10.帰還
「シャーロット様…!」
「大丈夫だ。眠っているだけだ」
慌てたジャスミンに、スティーヴンが落ち着いた声で言う。ジャスミンはほっと息を吐き、その場に崩れ落ちた。
「ジャスミン殿」
オスカーが落ち着かせるように、肩に手を置いた。
「魔女に会ったって…どうして…?まさか狙われているの?魔女に狙われて、攫われたの…?あぁ、シャーロット様…」
顔を覆って、震えるジャスミンに、ロゼッタが言う。
「可能性はあります。攫ったのは間違いなく、魔女ですから」
「なんで…!なんでいつもロティーばっかり!」
ジャスミンが取り乱す。遂には涙やで流す彼女を、ロゼッタが抱きしめた。
「大丈夫です。攫われても、必ず助けに行きます。今度は攫われないように、魔王様が魔法をかけてくださいます。だから、どうか泣かないでください」
「…はい」
ジャスミンは涙を拭って立ち上がる。スティーヴンの腕の中で眠る彼女に近づき、髪に触れる。
「何故、シャーロット様ばかりがこんな苦労を負わなければならないのでしょう。私が代われたらどんなに良いか」
「…俺も、そう思う」
ジャスミンは瞳を潤ませ、スティーヴンに跪く。
「どうか、どうかシャーロット様を、世界で一番幸せなお姫様にしてくださいませ」
スティーヴンは一つゆっくりと瞬きをすると、ジャスミンの髪に触れた。
「それは君もだ。ジャスミン殿。君も世界で一番幸せにならないといけない。シャーロットと共に」
虚を突かれた顔を上げて、ジャスミンは瞬く。
「私も…です、か?」
「嗚呼。君は、シャーロットの一番の侍女で、一番の護衛で、一番の友で、一番の家族だ。だから、君も、君の幸せを考えるんだ。いいな」
スティーヴンに初めて叱られたことに驚きながら、ジャスミンは頷いた。
ーー家族。
そうだ。私たちは、誰にも代えられない家族だ。友であり、家族なのだ。
「わかったら、休むといい。心配のしすぎて疲れただろう」
「…今日だけは、シャーロット様のそばに居させてください」
「嗚呼。わかった」
スティーヴンは丁寧にシャーロットを寝床に置き、何やら呟いて、禍々しい結界を張った。薔薇の棘のようなものがシャーロットの身体に絡まり、一瞬で消える。
「魔女が嫌う結界だ。これで暫く寄りつかないだろう」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げたジャスミンに、スティーヴンは言う。
「この結界はなれるまで熱が出るかもしれない。ジャスミン殿、君に頼む」
「はい」
「俺は魔女の居場所を探ってみる。オスカー、ロゼッタ、いいな」
「御意」
スティーヴンはシャーロットに丁寧に布団をかけ、額にキスをした。次は黒い影のような紋様が額につき、消える。
「これも魔女から隠す魔法だ。安心するといい」
「ありがとうございます」
ジャスミンだけが部屋に残り、三人は部屋を後にした。




