猫にも願いを
冬童話2022。
猫と人の温かい物語。
あなたも物語に入ってみませんか?
「ニャーン。」
あまりにも静寂な夜に一匹の黒猫が泣いた。
静かに。静かに。何かを希求して、ゆっくりとひっそりと誰にも知られず泣いていた。
私は一匹オオカミならぬ一匹ネコだ。
ニンゲンは私を見たらこう言う。
「すごくない?あの猫。」
「ほんとだ。やばっw」
私のことを言っているのだろう。人語を理解も話せも、もちろん書けもできない。
しかしなんとなく、あの表情からわかる。・・・きっと、悪いことだ。
人間だけじゃない。私の周りのネコも私には近づかない。何かしただろうか?
・・・寂しいな。
寒く震えている体を整え、湿って余計に冷たく感じるコンクリートの上で今日も寝っ転がった。
そして言い訳のように自分に言い聞かせる。
私は強い。強い。強い・・・。ずっと唱え続ける。
ふと、上を見てみると小さな光る粒があった。きれいだな。そう思いながら一つ、心から願った。
「私を愛してくれる人が迎えに来てくれますように」
ぽつりと落ちてしまったその願いは、なんとなく光った気がした。
私はいつもと違う、その景色に胸をざわめかせていた。
寝れなくなって、寝なくていいかと思いながら目だけを閉じる。
そしていつの間にか目を閉じていた。
朝、固く冷たいいつものコンクリートではない感じがして、早く目を覚ました。
いつもは太陽が上のほうにあるのに今日は横にある。
床が安定しないもふもふだったので、転ばないようにゆっくり立ち上がった。
「おっ、起きたか?猫ちゃん?」
どこからともなく急に低い声が聞こえ体を震わせ、尻尾を体に巻き付けた。
しかし、その声はなぜか安定する声で安心した。
いやいや、人間に嫌われているから・・・。だからこの人間も僕をいじめるつもりだ。
声の主と思われるニンゲンが現れた。
短髪で黒色の毛並み。優しそうな目。安心する声。そして、穏やかな笑顔。
私はその姿に安心してしまい、警戒していた体も緊張を解いた。
「よかった。警戒されてないようだ。猫ちゃん?君は飼い猫かい?っていってもわからないか。」
優しそうなニンゲンはなぜかご機嫌そうに私の頭をなでながら言った。次に首を触ってきた。
私が嫌いではないのか?もしかして、この人は私を愛してくれる人か?
私は嫌われないようにしないとと思い、とにかく鳴いた。
精一杯。とにかくかまってもらえるように。どこかに行かないように。
おいていかれないように。ひたすらに鳴いた。そして泣いていた。
私の目から大粒の涙が流れていることに気付いたニンゲンはオロオロし始めた。
ああ、このニンゲンは私のために心配してくれているんだ。
そう気づいた私はニンゲンの腕をつかんでさらに大泣きした。
「飼い猫じゃない。・・・大丈夫だよ。どこにもいかないよ。」
ニンゲンはその言葉を繰り返し、私をずっと撫でてくれた。
ありがとう。ありがとう。私もこの言葉を繰り返した。そして泣き疲れ、私は目を閉じた。
もう一度起きた時辺りはすっかり暗かった。
ニンゲンは私が心配しないようにか、ずっと私を抱えていたようだった。
ゆさゆさと動くたびに安心した。
「ニャーン」
「あっ、やっと起きたな。」
ニンゲンは私をからかうように優しく笑った。
なので手の甲に優しくぺちっとしてやった。ニンゲンは楽しいそうに笑った。
そして、何かを思い出したように言葉を発し続けた。
「君は俺と暮らすつもりはあるかい?あるなら名前を付けようと思うのだが・・・?」
私はよく意味が分からなかったが、一緒にいてくれることだと直感が感じ「にゃん!」と明るく答えた。
「おお!そうかそうか!ったく、かわいいな!!」
ニンゲンは私を撫でまわし言った。
「猫ちゃん。君に2択だそう!〈メラ〉と〈琥珀〉どちらがいい?ちなみにメラはμαύρος《メラン》、ギリシャ語で黒っていう意味だ。琥珀は君の眼の色、綺麗な黄色を取って考えた。まぁ、言ってもわからないかw。」
ニンゲンはにこっと笑い、もう一回聞いてきた。何だろう?と思うが、言いやすい方を言うつもりで鳴いた。
人間は「えっ?」と耳に手を当てるジェスチャーをしてきた。とりあえず、もう一度「にゃん。」メラと私は言ったつもりで鳴いた。
するとニンゲンは「そうか!メラか!俺もそっちがおすすめだったんだ!よろしくなメラ!」と言ってきた。
何かわからないけど楽しい!最初のころのような寂しさが埋まっていく、心が幸せでいっぱいになっていく。
もう、一人じゃないんだ。・・・やっぱり寂しかったんだ。
私は自分の過去の気持ちに向き合って、前を向いた。
「メラ―。ご飯だよー。」
「ニャーン」
私がメラと名付けられて一か月がたった。主はハギ メグルっていうらしい。
メグルはずっと一緒にいてくれるっていってたくれたから、すっかり私もほだされている。
ネックレスという首輪をもらった。それには綺麗な水色の小さなキラキラがついていた。
メグルはこれをラピスラズリと言っていた。なんでもメグルの誕生石なんだそうだ
メグルは私を嫌わないって言ってくれた。
私たちは死ぬまでずっと一緒なんだ。
――これがメグルとの最後の時間になるかもしれないのに私は完全に浮かれていた。
次の日メグルは家の中、どこにもいなかった。
私が一生懸命。何度も何度も鳴いても。そばにいてくれなかった。
「メグル・・・。どこに行ったの?」
私はまた独りぼっちになってしまった。
首輪を大切になで、歩き出した。そして、もともとの住処にある固く冷たいコンクリートの上で寝た。
私のもともと空いていた心の中はさらに広がって空いてしまったようだった。
幸せな日々がゆっくりと私の中で思い出しては消えていく。
そのうちメグルとの思い出が完全に消えてしまうのではないか。そんな心配ばかりして昨日を思いだせるように、なにもしないようにしていく。
ある日、出会う前と同じような満天の空を見た。
メグルは言ってた。流れ星があって、もうふたご座流星群の時期だって。
流れ星は流れている間に3回お願いをすると叶うって。そういってた。
今日もしかしたらリュウセイグンの日かもしれないと思い、私はずっと空を見ていた。
街の明かりが完全に消えてきたころ、星がもっとはっきりと見えた。
そして、光るものが流れるのを何個もみつけた。
急いで私はお願いをした。
メグルに会えますように、メグルに会えますように、メグルに会えますように・・・
3回以上、何度も何度も、流れ星が流れている間ずっとお願いをしていた。
お願いをしていたらいつの間にか寝てしまっていたようだった。
・・・何も変わっていないであろう今日も何もしないでいよう。
そう思ったときに声がかかった。
「ごめんな。ごめんな・・・」
急に聞こえた知っている声。
すすり泣いているので少し声が違うように聞こえるが、私にはわかる。
―メグルだ。
「メグル!メグル!」
私はメグルに飛びつき、また大粒の涙を流した。
それはメグルも一緒で、「ごめんな・・・」と繰り返し、二人で泣いていた。
二人で落ち着いた後メグルは「病院に行ってた。」といった。
そして、私がけがをしていなくてよかったとも言っていた。
星は綺麗で、どこにいても必ずある。私たちをつないでくれる。
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