6.夜の召喚儀式
夜になり、風呂上がりにスティーヴン達は帰ってきた。話によると、まだドラゴンを攫ったであろう人物に目星がつかないという。
「では、始めようか」
「はい」
地下へと向かう。小さな琥珀石からドラゴンに戻すことになっている。小さな琥珀石を手に取り、魔法陣を紙に書く。さらさらと書いていると、スティーヴンが紙を覗き込んできた。
「俺には無理だな、こんな細かい魔法陣なんて描けん」
「慣れてしまえば簡単ですよ」
「すごいな、ロティーは。なんでもこなしてしまう」
「とんでもございません。苦手なことはたくさんあります」
「そうなのか?」
「ええ。料理なんて炭にしてしまいますもの」
「炭か」
スティーヴンが軽く笑った。優しい笑みだ。
「で、ここからどうするんだ?」
「呪文を唱えます」
大きく息を吐いて、覚悟を決める。
「汝の者も許すべからず、この呪文により輝きとなれ。アンバー・チェンジ・ザドラゴン」
ぽそりと呟くと、魔法陣が輝き出した。眩しさに目を細める。次の瞬間、ドラゴンが孵った。
「成功しましたね」
照れ臭さで早口で言えば、スティーヴンが近づいてくる。
「俺の方が魔力がある。その呪文を唱えればいいのだな?魔法陣を描いてくれ」
「は、はい」
興味深そうに顎を撫でるスティーヴンを横目で見ながら、魔法陣をまた描く。それを渡すと、スティーヴンが琥珀石を魔法陣に乗せ、呪文を唱えた。するとーー何も起きない。
「あら?」
「む」
腕を組んでスティーヴンが眉を顰める。
「何故かしら。魔法陣が間違ってーー」
「ロティー、もしかして君は、この分野に長けているのではないか?」
「え?」
「左の太腿を見せてくれ」
「え!?」
「その刻印が関係してる気がしてならない」
「で、ですが」
恥ずかしい。スカートを捲り上げろというのか。
「ロティー、頼む」
「…はい…」
真剣なスティーヴンに負け、スカートを捲し上げる。刻印を見せたことは一度もない。醜い部分を見られるのは嫌だが、スティーヴンは醜いなんて思わないと信じられたからできた行動だ。
「これが……。ふむ、そうか」
「なにかわかりましたか?」
「とても強い魔力を感じる。このまま、もう一体召喚してみようか」
「わ、わかりましたわ。きゃっ」
スティーヴンにお姫様抱っこの形で座らされ、スカートを捲し上げられる。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
パンツは見られてないもの…!大丈夫!
そう思いながら、魔法陣を描き、琥珀石を乗せる。呪文を唱えた途端、部屋が光り輝く。眩しくて目を細め、治ったらスティーヴンを見る。ドラゴンは孵った。ガウガウとさっきのドラゴンと戯れあっている。
「何かわかりましたか?」
「嗚呼。呪文を唱えたあと、ロティーの刻印も反応した」
「え」
「痛みはないか?」
するりと刻印を撫でられ、ぴくりと体が反応する。慌てて誤魔化すようにスティーヴンから降りる。赤面しつつ、大丈夫だと伝えると、スティーヴンがまた眉を顰める。
「もしかしたら、ロティーは召喚術を使える稀な体質なのかもしれんな。その刻印が反応し、応えている」
「稀、ですか」
ふらりと、足元がぐらついた。スティーヴンが当たり前のように受け止めて、また抱き抱える。
「疲れただろう。そのまま眠ってもいい」
「大丈夫ですわ。少し疲れただけで」
「強がらなくていい。すまない、一体と言ったのに、二体召喚させてしまった」
「いえ、合理的判断かと」
「助かる」
スティーヴンに抱き抱えられたまま、部屋へと運ばれる。階段を登っている途中で、シャーロットの意識は途切れた。




