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それはワンコ系攻めとツンデレ受けですね(3)

 ――え、どっちが攻め? どっちもイケる?

 この状況においてジーニアの頭は混乱してきた。

 ――いやいやいや、ここは王道にワンコ系攻めとツンデレ受けなの。って、ツンデレはどうしているのかしら?


「わかった。私もその報告を聞きたいのだが」


「もちろんです、殿下。首謀者はあの大臣であることがわかっているのですが、恐らく彼すら知らない何かが潜んでいる様子。報告書は後日殿下に」


「いや、私も同席させてくれ」


 その提案にぎょっと目を見開くジーニア。このスパダリ攻めは何を言っているのか。


「殿下。申し訳ありませんが、それはできません。騎士団として話を聞くからです。騎士団に所属していない殿下が同席なされば、この件を内密に進めることができなくなってしまう。騎士団として動いておりますが、それすら最低限、最小限の関係者で動いているのですよ。この件はあまり公にできない案件ですよね」

 何しろこの国の重鎮が関わっていて、仮にそいつが首謀者だとしたら。


「ちっ、仕方ない。報告書で我慢してやる。だが、私が個人的にジーニア嬢から話を聞くというのであれば、問題は無いな?」


「そうですね。あの事件の事情聴取ではなく、個人的な話であれば問題ありません。ですが、捜査に影響が出るような行動は慎んでくださいね。こう見えてもこの妹、意外と繊細なのですから」

 うんうん、とジェレミーの言葉に同調してジーニアは首を縦に振る。つまりそれは、余計なことは聞かないで、という意思表示なのだが、それがこのクラレンスに伝わったかどうかはわからない。


「じゃ、ジーン。俺は騎士団の方に戻る。恐らく、数日以内にあの件について話を聞きにくると思うが。まあ、そんなに身構えないで覚えていることをただ話してくれるだけでいいから」


「お兄さまが担当されるのですか?」


「恐らく。まあ、身内ということもあるが、お前に尋問するわけじゃないからな。とにかく覚えていることを話してくれるだけでいい。他にも誰か人が来るかもしれないけど、本当に構える必要はないんだ」

 そこでジェレミーは腰を浮かした。

「とりあえず今はまだ、ゆっくり休んでおけよ」

 ジーニアの頭をくしゃりと撫でたジェレミーは部屋を出て行った。久しぶりに兄と会って言葉を交わしたことで、ジーニアもいつもの自分を取り戻したような、そんな感覚だった。

 部屋を出ていくジェレミーの背中を見送ったクラレンスが口を開く。


「君たちは、仲が良いのだな」


 ――そうだった、この人がいた。


 クラレンスの言葉で我に返ったジーニアはにっこりと微笑んだ。

「はい、たった一人の兄ですから」


「そうか」

 と呟くクラレンスはどことなく寂しそうにも見える。


「クラレンス様にもアマリエ様がいらっしゃいますよね」


「ああ、だが。君たちのように言葉を交わすことは無いな。むしろ、アマリエは私のことを毛嫌いしているようだ」


 ――何なの、その裏設定は。聞いてないから。


「そう、なのですか……。ですが、たった二人の兄妹。アマリエ様も心のどこかではクラレンス様のことを慕っているはずです」

 と、気休めにしかならないような言葉をジーニアは口にした。


 ――もしかして私、アマリエ様の侍女にならなくて良かったんじゃないかしら……。

 とさえ思えてくる。


「君は、人の心を穏やかにさせる天才だな」

 口元を綻ばせたクラレンスに、ジーニアはドキリとした。これはシリルでなくても惚れてしまうかもしれない。かっと、頬に熱を帯びていくことに気付いたジーニアはそれでも平静を装うとする。


「クラレンス様こそ、もったいなきお言葉、ありがとうございます」

 軽く頭を下げた際に、クラレンスの手がその頭に触れた。それは先ほど、ジェレミーが撫でたように。


「く、クラレンス様。一体、何をなさっているのですか?」


「ふむ、ジェレミーのように君を撫でてみたら、兄の気持ちがわかるかと思ったのだが。これをアマリエにやったら、殺されそうだなと思った」

 そこで自虐的に笑う。


「ですが、撫でられる側の気持ちもわかれば、自然と手も伸びますよ? 昔は兄とよく、こうやって頭を撫で合っていたのです」

 懐かしいなと思いながら、ジーニアはクラレンスの頭に手を伸ばす。

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