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悪魔でも腹は減る(β)  作者: monaka
◆軽口は死を招いて生を実感する話
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第八十三話:泡海の才能。


 泡海はそれぞれ一人ずつならどうにでもできる自信があったが、支部長もそれだけの立場に上りつめただけの実力はあるだろうしいばらも最低限訓練を受けているはずである。


 二人を相手にするのはさすがに分が悪い。…どうしたものかと泡海が悩んでいると、


「先輩。今ならまだ間に合うのであります。あいつらの事なんか忘れてこちらに戻ってきて下さい。そしたらアレについては私が責任を持ってお返しするのであります」



「こらこら。そこ、勝手な約束をされても困るな。…だが、それも有りだな。もし奴らの殲滅、天使の捕獲を遂行できるのであればアレは君に渡してもいい。さあどうする?」



 泡海は一応悩む振りをする。



 少しでも考える時間が欲しかったからだ。



 勿論考える内容は今のこの状況をどうやって打開するかであり、寝返るがどうかではない。



 状況は絶望的、だが。泡海は自分の能力に自信を持っていた。アレは完璧だった。ならばいける。




「どうやら彼女はその気がないようだ。いばら君。取り押さえなさい」



 いばらがゆっくりと泡海に近づく。



「すいません。人魚先輩。これも仕方の無い事なのであります」



 泡海はむしろ自らいばらの方へ歩み寄り、唐突にその身体を抱きしめた。



「せ、先輩っ!?ど、どういう事でありますかっ!?わ、私、え、そんなっ」



 泡海はそっといばらの耳元に口を近づけて息を吹きかける。



「ふっ、ふぁぁぁぁっぁぁぁぁっ…し、しかし…この程度では負けないでありますっ!」



 いばらが顔を真っ赤にしつつも泡海を突き飛ばす。



「お前ら何をやっているんだ!いばら君、早くしたまえ」



「す、すいません!今すぐにっ!」



 泡海はいばらから一度距離を取り身構えると、大声で叫んだ。





「お す わ り !!」





「きゃんっ!!」





 泡海の調教は完璧だった。



 一度離れた事で気の迷いが生まれたとしても身体に刻み込んだ泡海への服従の心は消える事は無い。



 いばらはその場に犬がお座りをするように座り込んで、とろんとした表情で泡海を見つめる。




「GO!!」





 泡海は支部長を指差しいばらに命を下す。



「了解でありますっ!!」



「なんだッ!?何がおきたッ!?」



 すぐさまいばらが支部長にとびかかり、顔を思い切り引っかいた。



 犬というよりは猫のような攻撃方法である。



 支部長も慌てて応戦しようとするが、注意が一瞬でもいばらの方に逸れてしまえばもう泡海の思い通りだった。



 いばらに気を取られているその顔面に側面から回し蹴りを入れ、デスクに頭を打ち付ける。呻く隙すら与えずにそのまま腕を決めてそのままへし折った。



「ぎゃあぁぁぁぁあ!!」



「うるさい」



 今度は細い腕をその首に食い込ませるようにチョークスリーパーをかける。



「いばら。すぐに何か縛るものか強度のあるテープ。急いで」



「ハァハァ…あっ、り、了解でありますっ!」



 泡海の動きに見蕩れていたいばらだったが、正気を取り戻してすぐに部屋の隅にあったダンボール箱から縄を持ってきた。



「よしよしいい子ね。後でご褒美をあげるわ」



「幸せでありますっ!」



「うるさい」



「ごめんなさいでありますっ!」



「…な、なにが…どう、なっ、て…」



 支部長が手足を縛られながらそこまで呟いたところで



「泡海先輩にチョークスリーパーかけられるなんてご褒美うらやま…いや、許すまじであります!!」



 ゴスッ!!



 よく解らないベクトルの怒りが爆発したいばらの思い切りのいいキックが、まるでサッカーボールを蹴り飛ばすように炸裂し、支部長の意識は遠い彼方へと霧散した。



 支部長を無力化し、興奮するいばらを眺めながら泡海は脱力感とともに呟く。




「あぁ…私、自分の才能が、怖いわ」


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