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4.第二王子 カイ

「魔王様、客人です」

「誰だ」

「カイ殿下です」

「客間に通せ」

ロゼッタの言葉にスティーヴンが指示する。皆で朝食を取り、出発まで各々休憩をしていた時だった。ジャスミンが選んだ薄紫色のワンピースを身に纏い、スティーヴンの元へ向かう。

「部屋にいた方がよろしいでしょうか」

「いい。シャーロット、君も来い」

「は、はい」

驚きつつも、スティーヴンの後を追う。カイとは確か、この国の第二王子だったか。そう思考を巡らせていると、客間についた。重々しい扉を開くと、そこには茶色い短髪の青年が立っていた。

「スティーヴン王子、お久しぶりです」

「変わり無い様だな」

話ぶりから、仲は良いらしい。カイは、かっぷくたる美丈夫な彼の肌は、太陽に照らされる時間が長いのか、焼けていた。健康的なその見た目に目を奪われていると、目が合った。

「そちらの方は」

「俺の妃になる」

「スティーヴン王子の!これはこれは!初めてお目にかかります。クーンメイン王国第二王子のカイと申します。どうぞよろしく」

「シャーロット・フローリーです。ご挨拶ありがとうございます」

淑女の礼をして見せると、カイは手を胸にあてがい、綺麗に背を折って礼を返した。

「何の用だ?」

不躾なスティーヴンの言葉に、彼は全く動じない。にこやかな笑みを浮かべて言う。

「この国にいらしたと耳に挟みましたので、よかったらご観光をと思いまして」

「いらん。この国は散々見て回った」

「シャーロット嬢はまだですよね?」

にやりと笑い、カイがこちらを見る。

「俺の婚約者にも是非会って行かれてほしい。名物の果物や珍しい薬草もある。案内するが如何かな、お嬢様」

もちろん、断る理由などない。

「是非、喜んで!」

スティーヴンの許可を得ずに返答してしまった。気づいてスティーヴンを見ると、少し苦い顔をしつつも、口は挟んでこない。良いものと解釈して、心を弾ませる。クーンメイン王国は初めてだ。様々なもの見て、食べてみたい。欲を隠さず浮き足立っていると、スティーヴンが咳払いをした。

「で、これからどこへ向かう」

「まずは我が王国の城へとご案内致しましょう」

カイはにっこりと笑い、答えた。




シャーロット、スティーヴン、オスカー、ロゼッタ、ジャスミンの一同は、カイが用意した馬車に乗り込む。オスカーとロゼッタ、そしてジャスミンは別の馬車に乗ったが、行き先は同じだ。スティーヴンとシャーロットが並び、カイが向き合う形で座る。袖から筋肉質な腕が露出していて、普段から鍛えていることが窺い知れた。

「で、スティーヴン王子、シャーロット嬢とはどこで?」

「さぁな」

「教えてくださいよ、俺らの仲でしょう?」

「仲良くした覚えはない」

きっぱりと断るスティーブンに変わって、言葉を紡ぐ。

「カイ殿下とスティーヴン様は仲がよろしいのですね」

「ええ。二人で呑みに行く仲ですよ」

「お酒を嗜まれるのですね」

「この国で酒を飲まないのは子供くらいさ!」

「果実酒が名産ですものね」

うんうん、とカイが頷く。

「歴史も古く、何百年も前から存在しているのですよ」

「すごいですね。是非おすすめのお店を教えていただけますか?」

「勿論です!」

カイと意気投合し話し込んでいる間に、城へ到着した。馬車から降りる時、先に降りたスティーヴンが手を差し伸べる。その手を取り段を降りると、スティーヴンが面白くなさそうな顔で言う。

「あまり他の男と仲良くするな」

(これは…!嫉妬だわ!)

珍しい反応に目を丸くし、スティーヴンの顔をまじまじと見る。

「何だ」

「いいえ」

つい微笑んでしまう。嫉妬されるのは、悪い気分ではない。

「何を笑っている」

「だって、スティーヴン様が嫉妬なさるものだから」

揶揄うつもりで言えば、スティーヴンは平然と掴んだ手を口元に近づける。そしてリップ音を立てて唇を離す。

「当たり前だろう。俺はロティーの婚約者なのだから」

小っ恥ずかしい台詞に顔が熱くなる。ふいと顔を逸らして、後悔した。スティーヴンを揶揄うなど百年早い。

「あの〜お二人さん、ついてきてくださいね?」

「はい!」

カイの言葉に肩が跳ねる。早い胸の音を自覚しながらも、スティーヴンと手を取りあい、高々と聳え立つクーンメイン王国の城、アモ城へと足を踏み入れた。




城の中はそれまた豪勢な飾りや装飾品が並べられ、天まで届きそうな程高い天井には、豪華なシャンデリアが吊るされていた。煌びやかなそのつくりに、目がチカチカする。

通された客間に腰掛けると、すぐに扉が叩かれた。

カイが扉を開くと、可愛らしい小柄な女性が現れた。髪の長さは肩までで、栗色の髪がふわふわと風に舞っている。自分よりも小さいその女性は、こちらに目をやり淑女の礼をして見せた。

「彼女はアイナ。俺の婚約者です」

「初めまして」

「初めまして、シャーロット・フローリーと申します」

淑女の礼を返し、改めてアイナを見ると、にこりと可愛らしい笑みを浮かべた。

「よかったら、私のことはアイナとお呼びになって」

「では、わたくしのこともシャーロットとお呼びください」

「ええ。そうさせてもらうわね」

嬉しそうに笑みを浮かべ、アイナがカイを見る。

「シャーロットに城を案内してもいいかしら」

「嗚呼。シャーロット嬢、アイナは友達を欲しがっていてね。仲良くしてもらえると嬉しい」

「ええ、勿論です」

女友達のいないシャーロットにとって、思ってもみない出会いと提案だ。喜んで承諾すると、アイナが愛嬌のある笑みで近寄り、手を取った。

「果樹園を案内するわね!季節のフルーツも用意させるわ!少しお茶しましょう!」

「はい、喜んで」

「私はまだ話があるから行っておいで。いいかな、スティーヴン王子」

「嗚呼」

その返答の直後、アイナが嬉しそうにその場で跳ねる。幼い子供の様に喜ぶわ姿が可愛らしい。

「では、参りましょう」

手を引かれたまま、その場を後にした。

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