12.お出かけ(前編)
アイナの用意した馬車は派手だった。お伽話に出てくるお姫様が乗るような馬車に乗せられ、ジャスミンと目を瞬く。中も豪勢で、絹のクッションや小さなシャンデリアまで備え付けられている。小さな小部屋に通されたかのようだ。また騎士団もついてきており、仰々しいその馬車の列に、民も困惑しているようだった。小窓を開け、アイナが民に手を振ると、歓声が沸いた。さすがは第一王女にしてカイ殿下の姫君だ。
「これだけ目立っていたら大変じゃない?」
「大丈夫よ。護衛はたくさんつけておりますし、これだけ派手に目立てば手出しをしてくる輩はいないでしょう」
(まぁ、確かに…。)
内心納得しながら、窓の外を見る。湖の上に建つ建物たちは色とりどりで鮮やかだ。露店もたくさんあり、いい匂いが漂ってくる。
「おすすめのお店がありますの。楽しみにしていて頂戴」
「えぇ」
頷いて景色を眺める。絶景だ。潮の香りが頬を掠める。海が近いようだ。暫くして、馬車が止まった。
アイナに続き馬車を降りると、そこには未だかつて見たことのない世界が広がっていた。賑わう城下町とはまた違った、広大な自然と並ぶ屋台。潮の香りと微かに揺れる地面。まるで船の上にいるようだ。
「こっちこっち!」
手招きされ、1番奥の店へと入る。そこは広々としていて、天井も高い。厨房から現れた男性は驚いたような顔をして、すぐに綺麗なお辞儀をした。
「いらっしゃいませ、アイナ妃殿下」
「今日は友人を連れてきたの。とっておきの釜焼きピザをお願いね」
「かしこまりました」
アイナは二階へと歩みを進める。それにシャーロットとジャスミンも続く。騎士団達もついてきているが、大丈夫なのだろうか。そう心配していたが二階は誰もおらず、こぢんまりとしたスペースが広がっていた。
「どうぞ、お座りになって」
「ええ」
勧められたソファーに腰掛けると、それはふわりと体を包み込むような上質なものだった。アイナの御用達の店というだけあって混んでいるが、二階席には誰も来ない。
「ここは私専用の席なの」
「まぁ」
不思議に思っていることを察したらしく、誇らしげにアイナが言う。
「窓からの景色は絶景でしょう?」
「ええ、とても綺麗」
湖の水面が反射してキラキラと光っている。
「ここのピザがね、とっても美味しいの!ロブスターが乗っていて、カニも乗っていて、魚介の贅沢ピザよ〜!私の好物ですの!」
興奮気味なアイナが可愛らしく、笑うとアイナも嬉しそうに笑う。
「シャーロットが元気そうでよかったわ!」
「ありがとう。もうすっかり元気よ」
そう答えた時、先ほどの男性がピザを片手にやってきた。
「いつものやつ、お持ちしましたよ」
「やった〜!さっ、食べましょう」
八等分に切られたピザを取り、アイナがかぶりつく。チーズが伸びて美味しそうだ。
あいなに勧められるがまま、ピザに手を伸ばす。チーズが伸びてなかなか切れない。手こずっているとジャスミンがナイフとフォークで切ってくれた。
「ありがとう」
ジャスミンに礼を言い、ピザにかぶりつく。
「ん〜!」
ロブスターは噛みごたえがあって、蟹はぷりぷり。口の中で海の幸が広がり、まろやかなチーズがさらに美味しさを引き立てている。
「とっても美味しいわ!」
「そうでしょう?腹ごしらえした後は、アクセサリーショップへ行きましょう。珊瑚礁や真珠のアクセサリーがありますのよ」
「素敵…!」
水の都ならではの品に目が眩む。何かスティーヴンに贈り物をしようと考えながら、ピザを完食した。
「ジャジーも食べればよかったのに」
「ここは外ですからね」
「買って帰ろうかしら。とっても美味しかったのよ。貴女にも食べてもらいたいわ」
厨房にいる男に声をかけると、持ち帰りは可能だった。護衛にそれを渡し、馬車に置いてきてもらう。その間に、アイナとアクセサリーショップへと向かった。




