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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
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第八十八話:一割!一割でいいからっ!

 道中相変わらず事情を察していないエージェント連中が立ち塞がっては騒ぎたて、ハニーに黙らされていく。



 その様子を見る限りどうやら情報の伝達は上手くいっていないようだ。



 俺達はここに侵入してからもう大分経つし割と騒いでいると思う。それでも連中が侵入者に対して警備を強化していなかったり、遭遇すると驚いたりしている。



 やっぱりこの組織ザルなんじゃないだろうか。



 規模だけ大きくなっても統率がとれていないなら意味がない。



 この状況を見るだけでも支部長とやらが敏腕では無いんだろうなって事が分かる。



 こんな調子じゃ意外ともう泡海にぶちのめされていたりして…




「あら、遅かったわね。例の物はちゃんと回収してきたの?」



 …。



 


 ハニーの案内で無事に支部長室に着き、一気に攻める方がいいと話し合ってドアをけり破り中になだれ込んだのだが。




 まぁ、なんというか。




 手足を縛られボコボコに顔面を腫らした残念な男が一人と、支部長が座るべきであろう豪華な椅子に座り、脇にしゃがんだいばらの喉をまるで犬や猫を撫でるようにしながら偉そうにふんぞり返っている泡海がいた。



 …もう解決してんじゃねぇか。



「…そこに転がってるのが支部長って奴か?」



「そうよ。って、乙姫君。そんな事よりちゃんとアレは回収してきたんでしょうね?」




 大いに惜しいが持ち主に返すとしよう。



 ポケットから例のカードを取り出し泡海に返すと




「こ、これよぉぉぉ!これさえ取り戻せればもう私の未来を邪魔する物は何もないわぁぁぁあとはおうちに帰ってゆっくり確認するだけ…ぐへへへ…」



「あ、泡海先輩…?その中には何が入ってるんですの…?」



 常軌を逸した泡海のテンション具合に有栖が問いかける。



「ここにはねぇ~私の全てが入ってるの。勿論コレクション№一~十九まではちゃんと家に保管してあるけれどこの二十が奪われた時はこの世の終わりかと思ったわ…」



「は、はぁ…。大事な物って事だけは分かりましたわ」



 …おい、聞き捨てならないぞ。



「まて泡海、それ以外にまさか十九枚も似たような物があるのか!?」



「勿論あるわよぉぐへへ…はっ…。す、少し取り乱してしまったわ。そう、この私の大事なコレクションはこれで№二十。取り返してくれてありがとう。感謝するわ」




「…人魚泡海さん。ちょっとご相談したい事があるんですけれど」



 それだけあるのならば…!



「…貴方が言おうとしてる事なら分かるわ。でもね、貴方は自分の子供を誰かに欲しいと言われて分かりましたとあげるような人なの?」



 例えが卑怯すぎる!



「それはそうだが仮にお金を落として拾ってくれた人がいるのならば何割かの例を渡すぞ俺は!」



「くっ、無い頭で都合のいい言い方を…っ」




「あの、舞華さん。あの二人はいったいなんの話をしているんですの…?」



「さぁ。ボクらには解らないし解らない方が幸せな話だと思うんだよ」




「一割!一割でいいからっ!」



「…しかたないわね。でも全部の一割じゃなくて貴方が拾ったコレ、これの一割よ」



「ぐっ、やむをえんっ!それで商談成立だ!」



 …やむを得ないと言いはしたが、正直他の物よりその№二十とやらの内容の方が気になっているので結果オーライである。



 あの続きを…ッ!




「ところで乙姫さん。腕輪のありかを聞かなくてよろしいんですの?」




 はっ!?




 またアレに気をとられて大事な事を忘れそうになっていた…。



 何度目か解らんが許せ白雪。そして有栖。




「支部長さんとやら、白雪…悪魔を閉じ込めた腕輪はどこにある?隠し部屋は一通り探したがあそこには無かった。違う場所にあるんだろ?」



「ぞっ、ぞれを…おどなじくおじえると、おぼうどか?」



 床に転がっている支部長は顔面がボコボコすぎて上手く喋れないらしい。



 ただ、教える気がないのだけは解った。




「いばら。このおっさんの爪を一枚ずつ剥がしなさい」



「了解でありますっ!」



 …それを涼しい顔して命じる方もどうかと思うが満面の笑みで即了解する方もどうかしている。



 支部長はというと最早言葉も出ずに口をパクパクさせていたが、いばらが実際指の爪を一枚ペンチで摘んだところで



「ひょ、ひょっとまへ!!わはった。わはったからっ!!」



 と、あっさり観念した。



 なのに、である。




「…えいっ」




 べりっ



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 酷い。実行前に楽しみを奪われた腹いせにせめて一枚剥がしたかったようだ。



 血が滴る爪をペンチの先にぷらぷらさせながらいばらが「えんがちょ~」とにこやかに、それでいて嫌そうに呟く。



 えんがちょって…今なかなかその表現聞かない気がするんだが。



 ちなみにうちの母親はよく言っている。



 血が滴っている爪を見て有栖は部屋の隅に逃げていった。



「ひえぇぇぇぇ…」



 とか言いながら顔を真っ青にしている。




「で?話す気になったんでしょう?早く言いなさい。さもないと今度は私がもっとイイコトしてあげるわ」



 机に両肘をついて司令官ポーズの泡海が満面の笑顔で催促する。



 あの声はしゃれにならないやつだ。それを向けられているのが自分じゃなくて心から感謝と安堵。そして申し訳程度の同情を感じる。


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