓子も上手なのよ。ってそんなことは、どうでもいい。はやく、ジュード様とミックについて教えてよ」


 ジーニアの知らない世界で、彼らが動いている。その全てを知り尽くしているのが、隣にいるヘレナのような気がしてならなかった。

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