表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/82

14.初めてのデートⅡ

 石畳の地面に足をつけて顔を上げると、目の前の光景に目を奪われた。

 たくさんの人々が通りを行き交い、様々な店が立ち並んでいる。買出しに来た人や遊びに来た子どもたち、大きな声で呼び込みをしている店主に、呑気に欠伸をしている猫。

 城下町は想像以上に賑わっていた。大勢の人々の声は楽しそうだったり、なにか怒っていたり、様々な声色が混ざった空気は新鮮で、シャーロットの目にはとても魅力的に見えた。

 芳ばしい香りや甘い香りが風に乗って流れてくる。近くのパン屋の店主が焼き立てのパンを並べ、大声で客寄せをしていた。

「取り敢えず、露店を見て回ろうか」

「はい!」

 期待に高鳴る胸を抑え、スティーヴンの後をついて歩く。

 シャーロットは普段、学園か屋敷内でしか生活をしていない。移動は勿論馬車であるため、人混みを歩く体験も初めてだ。

「お嬢ちゃん、パン焼き立てだよ~!うんと甘いはちみつとシュガーが塗してあるハニーパン、食べていかない?」

(お嬢ちゃんだなんて初めて呼ばれたわ!)

 そんなことにも感動しながら、足を止めずに微笑む。

「また次の機会にいただくわね」

 そう控えめに答えると、次は隣の露店の店主に声を掛けられた。

「ジャンキーな食べ物が安くたくさん食べられるよ!どうだい?」

(ジャンキーな食べ物って何かしら…?)

 首を傾げながらも、歩みは止めずにスティーヴンについていく。この人混みの中ではぐれてしまうと再会するのに骨が折れそうだ。

「入ってみたい店があったら言って」

「はい」

 入りたい店と言われても、露店が多すぎて脳の処理が追い付かない。

「やっぱり昼時は人が多いな…」

「何か仰いましたか?」

 騒音の中で聞き取れず意識して少し大きな声を出すと、スティーヴンが歩みを止めずに顔だけ振り返った。

「シャーロット、こっち」

 意図を理解するよりも先に手を引かれ、大通りから外れた細道に逸れた。その道は階段になっており、両脇は赤レンガの建物に囲まれている。洗濯物が干されている様子から、共同住宅であることが伺い知れた。

(隠れ通路みたい!それに、さっきまでの騒音が嘘みたいだわ。)

「この道を抜けると大きな本屋があるんだ。きっと気に入る」

 段差の低い階段を上りきると、また違う通りに出た。先程の大通りに比べて人も少なく、落ち着いた印象を受ける。

「ここだ」

「ここ……ですか?」

 案内されたのは、大きな木の幹に取って付けられたような扉の前。その扉も木目調でできているため、扉に気が付くのにも数秒を要した。

 困惑しているシャーロットの様子を見て、スティーヴンは悪戯っぽい笑みでその扉を開いた。

「わっ!凄い!」

 そこには地下へと続く階段が隠されていた。階段には所々ランタンがかけられており、足元を薄暗く照らしている。その先にある扉からは明るい光が漏れ出ていた。

「なんだか、冒険をしている気分です」

「中も凄いんだ。足元暗いから気を付けて」

 握られていた手に少し力が入ったことで、シャーロットは漸く、今までスティーヴンと手を繋いでいたことに気が付いた。

(なんてスマートなエスコートなのかしら。)

 包むように握られた手が急に熱を持ったように熱くなる。意識すると急激に恥ずかしさが沸き上がってきてしまった。

(どうしましょう、なんだか暑くなってきたわ…。)

 火照る頬を落ち着けようと、静かに深呼吸を繰り返す。ここが薄暗くて良かった、と心から思った。

 階段を下りきると、期待でさらに胸が高鳴っていた。『OPEN』の表札が掛けられたアンティーク調の引き戸をスティーヴンが開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ