2.ジャンキーな食べ物
城下町へ到着した。馬車を止め、下りるとそこには以前訪れた時の何ら変わりのない街並みが広がっていた。昼時だからか、人の数が多い。ジャスミンからローブを受け取り、フードをかぶると、スティーヴンも留学生の姿になった。何かと目立つ様相をしている同士、苦労が絶えないなと感想を抱く。
「シャーロット、行こうか」
「はい」
差し出された手に手を乗せ、それをきゅっと握られる。導かれるように歩いていると、スティーヴンが大きめな声で尋ねてきた。
「食べたいものはあるか?」
考えを巡らせ、屋台を見て歩く。どれもこれも美味しそうだが、ふと以前出かけた時のことを思い出した。
「ジャンキー?な食べ物を食べてみたいです」
ジャンキーな食べ物とは一体どのようなものなのか、興味がある。以前はスティーヴンが手料理を振る舞ってくれた為、城下町では食事をしなかった。今回の機会に、食べてみるのもいいだろう。
「ジャンキーな食べ物か。それならここだな」
スティーヴンは数歩歩いた先の売店へと向かう。手を引かれるようにしてついていくと、そのにはどデカい肉の塊があった。
「二つくれ」
「まいどあり〜!」
店主がデカい肉を包丁で捌き、大きなバゲットに載せる。上から調味料をかけて、パセリを散らしたものを手渡しでもらう。熱々のパンに驚きながらも受け取り、鼻腔を擽るいい香りに身震いする。
スティーヴンはというと、早速大口を開けてかぶりついていた。呆気に取られていると、食べるように促される。こんな街中で立ったまま、しかも大口を開けて食べるなど、淑女として如何なものかと困惑していると、スティーヴンが見かねたように言う。
「俺しか見ていない。安心して食べるといい」
「は…はい」
おろおろとしつつ、思い切って齧り付く。すると、じゅわりと肉汁が溢れ出し、ガーリックなソースが口の中で肉と合わさる。あっさりとしたバゲットに合わないわけがない。
脂っこく味付けも濃いが、クセになる味だ。続けて二口目を齧り付くと、スティーヴンと目が合った。
「気に入ったようでよかった」
全く淑女らしくない姿を見せてしまったが、嬉しそうなスティーヴンを見て、笑みが溢れる。
「とっても美味しいです!ジャジーにも食べさせてあげたいわ」
「土産に買って帰るか」
「はい!」
「その前に」
スティーヴンの片手が頬に触れる。何事かと驚けば、そのまま唇の端に口付けられた。
「ついている」
「ーー!」
慌ててハンカチーフを取り出し、口元を拭う。はしたないところを見せてしまった。真っ赤になった顔を見られないようにフード深く被ると、それを外される。
「なぜ隠す?こんなにも愛らしいのに」
街中でこんな台詞を放たれて平気なはずがない。純白の髪が風に揺れると、周りの人たちの目線が集まってきた。恥ずかしさと動揺で慌ててフードを深く被る。
「わたくしの髪は目立ちますから」
「美しさ故にな」
(もう…!またそうやってわたくしを揶揄うのね!)
照れ臭さから視線が下へと落ちる。スティーヴンに隠れるように一歩後ろを歩いていると、強く手を引かれた。
「隣を歩いてくれ。君は俺の妃になるのだから」
「は、はい」
どぎまぎしながら返事をし、言われた通り隣を歩く。一歩が大きいが、歩みを合わせてくれていることに気がつくと、その優しさに笑みが浮かんだ。
馬車に残っている側近と侍女へのお土産を手に、城下町を後にする。本当はもっとゆっくり巡りたかったが、時間がない。今夜までには他国の別邸へと辿り着かなくては。
後ろ髪引かれつつ、馬車へと向かった。




