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わたくしシャーロット、魔王様に溺愛されています。  作者: 藍沢みや
第二章 魔物の無差別殺傷事件
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17.功労者

この件はこれで終着を迎えた。オスカーが戻り、魔王城へと転移すると、スティーヴンは丁度、退魔教会最高指揮官ルーク・ワグナー氏へ会いに行くところだった。

「間に合ったようだな」

「はい。彼女は自首する様です」

「そうか」

黒いローブを纏い、スティーヴンが執務室の扉を開く。

「オスカー、ロゼッタ。シャーロットも連れて行く」

「え!?」

「今回の事件を解決したのは、シャーロット、君だ」

オスカーやジャスミンの力がなければ、成し遂げられなかったことだ。

「わたくし一人の力ではありません」

「一番の功労者は君だ」

手放しに褒められることに慣れていない為、狼狽えてしまう。それに、最高指揮官と顔を合わせるなど、いいのだろうか。

「シャーロット。時間がない。いいな?」

その言葉に頷き、オスカーとジャスミンに顔を向ける。

「あなた方がいなかったら、これは成し得なかったわ。心からお礼を言うわ。ありがとう」

ジャスミンとオスカーは笑みを浮かべ、頷く。それを見てから、スティーヴンの後を追った。




転移魔法でまた協会へ戻ってきた。今度は鬘を被っていない、シャーロット・フローリーの姿で。

教会内は騒めいていた。それもそうだ。魔王とシャーロットが肩を並べて教会内を歩いているのだ。目立たないわけがない。

教会本部へ繋がる階段を登り、最上階の部屋へと向かう。それを邪魔するものは一人もいなかった。

「スティーヴン・シアーズ・バンターキッシュです。入っても?」

ノックした後そう言い、スティーヴンが扉に手をかける。奥から声がかかり、その声の後扉を開いた。

中は広い部屋だった。ウールラグの絨毯は心地よく、踏むのが勿体無いくらいだと思う。天井は高く、シャンデリアが部屋を照らしていた。大きな本棚が並び、それを大量の本が埋め尽くしているのにも関わらず、埃ひとつ被っていない。手入れの行き届いた部屋だと印象づいた。

ルーク・ワグナー氏は、ソファーに腰掛けていた。その傍には、グレイシーがいる。そのことに驚けば、グレイシーは深く頭を下げた。

「調査報告に参りました」

「うむ。頼む」

シャーロット達が手に入れた情報を開示すると、ワグナー氏は深く息を吐いた。

「そして今夜までに奴らを罰さない限り、魔物達が暴動を起こします」

そう言うと、ワグナー氏の片眉が上がった。驚いたらしい。また深く溜息を吐いて、沈黙が続く。

「我が教会の退魔師が原因だったとは、誠に遺憾だ」

そうワグナー氏は言い、頭を下げる。

「調査結果をもとに、厳重に処罰する。退魔師が足りなくなるが、それも致し方がない。この度は、シャーロット嬢、すまなかった」

自分に向けられた謝罪に驚き、慌てて頭を上げる様うながす。

「退魔条約を元に罰する様、お願いします」

スティーヴンがそう言うと、ワグナー氏は頷く。

「もう奴らは呼んでいる」

ノック音の後、ドウェインを始めとし、保守派、反共存派の権力者が部屋に訪れた。これだけの人数がいても、部屋は狭く感じない。

一人一人に警備員がつけられている様で、腕は縛られている。

「魔女め…!お前なんかがいるから…ヴィクターがーー」

ドウェインが忌々しく詰る。それをスティーヴンが制した。

「言いたいことはそれだけか」

威圧感のある声に押され、スティーヴンが黙る。悔しさを滲ませる彼に言う。

「残念ながら、わたくしは魔女ではありません」

「嘘だ!ヴィクターが間違えるわけがない!お前は魔女だ!街の皆も噂している!」

「それを流したのはお前だろう」

スティーヴンが吐き捨てる様に言い、ドウェインに近づく。それが恐ろしかったのか、一気に口数が減った。

「ご足労をおかけした。これから彼らを罰する為、移送する。ここからは任せて欲しい」

「わかりました。報告をお待ちしております」

そう言い、部屋を後にした。




帰りも転移魔法を使い、すぐさま魔王城へ戻った。そこで待っていたジャスミンに、ことの経緯を説明すれば、安堵の息を吐いた。

「魔物達に報告に行き、国王にも報告へ行ってくる。疲れただろう、ここで寛ぐといい。テオ、案内してやれ」

「畏まりました」

スティーヴンはオスカーとロゼッタを連れ、慌ただしく部屋を後にした。

「シャーロット様のお部屋へ案内いたします」

丁寧なお辞儀と共にそう言われ、つられて淑女の礼を返す。そして気づく。まだ退魔師の服装のままだった。汚れているから着替えたいが、生憎着替えは屋敷だ。

テオドールの後に続くと、広い廊下に出た。迷路の様な道筋に呆気に取られつつ、迷子にならない様ついて歩く。部屋は最上階の一番奥の部屋だった。

「どうぞ」

案内された部屋に入ると、中は眩暈がするほど広かった。真ん中にはキングサイズの白のベッド。窓には真っ白なカーテンがかけられ、床の絨毯までもが汚れひとつない純白で上等なものだ。白を基調とした部屋に、なんだか眩暈がする。黒を基調としていた己の部屋と違い、なんだか聖女にでもなったかの様な部屋に、違和感を抱く。慣れるまでは眠れないかもしれないと思うほど、眩しい。

天井で揺れるシャンデリアに見惚れていると、テオドールに椅子へ腰掛ける様勧められた。

「服が汚れているので…立っております…」

白い部屋を汚したくはない。この靴も脱ぎたいくらいだ。

「それならお着替えがクローゼットに入っております。気楽な服装にお着替えなさってください。靴もありますよ。あとジャスミン嬢のお部屋もありますので、後ほど案内致しますね」

「恐れ入ります」

ジャスミンは礼を言い、早速クローゼットを開けた。そこには大量のドレスが掛けられていた。一つの部屋かと思うほど広い。

色とりどりのドレスの中から、ジャスミンが白を基調とした刺繍のワンピースを取り出した。

「これなんてどうでしょう。お似合いになると思います」

「白はちょっと……黒はないのかしら」

「ないですよ」

答えたのはテオドールだった。

「スティーヴが貴女には自由が似合う。もう呪縛から解放されるべきだと」

(そんなことを仰っていたのね。)

なんだか擽ったい気持ちになりながら、ジャスミンに頷く。

「それでいいわ。でもその前に貴女も着替えたらどうかしら」

「そうさせていただきます。テオドール様、ご案内頼めますか?」

「テオで構いませんよ。では、参りましょうか」

「またあとで」

「すぐ戻ります」

軽く挨拶を交わした後、二人は部屋を後にした。一人でだだっ広い部屋に残され、少し落ち着かない。部屋の中を観察しつつ、窓の外を見ると、森だった。ここは森の中に聳え立つ魔王城の様だ。外に出たら迷子になってしまいそうだと思っていると、すぐにジャスミンが戻ってきた。あまりに早い着替えに苦笑いしつつ、着替えを任せる。


白の服に袖を通すのは初めてで、なんだか落ち着かないが、スティーヴンの選んでくれた物だと思うと、心が温かくなった。

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