歌姫となるまで
シャーロットは小さな女の子です。家は裕福でなく貧しいのですが、優しい両親に可愛がられ幸福に暮らしています。
小さな体で色々な曲を歌う小さな女の子、それがシャーロットです。彼女の歌声は特別です。シャーロット自身も歌うことで幸福ですが、清廉な彼女の歌声は聞く人々の心を洗い、幸福にするものとなっています。
シャーロットの歌声は、彼女が人前で歌うごとに少しずつ少しずつ周りの世界に広まっていきました。そんなある日、彼女の元にこのような手紙が届きます。
(戦地へ向かう私の息子のために歌って欲しい)
手紙にはその内容と差出人の住所が書かれていました。この手紙を受け取ったシャーロットは、もう小さな女の子ではありません。大人の女性になりかけていました。そして彼女は戦地へ向かう息子さんとそのご両親のために、できるだけの心を込めて歌うことを決めたのです。
「どうしても君に会って歌声を聴きたかったんだ。来てくれてありがとう」
「いいのよ。今日はあなたのために歌うわ」
貧しいながら、その中で真っ直ぐ育った彼女とその歌声は清廉さがさらなるものになり、ご両親と戦地に向かう息子の心を深く優しく癒やしました。ご両親は涙を流していますが、息子の方は覚悟を決めてシャーロットの歌声のように清らかな顔をしています。
「迷っていたけど戦う理由ができた。国と君の歌声を守るために戦おう」
「それはいいの。あなた自身を守って。生きて帰ってきて」
激しい戦地に向かう青年はシャーロットの手にキスをしました。その数日後、彼は出征しました。不毛な戦争でしたが、激しい戦地から青年が生きて戻ることはありませんでした。彼はシャーロットとの約束を守れなかったのです。
その代わりになりますが、遺骨になった彼はシャーロットに宛てた一通の手紙を自分の骨と共に彼の両親へ届けています。
(約束を守れなくてごめん。頼みばかりで申し訳ないが聞いて欲しい。平和の歌姫として、ずっと歌い続けてくれないか?)
青年のご両親からその手紙を受け取り読んだシャーロットは彼のことを思い泣き続けます。3日泣き続けた後、戦地で命を失った彼が望む、平和の歌姫になる決心をしました。
それから5年が経ちました。アメリカのブロードウェイで世界中に清廉な歌声を届かせ訴えかける、シャーロットの姿があります。彼女は平和の歌姫となり、世界中の様々な争いを治める戦いを生涯をかけて続けています。