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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
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第八十六話:御伽・ファクシミリアン・有栖は死にました。

「なんか凄い音がしたけどほんとにこっちであってるのか?」



「見取り図は頭に入ってるから間違いないんだよ」



 道順はハニーに任せっきりだったのでここがどこら辺なのかも全然解ってないが、ハニーがこっちであってるというのならそうなんだろう。



 しかしついさっきこの先から凄い音が響いてきたのは間違いない。



 誰かが先に到達していて、何かトラブルにでも巻き込まれているんじゃないかと思うと心拍数が勝手に上がっていく。



 そして、ハニーの案内通り角を曲がると…



 道の先に誰かが倒れているのが見えた。




「…あれ、御伽さんじゃないかな」



 通路の脇で倒れているのは多分有栖だ。



 何故有栖一人だけなんだ?多野中さんはどうした!?



「おい有栖!大丈夫か!?…ってうわなんだこれ!?」




 有栖に駆け寄ろうとすると、通路に大きな穴が開いてそこに大きな岩が嵌っていた。



「…もしかして転がってきた岩に追いかけられたのかもしれないんだよ」



 そんな昔の冒険映画じゃあるまいし。



 と、思いながらもこの状況を見る限りその線が濃厚そうである。



 慎重に通路から岩の上に飛び乗って反対側へと渡り、有栖に駆け寄る。



 有栖を抱き起こそうとするが彼女は無反応だった。意識が無いのだろうか?まさか死んでたりしないだろうな?



「おい、有栖!無事か?なんとか言ってくれよ!」



「御伽・ファクシミリアン・有栖は先程死にました。ここに居るのはただのアホです。放っておいて下さいまし」



 震えた声で有栖はそう言った。



 いったい有栖に何があったんだろう。とにかく無事で良かった。



「おい、ふざけてないで起きろ!」



「ふふ…アホなわたくしを笑いに来たんですの?」



 ダメだこいつ…



「正気に戻れ!」



 べちん!



 申し訳ないと思いながらもこのままじゃ埒が明かないので一発ビンタさせてもらった。



「な、なななな何をなさるんですの!?家族にも打たれた事なんてありませんのに…!」



「正気に戻ったか?大丈夫か?怪我してないか?」




 よく見るとあちこち服が汚れていて髪の毛もボサボサだ。



「ほら、こんなに髪の毛までぐしゃぐしゃになっちまって…起きれるか?」



 さすがに酷い有様だったので軽く髪の毛をなおしてやる。



「な、ななななな…何をなさるんですの!?」



「ん?ひっかかって痛かったか?ちょっと待ってろすぐに終わるから」



「…そういう事では無いんですけれど…」



「なんか言ったか?」



「なんでもありませんわ」





 まったく。膝とかにも擦り傷とか出来てるし大変だったみたいだ。



「おとちゃん、そろそろ行くんだよ。隠し部屋はすぐそこだからね」



「おう。…よし、大体元通りになったんじゃないか?細かい事は気にしないでくれよ。俺は専門家じゃないからな」



「あ、あの…ありがとうございますわ。でも…出来ればもう少し早く来て欲しかったですの」



 涙目で有栖が訴える。



「ごめんな。でもここからは大丈夫だ。一緒に行こう」



「おとちゃんのついでに御伽さんも守ってあげるから心配しないでいいんだよ」



 …まぁ俺がいても役に立たないかもしれないがハニーが居れば大丈夫だろう。



 ハニーは「こっちこっち」といいながら二つ目の穴に嵌っている岩を渡ってもう一つ向こう岸に渡る。



 俺もゆっくり有栖を立たせて、一緒に渡った。



「ほら、ここの扉だよ。御伽さんが先にここの落し穴を処理しておいてくれたから無事にたどり着けたんだよ」



「…死ぬところでしたもの。少しは役に立ててよかったですわ…くすん」



 有栖がまた泣きそうな顔になりながら笑う。



 どんな感情だよ…。




 ともかく俺達は目的地まで無事にたどり着く事が出来た。



 一番乗り出来てよかったというべきか…泡海のSDカードを俺ならすぐに解るだろうしあれを回収しておかないと。それに、何よりここに白雪が居るかもしれない。



 出来れば真っ先に見つけてやりたいというのが心情ってやつである。




「あ、鍵がかかってるんだよ…えいっ」



 言うやいなやバギッという音を立てて鍵をぶち壊すハニー。おそろしや。



 ハニーに続いて俺と有栖も部屋に入ると、そこは六畳程度の掃除用具室だった。よくわからない業務用の機械も沢山置いてあるが、よく見るとそれら全部軽くほこりを被っているのでここの掃除担当は大分怠けているのが伺える。



「確か…ロッカーでしたわよね。これかしら」



 おもむろに有栖が目の前のロッカーを開けて天井をまさぐり始める。



 意外と解りやすいボタンだったらしく、すぐにゴゴゴ…とロッカーの後ろの壁が横にスライドしていった。



「うぇ…」



 覗きこんだ有栖がげんなりした声で唸る。



 隠し部屋は掃除用具室よりも広いくらいで、大きな棚が沢山並べられそこには変な物が沢山飾られていた。それにしても並べ方が雑である。



 怪しげな土器とか、ピラミッドから発掘されたんじゃないかと思うような金色のマスクとか何故かおたふくが鬼の形相をしてるおたふく般若仮面みたいなものもあった。



「うわーこれ凄いんだよ!おとちゃん見てみて!例のイグアナもあるんだよ!」



 有栖とは対照的にハニーはめちゃくちゃテンションがあがっている。こういう変な物が好きなのは相変わらずらしい。



「舞華さん…こういうのが好きなんですの…?」



「えっ、う、うん。ほら、うちは親がこういうの好きだからその影響で…。うん、それだけなんだよ」



 そういえばハニーの変な趣味を他の人に話してるのは見た事がない。もしかしたらあまり知られたく無い事なんだろうか。



「と、とにかく。まずは探すもの探しちまおう。白雪は確か腕輪みたいなのに閉じ込められてる筈だからみんな探してくれ。」


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