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18.アイナ

一週間程して、漸くシャーロットはいつも通り元気になった。辺境伯のホクはというと、重い刑罰を受け、幽閉されたそうだ。街に蔓延っていた麻薬も回収し、今は売られた女子供を探しているらしい。カイは大忙しらしく、一度も顔を出しにこなかった。アイナはというと、合わせる顔がないといい、会いにきてくれない。

ーーというわけで、アモ城へと足を運ぶことにした。

この国を出る前に、アイナに会っておきたい。この国を愛する王女の傷を、少しでも癒したい。そんな思いでアモ城へ向かった。

「スティーヴン様、よろしかったのですか?一緒に来ていただいて…」

「当たり前だろう」

スティーヴンの過保護化が進んでいるような気がするのは気のせいだろうか。苦笑いをしながらも、馬車から降りる。

「お待ちしておりました、スティーヴン王子、シャーロット嬢」

迎え入れたのは第一王子のマオだった。淑女の礼をして挨拶をすると、客間へ通された。相変わらず金ピカな様相に目が眩しい。

「アイナ姫君は部屋に篭って出てこないのです。この度は足を運んでくださりありがとうございます」

「いいえ。アイナ様のお心が心配ですわ」

この度の事件で酷く傷ついているだろう。アイナの気持ちを慮って、胸を痛める。

「お部屋はこちらです」

案内された部屋の前に立ち、扉をノックする。

「アイナ、わたくしよ。シャーロットよ」

「シャーロット!?」

扉の向こうからドタバタと音がした後、扉が勢いよく開いた。アイナは栗色の髪はぼさぼさで、顔色が悪い。

「アイナ!会いたかったわ!」

髪を手櫛で梳き整えてやると、アイナは立ち待ちに瞳に涙を浮かべる。そしてぽろぽろとそれを溢し、その場にへたり込んでしまった。

「アイナ、どうしたの」

「…ごめんなさい、シャーロット。私の国で、こんなこと…っ」

「アイナのせいじゃないわ」

「でも…!この国、嫌いになったでしょう?」

ほろほろと泣くアイナの涙を拭い取り、首を横にする。

「いいえ。大好きよ。アイナがいるこの国のことが大好きだわ。美味しいものも可愛いものも沢山あるもの」

「シャーロット…」

「わたくしは今回、あなた方の役に少しは立てたかしら」

微笑んで言うと、アイナはぶんぶんと頭を振る。

「麻薬の密売が絶えなかったの!でもシャーロットのおかげで殆ど回収されたわ!これで国の治安もよくなるわ!」

「よかった」

「本当にありがとう…!」

アイナに抱きつかれた。腕の中で泣く彼女は、優しい心の持ち主だ。

「わたくし、もうこの国を出るの。だから最後にアイナに会っておきたくって」

「そうだったの」

涙を拭って、アイナが立ち上がる。

「じゃあ手土産に…」

そう言って部屋の奥へ行き、何やらゴソゴソした後、一つ服を手にして帰ってきた。

「これ、よく似合っていたからプレゼントするわ」

「え!いいの!?」

「勿論!」

夜会で男性が主に着る礼装を手渡され、慄く。こんな丁寧に作られたものを貰っていいのだろうか。

「これにはね、この国の貝殻や伝統の波模様が刺繍されているの。よかったら貰って頂戴」

「ありがとう、アイナ」

「こちらこそ、貰ってくれてありがとう」

そう言って、漸く笑みを見せてくれた。

「また来るわね。美味しいピザも食べたいし」

「またお茶しましょうね!約束よ!」

「ええ」

頷きあって、手を離す。別れを惜しみながらも、その場を後にした。

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