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それはメガネ攻めと健気受けですね(7)

 死の宣告をされてから五日が経った。ということは、残り五日。ジュードは毎朝、ジーニアの部屋を訪れる。そして顔色を確認し、矢がぷすっと刺さった箇所の傷口、いや、呪いの進行状況を確認してから、彼女に術をかけていく。呪いの症状を抑える術だ。

 だが、ジュードがやってくると、すぐにクラレンスもやってきて、なんともいたたまれない空気感が漂ってくる。この二人は仲が悪いのだろうか、とさえジーニアが思ってしまうほど。

 ジュードは、やるべきことを終えるとすぐさま部屋を出ていく。だが、このクラレンスが曲者だった。シリルが呼びに来るまで、ジーニアの部屋に居座っているという始末。本人が言うには、ここがシリルに邪魔をされずに唯一休める場所と口にするのだが、結局、最終的にはシリルに見つかってしまうため、その言葉の真偽は問い質したいところ。

 そして、死の宣告を受けているジーニアは、何をするわけでもなく部屋にいた。呪いが発動している状態で王城内をうろうろするな、というのがジュードの意見。そんな状態でうろうろしたら、他の魔導士たちが興味を持ってジーニアに群がってきてしまうから。それは人間的に魅力があって興味を持つのではなく、クラレンスを庇ったせいで変な呪いを受けてしまった女である、という興味。


 それでも、昼食後の時間、クラレンスが庭の散歩に誘い出してくれる。それが唯一のこの部屋から出る時間であり、手段である。恐らく、気が滅入らないように、という彼なりの心遣いのようだが、もう、ここまできてしまうとどうでもいい、というのがジーニアの本音でもある。つまり、投げやり。そもそも一回死んじゃってるしね、とさえ思えてきてしまうのが、投げやりの証拠。


「どうかしたのか?」

 ジーニアがぼんやりと庭園を歩いていると、クラレンスは辛そうに顔を歪めながらそう声をかけてくる。


「あ、いえ。どうもしません」


「そうか。このようなことしかできなくて、申し訳ないな」


「いえ。クラレンス様が気になさるようなことではございませんから」


 クラレンスが近くにいるからだろう。先ほどからちらちらと感じる視線は魔導士たちのものなのだが、ある一定の距離を保ったまま、それ以上ジーニアに近づこうとしないのは。


「それに。クラレンス様がいらっしゃらなかったら、私はあの部屋に閉じこもったままです。ジュード様がおっしゃっていたのですが、どうやら私、魔導士たちに狙われているようなんですよね」


 狙われている、という表現はいささか物騒であるが、間違いではないはず。


「狙われている、だと?」


「はい。皆さん、私の受けた呪いに興味津々と言いますか……」


「ああ、なるほどな。それは仕方ないな。それも含めて、申し訳ない」


 クラレンスは謝ってばかりだ。


「クラレンス様。何度も申し上げておりますが、もう謝るのはやめてください。なんか、それって私が可哀そうな女のように思えてならないのです。私、可愛そうではありませんから。自らの意思でクラレンス様をお守りすることができて、誇りに思っております」

 と、何度口にしたことだろうか。クラレンスが謝罪するたびに、そう言ってきたような気がするから、何度なのかもうわからない。


「そう、そうだな……すまな」

 と言いかけて、クラレンスはそこで口を噤んだ。恐らく、すまなかったと言いたかったのだろう。


「悪いがそろそろ時間だ。またあの口うるさいシリルが来たら、君と過ごしている穏やかな時間が全てぶち壊されてしまう」


 ――あれ? クラレンス様ってこういうキャラだったのかしら? もっとこう、シリル様とラブラブというか。そんな感じを期待していたのだけれど。


 先ほどからクラレンスの口から出てくるのは、シリルを疎ましく思っているような言葉ばかり。


 ――私としては、クラレンス様とシリル様の絡みを見ることができるだけで、もう充分なのだけれど。


 クラレンスに連れられて部屋に戻る途中、シリルに見つかってしまった。


「クラレンス様。早く執務にお戻りください」


「なんだ。食後の散歩も満足に楽しむこともできないのか」


「ジュード様が研究室にこもりっぱなしで、ジュード様の分の執務もたまっているのです。それをミック殿経由でジュード様に確認していただいたところ、全てクラレンス様の判断にお任せする、という回答をいただきました」


「あのヤロー」


 関係のないジーニアが聞いても、ジュードがクラレンスに仕事を丸投げしたということはわかる。


「ジーニア嬢はお部屋の方にお戻りください。僕が部屋までご案内いたします」


「余計なことをするな、シリル。ジーニア嬢のことは私がきちんと部屋まで送り届ける。ただでさえ、魔導士たちの興味の対象になっているんだ。お前ごときがあれの対処ができるとは思えない」


「でしたら、ジーニア嬢を外に出さずに、部屋に閉じ込めておけばよろしいのでは?」


「お前。言い方に気をつけろ」


「失礼しました」


 ――これよ、これこれ。私が見たかったのはこれ。


 と思っているジーニアであるが、その喜びを顔に出すようなことはしない。そんな流れから、クラシリという夢のエスコートによって部屋へと戻ってきたジーニア。余命、あと五日。多分。

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